万華鏡
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第四十九話 準備期間の朝その十三
「そういうかったるいことはね」
「嫌なの」
「そう、ここぞっていう時以外は別にしなくていいじゃない」
「本当に怠け者なのね」
「否定しないよ、実際にそうだしね」
悪びれずに返す委員長だった、潰れる寸前でもまだ日本酒を飲んでいる。まるで酒を手放せないかの様に。
「子供の頃からね」
「呆れるわ、そんな態度」
「いいじゃない、別に」
「しっかりとしないと」
「だって委員長がいてくれるし」
「甘えないの」
何処か奥さんの様にだ、委員は委員長を叱る。
「しっかりしたら誰だって出来るんだから」
「だからそういうのが嫌いなんだよ」
「好き嫌いの問題じゃないでしょ、だから」
「真面目に?」
「常に全力でないと」
駄目だというのだ。
「そうじゃないといざという時力が困るわよ」
「だから僕はやる時にはやるから」
「つまり普段はでしょ」
「どうでもいい時はいいじゃない」
幾ら手を抜いてもだというのだ。
「委員長は真面目過ぎるんだよ」
「だから委員長はあんたで」
「副委員長っていうんだ」
「そうよ、しっかりしなさいね」
「やれやれだよ、じゃあ」
「じゃあって?」
「僕寝るから」
そのまま駄目亭主の如くだ、委員長は自分の寝袋の中に完全に入ってしまった。そのうえですぐに寝てしまった。
その委員長を見て委員は顔を顰めさせてこう言った。
「全く、どうなのよ」
「まあうちは委員長でもってるからね」
「特にね」
「本当の委員長はいざって時にだけ動いてくれれば」
「それでいいからね」
「大体クラスの仕事って」
クラス委員、それはというと。
「極論すれば誰にでも出来るから」
「そういうものだし」
「いなくてもなる時はなるし」
「別にね」
「それじゃああれじゃない」
委員はクラスメイト達の話にむっとして返した。
「プロ野球のコミッショナーみたいじゃない」
「いや、あれはもうどんな無能でも出来るから」
「あんなのはね」
「それこそ筋金入りの無能でも禁治産者でも出来るから」
「友愛がどうとかいう元首相でも」
つまり責任把握能力がなくとも出来るというのだ、プロ野球のコミッショナーは傀儡すらなれない輩でもなれる。
「それとクラス委員じゃクラス委員の方が大変だね」
「あれはどんな馬鹿でも出来るよ」
「大変な時に平気で海外旅行行ってもやっていけるから」
「自分にはその権限がないばかり言ってもね」
仕事を一切しなくても金が貰える、コミッショナーはそうしたものだ。ただこうした人間が祖父だったりすると孫はぐれるかも知れない。
「あんなのはね」
「もうぬいぐるみ置いててもいいから」
「コミッショナーはそこまで酷いから」
「クラス委員より遥かに酷いよ」
「それもそうね」
委員も皆の言葉に頷いた、本当にコミッショナーは何もしなくてもいける。
「クラス委員はともかく」
「コミッショナーは小学校のクラス委員以下だろ」
男子生徒の一人が言う。
「あんなの幼稚園児でも出来るって」
「幼稚園児以下じゃないかしら」
委員は腕を組んで真剣な顔で述べた。
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