フェアリーテイルの終わり方
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五幕 硝子のラビリンス
7幕
前書き
妖精 と 時の守り人
フェイたちが駆けつけた時、エルとルル以外のメンバーは傷だらけで膝を突いていた。
フェイは彼らを傷つけたであろう存在を宙に認める。――フェイは混乱した。
「あなた……ダレなの」
〈妖精〉である彼女は、アスカのようなエレンピオス側の大精霊を全て把握している。だからこの黒白の精霊の正体も看破できるはずなのに。
分からない。これは何の精霊だ?
黒白の精霊は答えず、手をフェイたちに向けた。それだけでマナを圧縮した黒球が生じ、フェイたちに撃ち出された。
(エリーゼとローエンに当てちゃだめ)
とっさの思いに応え、フェイの前で地面がトゲ状に幾重にも隆起した。黒球は全て隆起した土塊にぶつかって相殺された。
攻撃が止むや、ローエンとエリーゼはジュードたちに駆け寄った。
皆がひどい傷を負っている。エリーゼとローエンが彼らに治癒術を施し始めた。
「あなた、一体何なの? ほんとに精霊、なの?」
「戯言を」
その精霊は初めて声を出した。高圧的で不遜。それでいて胸が圧迫されるほど恐ろしい。
「精霊以外の何に視える」
「気をつけて! そいつは大精霊クロノス、カナンの地の番人だ!」
ジュードが傷を押して叫んだ。
「だってフェイ、あなたなんて知らない。わたしが知らない精霊が、エレンピオスにいるわけないんだから!!」
するとクロノスは、明らかな侮蔑でもってフェイを見下ろした。
「籠の中しか知らぬ兎が我らの全てを知っているつもりか。他の精霊どもはどうか知らんが、貴様が我を知っていようがいまいが、我は貴様に興味などない」
興味がない。憎まれるより八つ当たりされるよりずっといいはずの態度。
そのはずなのに、フェイはショックを受けた。
ショックを受けていると知って、気づいた。
(イタイコトされる〈妖精〉なんてイヤだったはずなのに。わたし、人からも精霊からもトクベツな自分をよろこんでたの? ヤダ。ヤダよ。そんなフェイはイヤ!)
クロノスの掌から闇色のレーザーが放たれた。土、では間に合わない。もっと速く出現してルドガーを、エルを護るモノをフェイは望んだ。
崖を境界線に光る大障壁が現れた。今フェイが出せる最大出力の、白のレーザーを密集させた壁。
光壁を闇色のレーザーが押す。フェイは両腕両足に力を入れて踏ん張った。
(頭、イタイ。普段こんな大技使わないから。どうしよう。このままじゃ押し負けちゃうよぉ!)
光壁が撓み、隙間から闇色のレーザーが突き破って入って来ようとしている。歯を噛み砕かんばかりに耐えてもそれを防げない。
もう無理――そう思った瞬間、フェイの前に白い影が躍り出た。
「ユリウスさん!?」
その男はルドガーと同じ二本の剣でクロノスのレーザーを受け流している。さらにルドガーと同じなのは、男が精霊の力を鎧として纏っている点だった。
「ルドガー、時計を! お前の!」
ルドガーは慌てたようにホルスターから真鍮の懐中時計を出して男に差し出した。彼はルドガーの時計を持った腕を掴み。
「うおおおおっ!!」
レーザーを横へ弾き飛ばした。攻撃が当たった空間が丸く〈穴〉を開ける。男はルドガーだけを掴むや、その〈穴〉にルドガーと共に飛び込んだ。
「逃げるが勝ちだぜ!」
アルヴィンがエルを抱えて〈穴〉へ続いて走った。
「フェイとルルも!」
「「分かってる!」」
ローエンとエリーゼが〈穴〉に飛び込む。レイアがルルを抱えて走る。
それに続いてジュードがフェイの手を掴んで〈穴〉へと駆け出す。
(この手、知ってる。湖の底の人とおんなじ。フェイに霊力野をくれた人と――)
暗い穴に飛び込む。天地四方がぐちゃぐちゃになるような感覚の中で、ジュードの手の力強さだけが確かだった。
後書き
クロノス が あらわれた !
さくっとエンカウントしてさくっと逃亡します。今回ここに割く時間はねぇ! その代わりと言っては何ですが今回はニ・アケリア編をちょい長めに書きます。分史ミラさん出まくります。
今回もオリ主に精霊術を使わせまくりました。それでも原初の三霊には勝てず。残念!(>_<) いやどうしても展開的に負けてもらわなきゃいけなかったので作者としてもちょい不本意というか悔しいセコンドみたいな感じですが。いざ戦闘になってもなかなかこういう才能を発揮するのは難しいと痛感致しました。
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