夜ふかし
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第一章
夜ふかし
米沢さんのお家の拓哉君はいつも夜になるとお父さんとお母さんにこう言うのでした。
「嫌だ、もっと起きていたいよ」
こう言って駄々をこねるのです。
「僕眠くないから」
「駄目よ、子供は早く寝るものなの」
お母さんは困った顔で拓哉君に言います。
「だからね」
「寝ないと駄目なの?」
「そう、早く寝なさい」
こう言うのでした、そしてお父さんもです。
困った顔になってです、息子に言いました。
「子供は寝ないとよくないぞ」
「どうしてなの?」
「さもないとお化けが出るんだぞ」
だからだというのです。
「夜になるとお化けが出るんだぞ」
「だからだっていうのね」
「そうだよ、お化けに何処かに連れて行かれるから」
それでだとです、お父さんは拓哉君に困った顔で話します。
「早く寝ないと駄目だよ」
「お化けなんていないよ」
拓哉君ははっきりと言い切りました。
「絶対にいないよ」
「何でそう言えるんだい?」
「だって先生が言ってたから」
幼稚園の先生がだというのです。
「お化けや幽霊なんていないって」
「先生がそう言ってたのか」
「そうだよ、お父さん間違ってるよ」
絶対にだというのです。
「お化けや幽霊なんていないのに」
「いや、それはな」
「ちょっとね」
お父さんだけでなくお母さんもです、今の息子の言葉には困った顔になります。
それで、です。何とか言葉を選んで言うのでした。
「いや、お化けはいるんだよ」
「そうなのよ」
「だから夜ふかしをすればな」
「出て来て食べられるのよ」
両手をだらりとさせた姿勢で言うのでした。
「だからな、本当にな」
「夜は早く寝なさい」
「嫌だよ、僕眠くないから」
拓哉君も聞きません、意地を張った様にお父さんとお母さんに返します。
「ずっと起きてるよ」
「ううん、困った子だな」
「そうよね」
お父さんもお母さんも困ってしまいました、拓哉君はいつも夜遅くまで起きて中々寝ないで遊んでいるからです。
それで遂にです、お父さんはこうお母さんに言いました。
「こうなったらな」
「もう私達でやるしかないのね」
「ああ、僕達がお化けになってな」
「それであの子を驚かせてなのね」
「お化けはいるっていうことにしてな」
「それでもう夜寝かせるのね」
「これしかないだろ」
お父さんは苦い顔でお母さんに言うのでした。
「こうなったらな」
「そうね、じゃあね」
「早速用意をするか?」
「お化けの格好をしてね」
そしてだというのです。
「夜あの子は遊んでいる時にね」
「出てな」
「それで驚かせましょう」
「よし、じゃあそれでいこう」
こう二人でお話をしてでした、そうして。
お父さんとお母さんは二人でお化けの白い頭からすっぽり包む服を作りました、口は黒く大きいものを書いて目のところだけが空いています。
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