神器持ちの魔法使い
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ディアボロス
第11話 カチコミ
前書き
お久しぶりです。
遅いですが、明けましておめでとうございます。
一誠に魔王様直々の書面をグレモリーさんへ届けさせ、待ち合わせ場所である教会から離れたところで待っていた。
人影が見え、一誠が来たかと思うと見知った顔が三つ。
一誠の他にグレモリー眷属の木場と小猫がついてきていた。
「なんでお前がいんの?」
「ひどいな来ヶ谷君。イッセー君の援護だよ」
ふーんと鼻を鳴らす。
視線を移して小猫を見る。
「……秋人先輩が行くと聞いたので」
「ありがとな」
ちょうどいい位置にある小猫の頭に手をやり、撫でてやると気持ちよさそうに目を細める。
しかし、ハッと一誠たちの目があることに気付いて離れようとするがそうはさせない。
一瞬で背後に回り、片腕で抱き寄せて撫でまくる。
「確認しとくぞ。やっこさんは堕天使三羽にエクソシストが約三十名ほど」
「あー……小猫ちゃんはいいのかい?」
「にゃ、にゃあ……」
「これくらいにしとくか。……ん? 一誠、どうした?」
わなわなと震える姿を疑問に思う。
「どういうことだ秋人! あの無口でクールなロリっ娘小猫ちゃんがデレるなんて……ッ!? どういう関係だ!?」
「小猫の兄貴分だが? じゃれあう程度に仲良いが」
「なん、だと……!? つか、知り合いだって聞いてねえぞ!?」
「聞かれなかったしな」
ガクリと地面に膝を付き、世の中不条理だ! と項垂れる一誠。
そんな姿に木場は苦笑いを浮かべ、小猫は蔑んだ目を向けている。
「続きだが、教会内に堕天使一羽とエクソシスト二十弱で儀式の準備中。その他は警備とアルジェントさんの捜索だ」
「いつの間にそんなの調べだんだ?」
「なあに、ここに来ると中にエクソシストに聞き出しただけだ。ついでに全部仕留めたから実質、外は堕天使だけだな」
ちょいと死との境目を見せたらポロッと溢した。
それを複数回、街に出回っているエクソシストの数だけな。
「堕天使二羽はあの二人が片付けるんだろうし。……現状話しといてなんだが聞きいてもいいか?」
「何かな?」
「サクッと終わらせていいか?」
「「はい?」」
「いやな、教会に入って一人一人相手するの正直面倒なんだよ。運のいいことに上からの許可もあるんだ。だったら堕天使とエクソシストまとめてやってしまえば早いんじゃね? と思うんだよ」
「……どういうこと?」
「やっこさんは地下で儀式の準備。出口抑えられると外に出られない。水攻めとかで攻めれば簡単かつ簡潔にてっとり早く終わる。危険はこっちの方が断然低いだろ」
◇―――――――――◇
教会を対象に結界を張る。
事前に用意していた教会の見取り図のおかげで脱出口や抜け道も把握している。
昔、一誠ともう一人の幼馴染で遊んだことのあるこの教会だったこともあり、記憶と見取り図を照らし合わせることですんなりいった。
「そんじゃ、始めるぞ」
使うのは魔法に見立てた神器の能力。
水の生成にカモフラージュした隙間の能力で境界を開き、某ダムから水を拝借する。
その水を操るのは水平思考の河童の能力。
それらをあたかも魔法ですよと言わんばかりに魔法陣を展開し、準備に入る。
「おやおやおやー? 誰かと思えば尻尾巻いて逃げたアークマくんじゃないですか」
「フリード・ヒルゼン……ッ!」
出てきたのはいつぞやのはぐれエクソシスト。
一誠は声を荒げ、小猫と木場は戦闘態勢に入っている。
これが戦闘をしたことのある奴とない奴の差だな。
とりあえずは、
「木場。小猫も頼めるか?」
「……うん」
「そうだね。この中じゃ僕たちが適任かな」
「木場、不甲斐ない様だったら俺がやるから。ま、頑張れ」
二人にフリード・ヒルゼンを任せて続きに入る。
一誠は俺もと言わんばかりに突っ込もうとしていたので首根っこ掴んでその場に留めさせる。
「何すんだよ!?」
「今のお前じゃ邪魔なだけ。向こうはいいから堕天使をぶん殴る準備でもしてろ」
そう赤龍帝の籠手の倍化を促す。
渋々といった感じで言われたとおりにする一誠。
十秒ごとにboostと音声が流れだす。
「そろそろやるか」
魔法の準備が整い、発動させる。
魔方陣から勢いよく水が噴射され、地下へ洪水のように流れ込んでいく。
「そういや、一誠もあいつと一緒になってこんなことやってたよな」
「こんな鬼畜じみたことしてねぇよ!」
「そうか? 蟻の巣を見つけては笑いながら水を……瞬間接着剤も流し込んでたな。いやはや、無邪気って怖いな」
「これを無邪気で済まそうとするなよ!?」
一誠の言葉をスルー。
地下から聞こえる断末魔もスルー。
「さて一誠。準備はいいか? まあ、勝手にするけどな」
何をと言おうとした一誠だったがそれに気づいた。
徐々に勢いの弱まった水流を何かが逆流しているのを。
「ん、死んではないな。おい、いつまで寝てんだよ」
溝うちに魔力弾を一つ撃ち込む。
すると水を吐き、咳き込みながら目を覚ました。
「あとは任せるよ、一誠」
そう言ってこの場から離れ、小猫や木場のもとへ移動する。
エクソシストを何とか撃退できたようだが、流石に無傷でとはいかなかったようだ。
体のあちらこちらに怪我を負っている。
「兵藤くんはいいのかい?」
「大丈夫だろ。赤龍帝の籠手でずっと倍加してたんだ、それに……」
「それに?」
一度言葉を区切り奮闘する一誠を見る。
「神器は宿主の想いに応える。あいつの中でいろんな想いが巡ってる。理不尽な理由で殺された自分と殺されそうなアルジェントさん。他にも男としての誇示や区切りをつけるなどいろいろ」
一誠の純粋で真っ直ぐな想いを奴らは穢したんだ。
俺も許せないけどそれ以上に一誠が決意してやろうとした。
だったら俺はないも言わないし、それを見届けよう。
「ぶっ飛びやがれ!」
Explosionの音声と共に一気に一誠の魔力が跳ね上がる。
魔力が収束する左手で拳を握り、堕天使めがけて打ち抜いた。
「ほらな」
堕天使は境界へとぶっ飛んでいく。
轟音とともに教会の壁には穴が開かれ、大量の瓦礫の中に埋もれた。
「さて、これでひと段落だ。悪いが一足先に帰らせてもらう。家に一誠を心配している彼女を安心させないといけないからな」
「まっ―――!」
「さいなら」
木場の静止の声を上げる間もなく自宅へと転移した。
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