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二分の一の神話

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第三章

「お互い一人ならね」
「じゃあ僕と」
「貴方さえよかったら」
 無意識のうちに思わせ振りな笑みを彼二向けた。
「付き合わない?」
「僕でいいんですか?」
「ええ、貴方に決めたから」
 探していた相手にやっと会えた、とは本人には言わなかった。
「それでお願いするわね」
「何か嘘みたいです」
「私に告白されたことがかしら」
「それもそうですけれど」
 それに加えてだと、私に答えてくれる。
「それ以上に彼女が出来たことが」
「今まで彼女いたことなかったの」
「そうなんです」
 私に真っ赤になった顔で答えてくれる。
「実は」
「私もよ、けれどはじめて同士だけれどこれから宜しくね」
「お願いします」
 二人でこう話した、そしてだった。
 私は後輩の子と付き合いだした、私もやっと一つになれた気がした。
 相談したクラスメイトの娘にこのことを話すとこう言われた。
「よかったわね、けれどね」
「けれど」
「暫くは一つでいてね」
「半分と半分でなの」
「そう、一つのままでいてね」
 こう私に言ったのである。
「絶対にね」
「それどういうことなの?」
「そのうちわかるから。というかね」
「というかなって」
「これでわからないの?」
 怪訝な顔で私に言って来る。
「いや、本当に」
「だからそれって」
「まあそのうちわかるわ、それでもね」
 わかるがそれでもだというのだ。
「身を以てわかるってことはない様にね」
「身を以てって」
「特にあんた」
 彼よりも私ということだった、遥かに。
「あんたが注意しなさい」
「本当によくわからないけれど」
「疎いというか鈍いというか、とにかく気をつけてね」
 それがどういったことかは言わずに私に告げた、そう言われてからだった。
 私は先輩にこんなことを言われた。場所は今度は喫茶店じゃなくて校舎の屋上だ、そこで二人でベンチに並んで座って言われた。
「あのね、実はね」
「実は?」
「私結婚することになったの」
 こんなことを言って来た、恥ずかしそうに。
「相手は彼氏と」
「その人とですか」
「実は彼氏ね、コンビニの店長さんでね」
「店長さんって」
「そう、アルバイトしている先のね」
 まさにその人だというのだ。
「まだ二十四だけれどしっかりしてる人で」
「その人と付き合ってたんですか」
「そうなの、それでね」
 私に恥ずかしそうに顔を俯けさせて話してくる。
「実は、子供が」
「あの、それって」
「出来たのよ、だから高校卒業したらね」
「卒業って今九月ですから」
「今からその準備してるの」
「そうだったんですか」
「今三ヶ月よ」
 先輩のお腹を思わず見た、まだ目立ってはいないけれど。 
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