八条学園怪異譚
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第四十九話 柳の歌その十六
そうした話をしつつだ、美奈子は裏門を見つつ二人に話した。
「じゃあいいわね」
「はい、今から裏門を潜ってみます」
「そうして泉かどうか確かめてみます」
「ええ、ここが泉ならいいけれど」
美奈子は二人の側に立って述べた、もう既にかなり打ち解けているので二人に親身になってそれでこう述べたのである。
「そうじゃないとね」
「次ですね」
「次の候補地に」
「ええ、行くといいわ」
来た場所が泉でなくとも落ち込まずに、というのだ。
「是非ね」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「ええ、行って来て」
また言う美奈子だった、そうして。
二人は美奈子の言葉に押されたうえで裏門に向かった、そしてだった。
裏門を潜った、鍵は美奈子が農業科から持って来てくれていて二人に貸してくれた。
それで開けてだ、そのうえで。
二人は門を潜った、だが。
ただ潜っただけだ、農業科の敷地内に入り言うのだった。
「また次ね」
「桜の場所に行きましょう」
「あれっ、落ち込まないのね」
美奈子はすぐに次に行こうと言う二人に裏門の向こう側から言った。
「あっさりしてるわね」
「これまで何十と巡っていますし」
「それでなんです」
「そうなのね、慣れてるのね」
美奈子もこの辺りの事情を察して述べた。
「とっくに」
「これまで随分巡ってますし」
「ですから」
「そうね、じゃあ次ね」
美奈子も二人の話を聞いて言う。
「次の泉の候補地に行くのね」
「はい、次は桜のところに行きます」
「あそこに」
「あそこね、あそこはね」
「あそこは何があるんですか?」
「桜のところは」
「人魂さん達がいるわよ」
美奈子が先程話に出した彼等がだというのだ。
「私のお友達のねえ」
「あれっ、確か人魂って人の魂ですね」
「そうですよね」
「そうした人魂さんもいるけれどね」
他の種類の人魂もいるというのだ。
「妖怪に分類してもいい人魂さん達もいるわよ」
「じゃあ桜のところにいるのは」
「妖怪さん達でしょうか」
「妖怪さんが多いわね」
そちらの方の人魂が、というのだ。
「あと結構カラフルだから」
「赤とか青ですね」
「そうした色ですよね」
「白とか緑とか黄色もあるわよ、あと紫も橙も」
そうした色の人魂もあるというのだ。
「全体的にぼんやりとした感じの色だけれどね」
「その辺りは人魂だからですね」
「そうした感じの色なんですね」
「そう、光もぼんやりとしていてね」
鮮やかに光る人魂というものもない、これはどの国のものも同じだろうか。
「飛び方もゆらゆらふらふらとしてて、あとね」
「あと?」
「あとっていいますと」
「西洋の妖精も混ざってるから」
その人魂達の中にだ、妖精もいるというのである。
「そっちもね」
「何か色々あるんですね、うちの学校の桜のところって」
「西洋のものもなんて」
「一応外国にも桜はあるから」
有名なのはワシントンの桜の木である、今も春になれば咲き誇りアメリカの首都を映えさせている。その綺麗さが有名である。
「その関係もあると思うわ」
「そうですか、じゃあ」
「妖精さんにも会いに」
「ちょっと行って来ます」
「今度は桜のところに」
「ええ、じゃあまた会いましょう」
美奈子は陽気に笑って二人に応えた、こうした話をしてだった。
二人は美奈子と別れてそれぞれの家に帰った、そうして休み次の日に向かうのだった。
第四十九話 完
2013・9・3
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