とある星の力を使いし者
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第135話
「という訳だ。
罰ゲーム関してはまた今度にでも」
愛穂からの電話が終わり、携帯をポケットにしまいながら後ろに立っている美琴に話しかける。
しかし、振り返った瞬間に麻生に向かって電撃の槍が飛んでくる。
すぐさま、能力を発動して電撃の槍を消滅させる。
二人の周りにいた学生達はその光景を見て、能力者同士の喧嘩か何かと判断して、距離を取りながらもその光景を見続けている。
「お前、いきなり何をする。」
「あんたね!!
私が罰ゲームを実行しようと思っている矢先に、その態度はないでしょう!!」
「だが、予定が入った。」
「何が予定が入った、ですって!
電話の最中に私の顔を見て、考えていたでしょうが!!」
もう一度、電撃の槍を麻生に向けて放つ。
もちろん麻生の能力の前では全く通用しない。
野次馬たちは麻生達のやり取りを見て、興奮を隠せないでいるが美琴の電撃の槍が一〇億ボルトの電力を秘めている事が分かれば、こんな風に興奮していられないだろう。
美琴の言っている事は間違ってはいなかった。
愛穂から呼び出しを受けた時、美琴の罰ゲームか呼び出しに応じるかかなり迷っていた。
結果、愛穂の呼び出しの方がまだましだと判断したのだ。
「あんたは分かってんの!?
私は勝ったのよ、勝者なのよ!
敗者に罰ゲームをさせる権利があるのに、どうして後回しにされないといけないのよ!!」
「まず、前提が間違っている。
俺はその賭け事に加わっていない。」
「私が変に楽しみしていたのが馬鹿みたいじゃない。」
最後の方には声が小さくて何を言っているのか聞き取れなかった。
何より、麻生の言葉を全く聞いていない。
麻生の方からすれば原因は不明だが、美琴が落ち込んでいるように見えた。
(結局、こうなるのか。)
疲れたようなため息を吐くと、美琴に近づき頭に左手を乗せる。
「分かった。」
「え?」
「こっちの用事が済み次第、お前の罰ゲームとやらを受けてやるよ。
いつ頃に終わるかはまだ分からないが、そう遅くはならない筈だ。」
美琴の頭を軽く撫でながら、そう言う。
自分が何をされているのかようやく理解した美琴は、一瞬で顔が真っ赤になる。
野次馬は能力者同士の喧嘩ではなく、夫婦喧嘩と判断したのかリア充は死ね!、という言葉を残して去って行く。
「ふ、ふん!
う、受けてやるなんてえ、偉そうに言わないでよね!
その・・・あんたが罰ゲームを受けるのは決まっている事なんだから!」
「ああ、分かった分かった。
んじゃ、待ち合わせはコンサート会場。
時間はそうだな・・・・・二時くらいに。」
「わ、分かったわよ。」
美琴の了承を得て、頭から手を放すと麻生は来た道を戻る。
麻生がどこかへ行っても未だに顔が赤い美琴は、顔を横に振り思う。
(勘違いしちゃだめよ!
あいつはあれを素でやる男なんだから!)
そう思う美琴だが、さっきの光景が頭から離れるのに時間がかかるのだった。
背後でタクシーが走り去って行くエンジン音が聞こえた。
一方通行はそちらは見ない。
横で打ち止めが何か言っているがそちらに視線を向けない。
ただ、目の前に広がる不可思議な光景に目を奪われている。
より詳しく言うと、ここはとある高校の校門近くだ。
遠目に見てもごくごく普通の平均的な突出したところは、何もないだろうという感じがうかがえる鉄筋コンクリートの校舎があるのが分かる。
しかし、それは問題ではない。
一方通行が見ているのもそういった校舎ではない。
彼の前に立っているのは、その高校で教師をやっているという二人の女性だ。
一人は顔を知っている。
長い髪を後ろで束ねた、緑のジャージを着た女だ。
黄泉川愛穂とかいう名前で、学園都市の警備員も務めている。
子供に武器を向ける趣味はないとの事で、強能力者程度なら盾一つで叩きのめすというトンデモ体育系教師だった。
彼女も問題ではない。
一方通行が凝視しているのは、もう一人である。
「な、何なのですかー・・・?」
月詠小萌と名乗った女性だが・・・下手をすると、またもやスポーツバッグの上で正座を始めている打ち止めよりも小柄だ。
一方通行は少し考え、やたら背の低い女をチラリと一瞥して言う
「何だこの説明不能な生き物は?
どっから入り込ンできた?」
「違うのですよ。
先生は普通に大学を卒業して学園都市へやってきたのですー。」
ますます状況を混乱させる一言に、一方通行は思わず目を細める。
「細胞の老化現象を抑える研究はもォ完成してたって訳かァ。
クソッたれが、これが『実験』当時ささやかれていた『二五〇年法』の実態ってトコだな。
世界の裏の裏まで知ったつもりでいたが、学園都市ってなどこまで科学技術を先に進めちまってやがる・・・・ッ!」
「え、ええと、そうでなくてですねー。」
「あるいは研究は未完成で、この人はそれらを解析するために捕獲された生体サンプルなのかも、ってミサカはミサカは少々真剣な顔でお伝えしてみる。
可哀想に、きっと実験だらけでもうこのままずーっと自由時間とかないんだ、ってミサカはミサカはハンカチ片手に語ってみたり。」
「あのう!何で先生は自己紹介しただけでそこまでシリアスな言葉を投げかけられなくてはならないのですか!?
黄泉川先生も笑ってないで何とかしてくださいですよーっ!!」
おろおろするミニ教師に、ジャージ女は腹を抱えて笑っていた。
ここまで一方通行達を連れてきた芳川桔梗も、まさかこんな同行者がついてくるとは思っていなかったのだろう。
彼女も笑顔を浮かべているが、それはどちらかというと研究者魂に火が点き始めた少々危うい感じの表情だ。
笑い続ける愛穂は一方通行へと視線を移す。
「って訳で、これからはこの黄泉川先生が君達のお世話をするじゃんか。
ま、部屋は余ってるしこっちは居候ができても問題なしじゃんよ。」
「あくまで暫定的だがな。」
一方通行のつまらなさそうな声に対しても、『ごっ、誤解は解けたのですかー?』とか何とか言っている小萌先生の頭をぺしぺし叩きながら、愛穂は笑っている。
「っつか、オマエはそれで良いのかよ?」
一方通行は極めて普通の口調で言った。
「俺の取り巻く環境がどンなモンかは分かってンだよな。
深夜に火炎瓶を放り込まれる程度だと思ってンなら考え甘ェぞ。
俺を匿うってなァ、学園都市の醜いクソ暗部を丸ごと相手にするよォなモンなンだからな。」
「だからこそじゃんよ。」
愛穂も、これに当たり前のように対応する。
「私の職業を忘れたか。
警備員としちゃそっちの方がやりやすいじゃんか。
つっても、警備員の自宅へ馬鹿正直に襲撃を仕掛ける連中は少ないと思うけどね。
この街の闇は、私達から見えない位置で活動するのが基本じゃん。
下手に宣戦布告すれば、どっちが潰されるかなんて目に見えてんだし。」
「・・・・・・」
一方通行はわずかに黙って、愛穂の言葉を吟味する。
小萌先生だけは全くついていけていないようで。
「あれ?いつの間にか切り替わったこの空気は何ですか?」
と、周囲を見回していた。
「死ンでも文句を言うンじゃねェぞ。」
「大丈夫だよん。」
「オマエの名前が『連中』のリストに登録される事だってあるかもしンねェ」
「その不良グループってのを更生させんのが私の仕事でね。
助けるべきガキを怖がってたら最初の歩み寄りも出来ないじゃんよ。」
一方通行は舌打ちした。
打ち止めといいコイツといい、いつの間にか自分の周りにはこの手の馬鹿が増え始めている。
すると、打ち止めがさっきから疑問に思っている事を愛穂に聞く。
「ねぇねぇ、恭介はここにはいないの?、ってミサカはミサカは周りを見回して恭介を探しながら聞いてみる。」
「恭介なら、こっちに向かってるじゃん。
もうすぐ来ると思うよ。」
「あら、意外ね。
彼が来るなんて、珍しい事もあるわね。」
「それに関してはウチも驚いてるじゃん。
面倒くさがりの恭介が来るなんて、明日は雨じゃん。」
「誰が何だって。」
一方通行達のさらに後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
その場にいた全員がその声のする方に視線を向ける。
そこには、鞄を片手にこちらに向かって歩いている麻生の姿があった。
「誰が面倒くさがり屋だって?」
「別に間違っていないじゃん。」
「愛穂の言うとおりだと思うけど。
珍しい事もあるのね。」
「折角来てやったのに、その言いぐさはないだろ。」
愛穂達の言葉を聞いて、素直に来た事を少し後悔する。
こっちにやってくる麻生を見て打ち止めは走り寄ってくる。
「恭介だ!、ってミサカはミサカはあなたに向かって飛び込みながら言ってみる。」
突撃してくる打ち止めを受け止める。
「その様子だと、退院後の生活を心配する必要はないみたいだな。」
「テメェは元からそんな事を心配するような奴じゃねェだろうがよォ。」
「そうでもない。
お前達が入院している時に世話をしたんだ。
最低限の生活をしてもらわないと、世話をした意味がない。」
「んじゃあ、役者は揃ったみたいだし、ウチのマンションに向かうじゃん。」
「レッツゴー!!、ってミサカはミサカは片手を空に向かって突き上げながら言ってみる。」
そんな光景を見ながら一方通行は思った。
能天気な連中が多くて困る、と。
後書き
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