真剣で清楚に恋しなさい!
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一部 高校一年
川神一子の師範代ロード
6話 挫折と呪い
前書き
一日3話位を目処に投稿していこうと思います。
―修行三十日目―
「一ヶ月でここまで身体能力が上がるとはネ。でハ、ギブスを外していいヨ」
「オッス!!」
なんとか期末考査を乗り切ったワン子はルー師範代と滝の目の前にいた。
「何か変わった感じはするかネ?」
「体がすごく軽いわ、重力がないみたい!!」
ワン子は跳ねたり、走ったりしては驚いていた。
「だいぶ実感できたみたいだネ。じゃあ、これから顎の修行に入るヨ」
「オッス!!」
「型はさっき教えたとおりダ、型の素振りをこの滝の前で行ってもらウ。これは川神初代も行っていたという、修行なんダ。」
「オッス!!」
「・・・あの、なんで俺が呼ばれたんですか?」
何故かそこには忠勝もいた。
「私は他の修行僧も見てあげなくてはならなイ。それに一子一人だと無茶をするからネ、気心がしれていて、止めてくれそうな人を選んだんダ。一子を頼むヨ」
ルー師範代はそれだけ言うと走って山を降りていった。
「ごめんね、たっちゃん。巻き込んじゃって」
ワン子が申し訳なさそうにする。
「気にすんな、それより修行始めたらどうだ?」
二人きりだからか、忠勝も優しい表情をしている。
「うん、さっそく素振りよ!!」
・
・
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「う~、疲れたわ」
ワン子がグテッとしている。あたりはもう真っ暗だ。
「飯できたぞ」
「作ってくれたの? ありがとう、たっちゃん!!」
「それくらいしかしてやれることがねーからな」
「十分よ、いただきまーす!! まぐまぐ・・・すごく美味しいし、栄養満点ね。さすがたっちゃん」
「おおげさだな、おかわり食うか?」
「うん!!」
こうして、山篭り一日目が終わった。
―修行三十七日目―
一子の事情は聞いた。その師範代になれるかが決まる試合まで後一週間だ。今日も一子はひたすらに薙刀を振っていた。山篭り三日目あたりで、九鬼が来て、一子にサポートの申し出をさんざんしていったが、サポートは俺がいると断られ、最後に何故か小さな小屋というには豪華だが建物を立てそこに治療道具やら、食材やら色んなもんを置いてった。流石に置いてっちまったものはしょうがねーから活用させてもらってる。おかげで栄養のあるもんを食べさせれるって点だは九鬼に感謝しねーとな。
「一子、そろそろ昼飯にするぞ!」
「・・・・」
「ったく、おい、一子、飯だぞ」
「ふぇ、うん。分かったわ」
ここんとこ一子はこんな調子だ。修行を見ている限り、あまりうまくいっていないのかもしれない。だが、それを俺が言うわけにはいかねぇ。俺のすることは、こいつを支えることだ。
「アタシ、このままでお姉様に認めてもらえるのかな? アタシ、怖いの、ここまでやってきたことが無駄になるのが。努力なんてなかったことと同じになるのが…あ、ごめんね、こんな弱音吐いちゃって、せっかく手伝ってくれてるのに」
「お前が例え認めてもらえなかったとしても、お前の中の努力は無駄になるのか? お前のなかったことになるのか? ちげえだろ、お前の今までの努力はお前の体に、心に刻み込まれてるだろ。壁にぶち当たっても諦めない心を支えてきたのはなんだ? 今まで努力してこれたっていう自信だろ? 辛い時でも体が応えてくれるのはなんでだ? 今までのお前の努力が力をくれるんだろ? 今まで応えてきてくれたもんを信じてやれよ。そうすりゃ大丈夫だ。な?」
たとえ認められなかったとしてもなんて言うべきじゃねーのは分かってるが言わずにはいられなかった。
「・・・うん。ありがとう、たっちゃん!! 不安が飛んだわ」
「そうか、なら飯にすんぞ」
「うん!!」
―修行四十日目―
たっちゃんと話してから不思議と不安はなくなり、今一番あたしの中に溢れている感情は感謝だった。私にお姉様に近づける道を与えてくれたことへの感謝、今まで努力を苦とせずして来れたことへの感謝、そんなあたしのバカみたいな修行についてきてくれた体に対する感謝、そして、風間ファミリーに、たっちゃんに会えたことへの感謝。そんな感謝の気持ちを込めて私は薙刀を振るう。
ヒュンッ!!
今までとは違う、どれだけ振っても力が湧き出る感じ、これならいけるわ!!
―修行最終日―
「オオ、これほどまで実力が上がっているとハ。思っていた以上だヨ一子」
「私を支えてくれた全てに感謝してますから」
「ソウカ、自力でその境地にたどり着いたか、これなら私が心配することはなさそうだネ。今日は明日に備えて休みなサイ。」
「オッス!!」
「源くん、一子のことを支えてくれてありがとうネ」
「いえ、俺は何もしてないんで」
「イヤ、君の功績は大きいヨ、一子一人じゃ、ここまで来るのは無理だっタ。本当にありがとウ」
「あたしからもお礼を言わなくちゃね、この十五日間だけじゃない今までずっと支えてくれてありがとう」
「おう、頑張れよ、一子」
「うん、夢に向かって勇往邁進よ!!」
そして、試合の日は訪れた。
遡ること ―修行三十日目―
「今日から、ワンコが山篭りとはな。しかもゲンもついていくとは」
ガクトの言葉取り、金曜集会にはワン子とゲンさんの姿がない。
「二週間とは言え、全く会えないのは寂しいよね」
「しょうがないさ、ワン子だって自分の夢があるんだ。というわけで、俺は前に話してた通り奄美大島に行くぜ!!」
「私はちょっと海外の相手と戦ってくる。」
「俺は、久々に父さんと母さんが来いって言ってるからドイツに行ってくるよ。」
「僕は家でのんびりゲームかな」
「俺様はナンパに行ってくるぜ! 失敗したらそのままモロの家に直行だ」
「僕の家に入り浸るだけじゃん!!」
「てめぇ、なめんなよ!! 今度こそ成功させてやるんだよ!」
「もうそのセリフは聞き飽きたよ!!」
「私は、父の具合が悪いから一旦実家に会えるよ」
「大丈夫かよ?」
「何かあったら言ってね、僕もガクトも暇だからすぐ駆けつけるよ」
「うん、ありがと」
「龍斗は?」
「俺はちょっと西の方に行ってからいろいろと寄り道するからな、ワンコの試合の日までには帰るよ。」
「そういや、姉さん。試合って見学できないんだよね?」
「ああ、入れるのは立会人として一人だけだし、それは源の役目だろう。」
「なら、俺らはここで待ってるか。」
「そうだな。」
京が一瞬不安そうにこちらを見てきたので、心配するなというように首を振った。
そして、試合当日
川神院
「これより、川神院 内部試合を行う。 東方 川神一子!!」
「オッス!!」
「西方 川神百代!!」
「あぁ」
「両者、いざ尋常に 始めぃ!!」
「はぁ!!」まずはいきなりワン子が突きを放つ。
「鋭いが、×」
百代は顔を傾けるだけで避けてしまう。
「川神流奥義 蠍撃ち!!」
「×」
これも当たらない。
「天の槌!! 地の剣!!」
「×」
今度はかかと落としからの蹴り上げ、だがこれも当たらない。ワンコは薙刀を取った。
「はぁ!!」
気合一閃、今までで一番鋭い一撃だ。
「惜しいが、これも×」
「川神流 大車輪!!」
「×」
・
・
・
「はぁ、はぁ、はぁ」
ワン子はまだ一撃も入れられていないのに、百代は開始の位置からほとんど動かず、カウンターを入れてきている。
「ワン子・・・」
「まだよ・・・川神流奥義 顎!!!」
「!!! 顎も習得していたか、だがな」
百代は突然一子の薙刀に向かって歩き体を倒しながら避けてしまった。
「×だ、いい練度だがダメージできちんと技が出せていない」
そのままワンコの腹に正拳突きを入れ、壁まで吹っ飛ばした。
「勝者 川神百代!! 手当の用意をせい!!」
「一子!!」
忠勝がワン子のもとへ駆け寄っていく。先程から駆け寄りたい衝動をこらえて拳を握りしめていたのだろう。掌からは血が滴っていた。
「うぅ、あれ? 試合は?」
「ワン子、本当に強くなったな。ここまで強くなれるとは思ってなかったぞ。」
「へへへ、ありがとうお姉様」
だが、褒められているのに周りの表情は暗いままだった。
「だがな、これだけ入っておかなければならない。師範代は諦めろ」
「・・・え?」
「先ほどの試合で、お前の攻撃は当たらなかったよな、それじゃあダメなんだよ。師範代を目指すなら私に攻撃を当てることは必須だった。別に武術をやめろとは言わない。努力で才能をカバーし、準師範代なら目指せるレベルにお前はなった。だが、師範代は努力だけじゃあどうにもならない才能の壁が必要なんだ、天賦の才がな。今すぐ新しい道を探せとは言わない。ちょうど、夏休みだ。一緒にいろんな道を探そう」
「・・・・」
「・・・すまん。今、お前にそんなことを言うべきではなかった。頭を冷やしてくる。」
そう言って百代は道場から出て行った。
「・・・・・・・・一人にさせて」
十分ほど過ぎた頃、ワンコは唐突に口を開いたかと思うと、道場から出て行った。
「・・・・一子・・・」
忠勝はかける言葉も見つからず、ただ立ち尽くすばかりだった。
ワンコは修行をした滝の前に自然と足が向かっていた。そこには誰かが立っていた。
「・・・龍斗・・・」
「ワン子」
龍斗はワン子の表情を見て全てを察した。
「アタシ、頑張ったけどダメだったみたい。才能ないからさ・・努力すればなんとかなるって思ってたけど、やっぱりお姉さまみたいになれなかった。当然なのかな、私は川神院の実の娘じゃないし、そんなことないって証明したかったけど、ダメだったみたい。」
「・・・それで、お前は納得したのか?」
「・・・ないでしょ・・・納得できるわけないでしょ!!」
今まで抑えてきたものが爆発した。
「どうしてよ! これだけずっとやってきて、どうしてあたしには才能がないの!!
あたしに誇れるものは武術しかないのに、武術だけは半端しないって決めてたのに、あたしはたった一つのそれさえダメなの? お姉様のようになりたかったのに!! どうしてお姉様に近づく道をくれた武術の才能がないのよ!!! どうして・・・」
「・・・そうだよな、納得できるわけないよな・・」
「龍斗に何がわかるのよ!! 龍斗は持ってるじゃないあたしにはない才能を!! そんな龍斗に一体あたしの何がわかるっていうのよ!!!」
「・・・ごめん、あたし今自分を抑えきれないの・・・一人にさせて・・・」
ワンコは今にも壊れてしまいそうそうなか細い声を振り絞るように言った。
「ワン子、俺からひとつだけ話がある」
「・・・今じゃなきゃダメなの?」
「ああ、今のお前だからこそだ。お前に修行をつけようと思う」
「は? 龍斗、正気? あたしは今才能がないって言われて、師範代の道すら・・・」
「諦めきれないんだろ? どんなに無理だと言われようが、たとえ道がなかろうが、諦めきれないんだろ? だから、お前のその呪いのような願いを叶えてやりたいって言ってるんだ」
「どうして? どうして龍斗がそんなことするの?」
「俺にも、同じように道がなかったとしても諦めきれなかった夢があるからだ。それに絶対に無理だと分かっていたらこんな提案しない。お前の中にある隠れた才能を、強者である川神院が見つけられなかった弱者の才を俺が引き出してやる」
「拷問に近い訓練になる上に今回の試練に合格しても次の試練に合格する保証はない。結果の先延ばしになるかもしれないんだ。それでも、やるか?」
「・・・・ここまで来たら望むところよ、アタシはこの夢をきっと一生諦められない。だったらどんな可能性にでも手を伸ばしてやるわ!!」
後書き
文の拙さが小学生レベルなんてことはもう分かっていたはずなのに
知人に見られた上に指摘されるとこうも傷つくとは…
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