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八条学園怪異譚

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第五十話 秋に咲く桜その二

「その辺りの見極めが大事よ」
「スパゲティと同じでね」
「ええ、ただこのスパゲティだけれど」
 聖花が愛実と協力して作ったそのスパゲティはというと。
「うちのお店でも出せるわよ」
「いや、それは言い過ぎでしょ」
「言い過ぎじゃないわよ、美味しいわよ」
 実際に美味そうに食べつつ言う愛実だった。
「これだと幾らでも食べられるわ」
「有り難いわ、実はパスタ一キロの使ったから」
「一キロ!?」
「そうなの、一キロの袋のパスタをね」
 一気に茹でたというのだ。
「つまりね」
「一人辺り五百グラムね」
 愛実は頭の中で計算してすぐに述べた。
「ノルマは」
「食べられる?」
「ええ、多分ね」 
 愛実は絶対とは答えなかったがいけるとは答えた。
「これ美味しいししかも今お腹が空いてるから」
「じゃあね」
「食べるわ、けれどね」
「けれど?」
「一つ欠けてるものがあるでしょ」
 ここでこう言うのだった、聖花に対して真顔で。
「あえて言わせてもらうけれど」
「ワインね」
「そう、赤かロゼ」
 欠けているものはこれだった。
「それがあるとね」
「食べられるわね」
「やっぱりパスタにはね」
「ワインよね」
「そうそう、大蒜にチーズに」
 この組み合わせがなければ、というのだ。
「駄目でしょ」
「そうよね、ただ愛実ちゃんのお店食堂だから」
「ワインはないわよ」 
 酒はあってもだ。
「日本酒とビールよ」
「その二つだけよね」
「そう、あまり飲まないわね」
 食堂は昼に入るものだ、そもそも昼から酒を飲むという人もあまりいない。精々ビールを瓶一本程度であろうか。
「食堂ではね」
「うちもね」
 聖花も自分の家の店であるパン屋のことを話す。何時の間にかガラスのグラスが二つ、赤ワインのボトルも一本ずつ出ている。
 二人はそれぞれワインのコルクを抜いた、そのうえでお互いのグラスにワインを入れてから飲んでさらに話す。
「お酒置いてないから」
「パン屋さんは牛乳かジュースよね」
「そうそう、だからね」
 それでだというのだ。
「パンとワインの組み合わせもいいけれど」
「教会よね」
「主の身体と主の血ね」
 キリストのそれである。
「そうなるけれどね」
「けれど日本のパン屋さんだとね」
「ワインは置かないわよね」
「少なくとも私のお家のお店ではね」
 売っていないとだ、聖花は答える。
「ないわね」
「そうよね」
「お家の中にはあるけれどね」
 今飲んでいる様にだ、二人共仲良く飲んでいる。
 そしてパスタも食べつつだ、聖花は愛実に言う。 
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