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ギザギザハートの子守唄

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第四章


第四章

「冗談だろ。何であいつが」
「いや、それがマジだ」
「あいつが校長や教頭に掛け合ってな。今回は許して欲しいって言ってな」
「それでか」
「一応停学だ」
 そういうことらしい。少なくとも学校を辞めさせられるわけじゃなくなった。
「暫くな。それはどうしようもなかった」
「そうか」
「ああ。それでな、俺達考えたんだ」
「何をだよ」
「御前を入れて七人で」
 いつもこの七人でやって来た。七人いれば何も誰も怖くなかった。喧嘩もバンドも。いつも七人で楽しくやって来た。その七人の言葉が出て俺は心の中で何かと思った。
「鬼熊に礼を言いに行こうと思うんだ。どうだ?」
「確かにいつもぶん殴られたり投げられたりだけれどな。今回は恩があるしな」
「だな」
 俺も仲間達の言葉に頷いた。自分でも驚く位自然に。
「退院して停学が明けたらな」
「行くぜ。いいな」
「ああ」
 こうして退院して停学が明けるとまずは鬼熊のところに行った。すると鬼熊は俺達を見てまずこう言ってきた。完全な先制攻撃だった。
「礼なんかいらんぞ」
「おいおい」
「俺達まだ何も言ってねえぞ」
 向こうからいきなりこう言われて思わずすごんじまった。考えを読まれてると思ったからだ。
「それで何でだよ」
「何か言わせろよ」
「だから礼なんていいと言ってるんだ」
 鬼熊は丁度職員室に入るところだった。そこで俺達に声をかけられ顔を向けてきていた。だがすぐに俺達に身体を向けて話をしてきたのだ。
「俺はそんなのはいらん」
「随分勝手な奴だよな」
「全くだぜ」
 鬼熊があんまり頑固だから俺達はついついいつもの悪態をついた。
「折角だから礼を言おうって言ってるじゃねえか」
「それで何でそんなこと言うんだよ」
「そんなに礼が言いたければちゃんと卒業しろ」
 悪態をつく俺達に言う言葉はこれだった。
「わかったな。御前等卒業やばいだろ、全員」
「ちっ、言ってくれるぜ」
「忌々しいけれどその通りさ」
 これも七人全員一緒だった。どいつもこいつも大馬鹿野郎だ。勉強なんてガキの頃からしたことねえ。鞄の中には空気しかねえ。それか警棒かナイフだ。教科書もノートも鉛筆もねえ。そんな俺達が今の高校を卒業できるかどうかも怪しいのは当然のことだった。
「わかったらそれだけを考えろ」
 鬼熊はまた言ってきた。
「いいな、それだけだ」
 ここまで言うとさっさと職員室に入りやがった。残ったのは俺達七人だけだ。俺達は職員室の前で顔を見合わせて。今度はお互いに言い合った。
「帰るか」
「ああ、そうだな」
 こう言い合って頷き合った。
「ここにいても仕方ねえしな」
「そうだよな。しかし鬼熊の奴」
 あらためて鬼熊のことを考えた。考えながら今あいつがいる職員室に目を向けた。けれど誰も中に入ろうとはしなかった。ただ職員室の前に立っているだけだった。
「相変わらずむかすつく奴だな」
「全くだぜ」
 この時はただこう思っただけだった。どいつもこいつも。
「折角こっちが頭下げるっていうのによ」
「それで何だよ、あの態度」
「まあいいじゃねえかよ」
 仲間のうちの一人がここで言ってきた。
「鬼熊がいいっていうんならな。それはそれでな」
「いいか」
「ああ、帰ろうぜ」
 そしてこんな話になった。
「教室にな。皆単位も悪いだろ」
「まあな」
 これも全員だった。やっぱりどいつもこいつもまともに授業に出る奴等じゃない。それで単位なんて取れる筈がなかった。正直全員留年すれすれだ。
 
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