俺の異世界転生記
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一日目
異世界に転生させられ、目を開けると人の行き交う姿が見えた。まだ昼間のため、空からは燦々と降り注いでいる。辺りを見渡すとどうやらどこかの街の路地裏にいるようだ。
(取り敢えず路地から出よう。)
街中は石造りの建物が多く、人間に至っては獣耳を生やしたものや、耳の長いものがいた。
そこでようやく思い出した。
自分が無一文であり、この世界について何も知らない事に。
(めぼしい物は何も持っていない。どう生活すればいいんだ?)
それからある程度町を歩き、やがて日が暮れかけてきたのか町を赤く染める。
(まるで分からない......)
施設や仕事紹介所など探してみたが、聞いても訳も分からない施設を紹介されるだけで何の解決もしなかった。
このままじゃ、今日は野宿か.....
そう思い、中央の町の広場で見つけたベンチで横になった。幸いにも、柱の男の身体スペックを持っているので寒さにも暑さにも関係なく野宿など問題無かった。太陽というデメリットもない上、柱の男は不死身だ。
(日本人としては、野宿には抵抗があるが仕方ない)
明日は何とかしようと考えてながら、眼を閉じる。別に睡眠も必要ないが、人間としての習慣はそう簡単には消えない。無理に睡眠を止めなくてもいいが。
「あんた、ねぇ、起きなさいよ。死にたいの?」
しばらくして、夜のと張りが降りた頃、俺の体が揺すられた。
誰だ....
「この町の衛兵長、ミール・グルガよ。それよりもあなた、こんな寒い夜に広場で寝ていると死ぬわよ。どこか暖まれる場所で寝なさい」
そうしたいのはやまやまだが、無一文でね.....明日、仕事を探すまでは野宿するしかない。
「無一文!1ギルも持ってないの?」
俺は頷くと改めてミール・クルガを見た。
見た目は中学生くらいで、銀色の甲冑を身に付け腰にはロングソードをぶら下げている。ピンク色の髪が兜からチラチラと動くたびに動いている。
「はぁ....どうしてそうなったの?」
この町に来たばかりで、どこへ行けば仕事を貰えるか分からない。
「聞けばいいんじゃない?」
聞いてみたが、よく分からない店に連れていかれた。だから断った。
ミールはそこまで聞くと何かを思案するように眉間にしわを寄せて唸った。俺はミールが口を開くまで月を眺める。
「はぁ....理由は分かったわ。そうね、理由も理由だし。特別に衛兵の宿舎に泊まらせてあげるわ。それと仕事も明日教えてあげる。あ、確認だけど、冒険者になりたい?」
冒険者?.....それで金を稼げるならなりたい。
そういうとミールは小さくを笑みを浮かべて、手を引っ張って俺を立たせた。
「なら丁度いいわ。明日は冒険者ギルドに連れていってあげる。冒険者の登録には少しお金もかかるけど、貸しにしとくわ。感謝しなさいよ?」
ああ、礼を言う。俺は影沼 八雲だ。
「カゲヌマ・ヤクモ?変わった名前ね。じゃ、ヤクモって呼ぶわよ」
好きにしてくれ。
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