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私の名前はルーミア

作者:bonbon
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プロローグ

 
前書き
タイトルの元ネタはジョジョ第5部の『僕の名前はドッピオ』から来ています。
気がついた人はいるでしょうか?
 

 
 どうも皆さん初めまして。
私の名前はルーミアです。

 え?ふざけてんのか?などとつっこまれそうな気がするので、ここで説明をしようと思う。
 私はルーミアの体になる前の記憶、所謂前世の記憶というものを持っている。
一体これは誰かの思惑、神様の悪戯なのかは知らないが私が何を出来るかなんて高が知れている。

 さて、さっきから私なんて言っているが、私には前世の知識はあっても、自分自身の記憶がない。
 どういうことかというと、漫画のセリフやゲームの種類などの娯楽を覚えていても、自分の名前が何だったのか、職業が何だったのか、性別はどちらだったか、なんていうものが自身の頭の中には一切合財残っていないのだ。
 自分がどのような人生を送ってきたのか、それらが一切分からない。
ただ自分がこの世界の原作知識と呼べるものを少しは持っていたのが唯一の救いではあるが。

 そんな私が目を覚ましてはじめて見たのはあたり一面の闇である。
何も存在しない闇、後ろを見ても闇、上を見るとお月様がとても小さく弱々しく見えた。
――――それがこの私の異世界での最初の記憶だ。
 この闇が自分で出している物だって気付くのにかなりの時間がかかったが。気付いた時はすごい嬉しかったが、後から気づくのが普通より遅いことを知って落ち込んだのもいい思い出である。

 その後も色々あって、この幻想郷で生活をしていくのだが私は最初、この闇が解除できるようになっても、中々しなかった。なぜならこの体は低級妖怪である。即ち人間の妖怪退治専門の職の人(そんな人が紅白巫女以外にいるのか知らないが……)、中級妖怪には食べられ、大妖怪に至ってはクリボーとブルーアイズ以上の差がある。幻想郷の弱肉強食とはよく言ったものだ。
 上記のような展開でお陀仏になるのは流石に御免なので、私は自身のできる能力『闇を操る程度の能力』の練習をひたすらしていった。なぜ『暗闇』ではなく『闇』なのか、それについてはただ単に御札、リボンによる封印がされていないからである。良かった良かった。

 まぁ、こんな能力を入手したところで私の目標は生きることである。『平穏』に生き延びるためになんでもする殺人鬼に比べれば意思は弱いのだろうが。



「出来た…か?」



 考え事をしつつ能力を使っていたが、とうとう出来た。
 今行っていた作業は闇を固めて細工するというもの。闇はただ広げて視界を奪うだけではなく、固めてぶつけることで物理的破壊力を持つという性質を持つ。
その威力は中級妖怪に入りかけの妖力しかない私でも大地を1メートルぐらい抉り取ることができ、相手の攻撃で破壊されても再生可能というハイスペックなのだ。
そんな闇を使って作ったのはこの世界には存在しないもの、『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画に出てきた『スタンド』その名も『ザ・ワールド』である。
 当然原作で出た時を止めることなんてまったくできず、パワー、スピード、精密動作性、どれを取っても本家には及びもしない。
 だが、古代ギリシャの彫刻を思わせる肉体美、背景に『ドドドドド』とでも付きそうな凄み!性能は幻想郷では低いほうなのだが作ったのに時間をかけたせいか、とても愛着を感じる。こんなものを作ったのには半分驚きながらも半分は呆れている。しかし、この闇で作り出したザ・ワールドは私の今持つ最大の自衛手段なのだ。それを半ば趣味で作ってしまうのは凝り性なせいなのか、はたまたわたしがただの馬鹿だからか、多分その両方だろう。
 今、私は性能は幻想郷では低いほうと言ったが、なぜそれが最大の自衛手段になるか、疑問に思う人がたくさんいるだろう。その理由は何度でも再生可能というところと、遠隔操作が可能という点だろう。
辺りに闇さえあれば、一瞬で再生可能で遠隔操作ができてとどめとばかりに一撃でも当たれば人間なんかぶっ飛ばすことができるのだ。
これに辺りを闇で覆いつくせる私の能力を使えばたぶん大体の奴に勝てるだろう。



「あ、そういえば今日妖精達と遊ぶ約束してたっけ」


どうも1人暮らしに慣れると痴呆が進むらしい。
それに誰も居ないのについつい喋ってしまう、独り言ばっかで寂しい奴とか思われたくないし直そうと思っているのだが中々直らない。
大体時間なんて感覚は腹時計ぐらいしか持ち合わせておらず、日が昇っているか落ちているかで時間を予測するしかないのだ。
考え事が多くなってしまったが、そろそろ妖精に会いに湖に行こうと思う。特別にいる物があるというわけではない、着の身着のままで暮らしている私にとって持っているものは自分の肉体しかないのだ。
今日は何をして遊ぶ日だったか、どうやって遊ぼうか、どうせならザ・ワールドを自慢してもいい。
そんなくだらないことを考えながら湖への道を進んでいく。
私は感受性が豊かではないが、この幻想郷の自然の多さには素晴らしい、という感想しかうかばなかった。今は森とか川の大自然の風景を見ても、いつもどおりだなぁ、という感想しか出なくなっているが。
大都会に住む人が田舎に行ったときに「空気が綺麗だな」っていう感想を持つのに似たようなものだろう。




「あ、ルーミアちゃんだ」


 私が湖につくと妖精がこちらに近づいてくる。皆知ってる大妖精こと通称大ちゃんである。
妖精の中では強い力を持っており、この湖にいる氷の妖精のお姉さんポジションという座を獲得している。

「やっほー、遊びに来たよ大ちゃん」

「うん、でもまだチルノちゃんや他の子も来てないよ」

 地面に着地してこちらを見ながら言う大ちゃん。はて、まだ少し早かったのだろうか、それとも急に用事が出来て来れなくなってしまったのだろうか。

「時間が少し早かったようだね。でも、もうちょっとしたら来ると思うよ」

「あ、そうだったの。良かったー。また時間を間違えたかと思ったよ」

 安堵から来るため息をつきながら返事を返す。
 恥を晒すようだが私は現在進行形で能力の練習をしている。闇を操る時は闇の中が見えても外の風景が一切見えない。どうしても、外の時間が分からず練習に没頭してしまい、こういった約束を忘れてしまう時があるのだ。最近になってようやくなくなってきたのだが再発したかと思ったのだ。
約束をすっぽかしても皆私のことを忘れて遊んでもいいよ。と言っているが、約束を破るのは何となく気がひけるのだ。

「お、今日はルーミアが早く来てるのか。珍しいな、いつも最後のほうに集まってくるのに」

「珍しいは余計だよチルノ。それよりも今日は大ちゃんと一緒に来なかったのか?」

「あはは、ルーミアちゃん、いつもわたしとチルノちゃんが一緒にいるわけじゃないんだよ」

「そーなのかー、今日はこれだけしか遊べる妖精がいまいのか?」

「あたいに今日遊べないって色んな妖精がいってきたきたけど何かあるのかな?」

 ちなみにチルノは霧の湖付近の妖精のリーダー的存在であり、妖精のなかでは最強クラスのパワーを誇る凄い奴なのである。だがあくまで最強なのは妖精の中だけであり、妖怪に襲われれば運がよければ勝てるが悪ければ一回休みになってしまうだろう。そもそも妖精自体が一般人に勝てないぐらいなのだ。
その妖精が妖怪に運がよければ勝てること自体がとんでもないことなのだが。

「そういえば人里のほうの噂なんだけど博麗の巫女が交代したようだよ」

 そういえば交代する前の博麗の巫女は妖怪を見敵必殺するような人ではなく、人に積極的に害をなす妖怪のみを退治していくプロのスナイパーのような人だった。ぶっちゃけるとこの人のお陰でいま私が生きてられているようなものなのだ。これが見つけたそばからジェノサイドしていくような人だったら私は何回も死んでいただろう。……おっと思考がそれてしまったな。

「みんな警戒して湖から出たがらないのかな?妖精がそんなこと気にするのかな」

 今疑問に思ったことを聞いてみる。まだまだ知らないこともたくさんあるし聞けることは何でも聞いておくというのが私のスタンスだからだ。

「わたしやチルノちゃんもだけど一回休みは出来ればしたくないしね、すぐに忘れるっていってもなるべく避けたいって言ったところかな」

 へー、と思う。チルノや大ちゃん以外の妖精でもこういうことはしっかり考えているっていうのは始めて知った。妖精は基本的にバカっていうのが原作の設定でもあったはずなのでこういうことを知ると逆に新鮮な気分になる。でも、こういうトラウマをほじくっちゃうみたいなことをすると大ちゃんに申し訳ない気分になってくる。何でも聞くのはちょっと危険だったようだ。反省反省。

「何となく変なこと聞いちゃってごめん」

「まあ、妖精と妖怪っていう種族の違いもあるししょうがないって。それよりもさ、今日は何して遊ぶ?」

こういう雰囲気が嫌だったのか場の空気を変えてくれる大ちゃん。こういうときの心配りがいつにも増してありがたい。

「あたいは鬼ごっこがしたいなー、人間驚かすのも楽しいけど、博麗の巫女が交代して間もないしね」

とくに私は意見が無いので同意しておこう。大ちゃんもそうするみたいだし。

「よしっ、なら鬼ごっこに決定ね!最初の鬼はあたいがやるわ。それでいい?」

「うん、いいよ」

「大ちゃんに同じく」

「じゃあ十数え終わったら追いかけ始めるわ、いーち、にーい……」

 チルノが数を数えているうちに逃げていく私達。さて、この鬼ごっこのルールが何だったか思い出してみよう。ルールは簡単でタッチされた人?妖精が鬼になって鬼だった人?が逃げるといういたってシンプルなルールだ。だがそれだけでは終わらないのが幻想郷。この鬼ごっこ、能力の使用が許されているのである。チルノだったら相手を死なない程度に凍らせて逃げるもよし、タッチするもよしな凶悪なルールなのだ。勿論遊びなので加減はしなければいけないが。
自分で言っておいてなんだけど随分バイオレンスな遊びである。

 そんなことを考えているうちにチルノが追いかけてきた。この鬼ごっこは範囲を狭くしていて遮蔽物が殆ど無い中で大体二十メートル四方の正方形のフィールドで行わなければいけない。一回範囲を決めずにやって一回もタッチできない妖精がいたからな。


「待てー!」

 そう言いながらこちらに氷の弾を撃って牽制してくるチルノ。しかし、待つわけにも当たるわけにもいかないので、全速力で逃げつつザ・ワールドの腕だけ作ってチルノの氷の弾をはじく。後ろでチルノが「んなッ!」と驚いているがそうだろう。今までの私ならこれを避けるためにスピードを落として回避しなければならなかったのに、避けられるどころか余裕ではじかれたのだ。私がチルノの立場だったら驚くことだろう。

「どーだ!私の作ったザ・ワールドは!(どやぁ)」

「うぐぐっ、そんなことされたら勝てないじゃないか!手が四本もあるなんてずるいぞ!」

「それが私の能力なんだからルール違反じゃないからね」

「くそー!捕まえてやる!」

「いいよ、かかってきな」

 なんかノリで言ってしまったが思い返すとちょっと、いや結構痛いセリフを言ってしまい後悔する。
まあ、今はこの鬼ごっこに集中するか!










「いやーっ、楽しかったねえ大ちゃん、チルノ」

「あたいはルーミアが一回も捕まらなかった時点でつまんなかったよ」

「まあまあいいじゃないチルノちゃん、また今度捕まえれるようにすれば」

「うん。そうだね大ちゃん。ルーミア、今度はあたいのほうが最強だって証明してやるからね!」

「おお、こわいこわい。でももうそろそろ暗いから帰ろうよ、夜は他の妖怪も活発化するし」


 空を見上げれば既に日が沈みかけている。そろそろ帰らなければ私なんか簡単に倒してしまう妖怪がぞろぞろ出てくる。そうなれば今日の自分の寝どころが無くなってしまうだろう。妖精は基本的に寝どころを作らないらしいしね。

「ほんとだ、暗くなる前にちゃんと帰れるルーミアちゃん?」

「今からならぎりぎり間に合うさ、じゃあね大ちゃん、チルノ。また今度」

「じゃあね、ルーミアちゃん」

「また鬼ごっこしよー、ルーミア!」

 二人の声を聞きつつ湖を去っていく。そして私は大変なことを思い出す。そういえば次遊ぶ日決めて無いじゃん、と。













 無事に自分の棲家まで帰ってきた私は特にすることも無いのでボケーっとしていた。ぶっちゃけるとやることが何も無いのである。遊び尽くして疲れているし妖怪の体なので時々人間を驚かすか、人間の心の闇でも食べていれば食欲は満足できるのである。
 そうそう、この私と原作のルーミアでは少し勝手が違う。原作のルーミアは人間を丸ごと食べなければいけなかったのに対して私は、人間の心の闇、要するに人間の悪いところと考えられているものを横からすくめとるように食べることで自分の存在を保つことが出来る。こういう詳しいところまで知ることができたのも必死こいて生きてきた十数年そこらがあるからだろう。

 この十数年は本当にすごかった。生きるか死ぬかの瀬戸際で闘っていたこと、人間に襲われたこと、妖怪に食べられかけたこと、色んなことがあった。しかし、生きることを目標に生きていたが、最近は殺されかけることも少なくなった。そろそろ趣味といえるものを増やしたほうがいいのかもしれない。




そんなことを考えながら私はこの幻想郷で生きている。良くも悪くも、ね。










 
 

 
後書き
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