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剣の丘に花は咲く 

作者:5朗
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第十章 イーヴァルディの勇者
  第五話 動き出した歯車

 
前書き
 そろそろ十章も佳境に入ってきました。
 この『剣の丘に花は咲く』のゼロの使い魔編は、『起承転結』で言えば、大体原作の1~5巻が『起』で、6~9巻が『承』、10~15巻が『転』、最後に16~20巻が『結』になります。
 今回の第五話は、『転』―――物語が大きな転機を見せる場面です。
 これから物語は様々な意味で加速していきます。

 それでは、第十章第五話『動き出した歯車』をどうぞ。
 

 
 ガリア王国の首都リュティス。
 ハルケギニアでも屈指の大国の首都に相応しき美しき街並みの中、一際目立つそれはヴェルサルテイル宮殿。
 首都の華と歌われるその宮殿の中に、更に際立った美しさわもつ部屋があった。
 王族の色とも言える青いレンガで建てられたグラン・トロワ。
 その一室の中で、喜色が混じるガリア王ジョゼフの張りのあるバリトンが響きわたっていた。

「噂に聞いていたが、やはり大したものだなエルフというものはっ!」

 ジョゼフは目の前に立つ客人―――エルフのビダーシャル卿に笑いかける。

「北花壇騎士団の中でも腕利きであったのだがな我が姪は……それを難なく捉えるとはな、これも先住魔法とやらの力か?」

 ニヤリとした笑みを向けられたビダーシャルの視線が、床に転がされたタバサに向けられる。床に転がされたタバサは後ろ手に縄で縛られ、その目は硬く閉じられていた。ただの眠りではない。魔法、それもエルフの先住魔法による眠りであり、最低でも今日一日はどんな事をされたとしても目は覚めないだろう。

「お前の要求である裏切り者は捕らえた……交渉の権利を得たということでよろしいか?」
「ああ、いいだろうエルフ王の使者よ」

 床に転がるタバサに視線を向けたままのビダーシャルに、ジョゼフは青い顎鬚に手をやりながら頷く。

「我らにお前たち蛮族のような王はいない。よってお前の言う『王の使者』という言葉は正確ではない」
「ふむ、王はいない、か、そう言えば『統領』であったか、しかし指導者を選ぶためとはいえ、いちいち入札を使うなど手間ではないのか?」

 一国の王に対し随分と無礼な言葉を投げかけるビダーシャルに対し、ジョゼフは何ら痛痒を感じていないのか、口元に未だ笑みを浮かべたまま首を傾げてみせた。これには、ジョゼフの性質とガリア王国の特殊な立ち位置によるものが多い。ガリア王国はエルフとの国境を接していることから、エルフとの交流が盛んであり、その交流もお世辞にもいいものとは言えないため、良くも悪くもジョゼフはエルフからの蔑視にはなれていた。
 顔を上げたビダーシャルは、ジョゼフに向けた目をスッと細める。
  
「我らは蛮族たちとは違い、血により指導者を選ぶ愚は早々に理解し、指導者を民の総意で選ぶようになった。我らが選んだ『統領』を貴様たち蛮族が『王』と呼ぶのは侮辱と知れ」
「ふん。ならば『ネフテス』のテュリューク統領の意を聞こうかな、ビダーシャル卿」

 冷徹なビダーシャルの視線が刺さるも、ジョゼフの浮かべた笑みは崩れない。

「……我らが守りし『シャイターンの門』……お前たちには聖地と言えばわかりやすいか、その活動がここ最近活発になっている」
「ほう、聖地のことをエルフは『シャイターンの門』と呼ぶのか」
「そうだ……しかしやはり理解が出来ないな。何故お前たちはあれ(・・)を聖地と呼ぶのだ? かつてこの世界を滅ぼしかけたシャイターン(悪魔)が現れた門を……」
「世界を滅ぼしかけた……か、そこがわからないな。何故我らが聖地と呼ぶものをお前たちエルフはシャイターン(悪魔)の門と呼び恐るのだ」
「それはお前たちが知らないからだ」
知らない(・・・・)? ふむ、認識の違いではなく『知らない』のか?」

 ジョゼフが眉を微かに曲げ困惑を示し、ビダーシャルは目を閉じた。己の目に宿る恐怖を隠すかのように。

「……まあ、知らないのは無理もないことか……シャイターン(悪魔)は無数の国を滅ぼした。蛮族も我らエルフの国さえ例外なく、その文化文明……知識さえ…………生き残れたのは僅かに我らエルフだけだった」
「ほう……虚無とはそこまで」

 感心するように声を漏らしたジョゼフに、ビダーシャルは首を振る。

「虚無ではないシャイターン(悪魔)だ」
「同じではないのか?」

 ジョゼフの目がほんの少しだけ細まる。

「違う。確かに我らの中にも虚無とシャイターン(悪魔)を同一しているものがいるが、全く違うものだ。我らの予言には、こう唄わられている『四の悪魔揃いし時、真の悪魔の力は目覚めん。真の悪魔の力は、再び大災厄をもたらすであろう』と……だから勘違いしても仕方がないが……」
「……『四の悪魔』が虚無で、『真の悪魔』とやらがシャイターンだと言うことか」

 小さく頷くビダーシャル。

「言うなれば、虚無は鍵だ……『真の悪魔』が現れる……『シャイターン(悪魔)の門』を開くためのな」

 閉じていた目を更に強く瞑る。

「……六千年前の……『真の悪魔』……シャイターン(悪魔)による大災厄……たった十三日で……百万のエルフが一万にまで……っ……貴様ら蛮族の国は文字通り消し飛んだ…………鍵を揃えてはならないのだ……決して…………」

 目を隠そうとも、その声から隠しきれない恐怖が滲んでいた。

「そこまでか……『真の悪魔』とやらの力は」
「桁が違う。血の如き赤き槍の一突きで、数百のエルフが串刺しにされたと……歪な剣の一振りで、城壁を崩されたと……矮躯な男の拳により、数百のエルフの戦士が殺されたと……我らエルフは幼き時から諫められる……決して『真の悪魔』を目覚めさせるなと……奴らは世界を滅ぼすシャイターン(悪魔)だと」
「そのためならば、蛮族と手を組むと」

 にやりと口角を曲げて笑うジョゼフを、片目を小さく開いたビダーシャルが睨み付ける。

「そうだ。大災厄から六千年。これまで幾度となく虚無()は揃いかけたが、その度に我らはあらゆる手を使いそれを阻止してきた。だが、今回は何か様子が違う。ここ数十年、シャイターン(悪魔)の門が今までになく活発に動きだし、蛮族が言う『場違いな工芸品』が現れる回数が増えている。このままでは、『シャイターン(真の悪魔)』が現れるかもしれない……ならば阻止するためどんな手段も取ろう、蛮人とも手を組もう……」
「では蛮人と手を組み、お前たちは余に何を望む?」
「近づかせるな」

 肩を竦めるジョゼフに、ビダーシャルは短く伝えた。

「お前はハルケギニア(蛮人世界)で最大の王国の王と聞く、ならばその力で門に近づこうとする者たちを抑えて欲しい」
「それだけでいいのか?」
「そうだ」

 頷くビダーシャルに、「ふむ」と顎鬚をなぞりながらジョゼフは頭上を見上げる。高い天井に視線を向けた後、顔を下ろすとビダーシャルと視線を合わせた。

「……そうか、『シャイターン(悪魔)の門』を開けるためには、四つの虚無が門の下まで行かなければならないのか」
「ッ!!」

 ざわっ、と空気が騒ぎ、ビダーシャルが腰を僅かに落としジョゼフを睨み付ける。
 その顔は、今までの無表情が嘘のように、憤怒と苛立ちに染まっていた。

「貴様……まさか」
「そう怖い顔をするなビダーシャル卿。ただの独り言だ」
「…………」

 殺気を向けられながらも、泰然とした様子を崩さないジョゼフの姿に、ビダーシャルの顔が元の無表情に戻る。

「……貴様は何を考えている」
「何も考えておらんよ。貴殿も耳にしておろうが、余が周りからなんと呼ばれておるかぐらい」
「世間の評判と実際の人物の姿が一致しないことはままあることだ」
「そうか。では、お前は何だと思う?」

 おどけて見せるように両手を広げるジョゼフの姿に、ビダーシャルの眉が険しく顰められる。

「否定はできんな」

 暗に愚かと言われたジョゼフは、顔に笑みが張り付けたまま、広げた両手を上に向け、肩を竦めて見せる。

「まぁいい。ではお前たちと手を組んだ余には、どんな見返りがあるのだ?」
「『サハラ(砂漠)』における風石の採掘権及び各種の技術提供」
「ほぉ。中々気前が良いな」

 船を空に浮かばせるために風石は欠かせないものだ。いくらあっても足りないほどであり、それが大量に眠っているエルフの土地(サハラ)から採掘出来るようになれば、それはどれだけ莫大な富を生み出すことになるか。それにエルフの技術力は、人間の技術力を遥かに超えている。それを得ることが出来れば、あらゆる面でガリアは他の国の先へと一歩も二歩も先へと進むことが出来る。
 それがただ、シャイターン(悪魔)の門に近づこうとるする者に圧力を掛けるだけで手に入る。
 破格では言い足りない程の条件であった。
 だが、

「それもいいが、余には以前から欲しいものがあってな、それも頼んでもよろしいかな?」
「何だ?」
「エルフの部下だ」

 ビダーシャルの顔が僅かに顰められる。

「……時間が掛かるが、何とかしよう」
「今欲しいのだ。お前がな」
「なっ」

 口を開けた姿のままの固まるビダーシャル。
 その姿ににやにやとした笑みを浮かべたジョゼフが指を突きつける。

「お前が、今、ここで決めろ。蛮人に従うのを良しとせず、断るのか。それとも世界を守るため余に仕えるかをな」
「……我の一存で決められるものでは……」

 逡巡するように小さく顔を振るビダーシャルに、ジョゼフが声を荒げる。

「余は貴様が選べと言ったッ!!」
「ッッ!!」

 ジョゼフの叱責に、微かに身体を震わせたビダーシャルは顔を俯かせる。数秒顔を伏せたビダーシャルは、顔を下げたまま膝を床に着けた。

「……仕えよう」
「ふんっ、出来るではないか……下がってネフテスに余が了承したことを伝えるが良い……貴様が余に仕えることも、な」

 膝を着くビダーシャルにそう言い放ったジョゼフは、片手を振り退室を促す。だが、ビダーシャルは膝を着いたままの姿勢で動かない。
 ぴくりとジョゼフの片眉が上がる。

「どうした?」
「一つお前に聞きたいことがある」
「構わん」

 顔を上げたビダーシャルが、逡巡するように小さく口を数度開けたり閉じたりした後、ゆっくりと問いを口にした。

「お前は何を望んでいる? 会話をすれば、その人物がどんな人物であるか、何を望んでいるのか……大体は分かるものだ。だが、お前とどれだけ会話をしても、何もわからない……お前は……一体何なのだ?」
「余はガリア王国国王だ……だが余が何であるか決めるのはお前たちだ。我らにとって聖なる力である『虚無』をエルフが悪魔の力と呼ぶように、見る者によってそれが何であるかが決まる……お前は何だと思う?」
「……それがわからないから聞いたのだ」

 ビダーシャルの苦しげに歪んだ口元から漏れた声に、ジョゼフは顔に浮かんだ笑みを濃くする。

「ふむ。お前の問いで、余にも一つ聞きたいことが出来た」
「何だ」

 自分を見上げ僅かに身を引かせたビダーシャルの姿に、ふんっと鼻を鳴らしたジョゼフが口を開く。

「先程余は『我らにとっての聖なる力である『虚無』をエルフが悪魔の力と呼ぶように、見る者によってそれが何であるかが決まる』と言ったが、それ(・・)が意思を持つ存在ならば、自らを名乗ることもあろう……余が余を『ガリア王国国王』と呼ぶようにな」
「何が言いたい?」

 ジョゼフの言いたいことがわからず、困惑の色を露わにするビダーシャルに、ジョゼフは歪んだ笑みを向けた。




「貴様たちが言う『シャイターン(真の悪魔)』は、自分たちのことを何と呼んだ」









 ビダーシャルが部屋からいなくなり、残ったのは黄昏の光を背に立つジョゼフとその足元に倒れたタバサだけだった。
 膝を折り、エルフの魔法により深い眠りに落ちたタバサをそっと優しげに抱え起こしたジョゼフは、タバサを玉座の上に横たえた。険しい顔を浮かべるタバサを見下ろすジョゼフの瞼が閉じられる。瞼の裏に浮かぶのは、今は亡き弟の姿。
 己と違い、誰にも優しく、聡明で、才能に溢れた弟……オルレアン公……。
 弟の面影をなぞるように、ジョゼフの指先がそっとタバサの頬を撫でる。

「……シャルル……お前は本当に将棋(チェス)が強かったな……今でもお前ほどの指し手には会えていない……。だからお前がいなくなってから、おれはもう退屈と絶望で死にそうだ。だから、自らゲーム(対局)を作るようになってしまった。なあ、驚くかシャルル? 今度のゲーム(対局)エルフ(亜人)と組み、人の理想と信仰を潰すのだぞ。ボード(将棋盤)はハルケギニアどころか、エルフの土地(サハラ)、聖地その全てを含む全世界だ。その全てを盤におれが指すのだ……凄いだろシャルル……」

 何も答えないタバサに呟き続けるジョゼフ。
 タバサの顔に残る弟の面影に語り続けるジョゼフ。
 語りかけるたびに、かつての記憶が蘇る。
 遠い……遠い日の思い出が。
 まだ父が生きていた時代。
 無能と蔑まれた日々を。
 才能溢れる弟と比べられた日々を。
 弟と比べられる度に感じていた怒りと悔しさを……弟から慰められる度に感じていた惨めさを……。 
 
 閉じた目の縁から涙が溢れ、タバサの頬に落ちる。
 
「何故、だ、シャルル……」

 ぐるぐると脳裏で回想されていた過去の最後には、三年前、前王であった父が倒れた時の記憶が流れていた。
 自分が王に選ばれた時の記憶が……。

「どうして……お前はそうも美しくあれたのだ……」

 誰もが……自分でさえ次王は弟であるシャルルが選ばれると思われた中、選ばれたのは無能と蔑まれていた筈の自分であった。
 あの時生まれたとてつもない歓喜とシャルルに対する優越感は、シャルルが浮かべた晴れ晴れとした笑顔によって数倍の絶望に変わった。誰もが次王はシャルルだと思っていた。シャルルさえそう思っていただろう。
 それなのに、選ばれたのは無能と呼ばれたおれだ。
 悔しい筈だ。
 絶望した筈だ。
 憎んだ筈だ……。
 なのに、

『おめでとう』

 今でも一字一句思い出せる。

『兄さんが王になってくれて、本当に良かった。ぼくは兄さんが大好きだからね。ぼくも一生懸命協力する。一緒にこの国を素晴らしい国にしよう』

 嫉妬も邪気も皮肉も……何もなかった。
 その中には、ただただ兄の戴冠に対する喜びしかなかった。
 だからこそ、ジョゼフは耐え切れなかった。
 それが見当違いなものであったとしても、耐えられなかった。



 憎むしかなかったのだ。


   
 タバサの肩を掴み、喘ぐような声でジョゼフは声を上げる。
 
「お前があの時ほんの少しだけでもいい……悔しがれば……憎めば……絶望さえすれば……あんなことにはならなかった……ッ!」

 オルレアン公シャルル。

 猟の際、落馬し死亡。
  
 その真相は、

「おれに殺されることはなかったッ!!」

 兄であるジョゼフの手により、毒矢による暗殺によって死亡。

「……かつて……お前は言ったな。『兄さんは、まだ目覚めていないだけなんだ』と。お前の言った通りだったぞ。俺は目覚めたッ! 驚けシャルルッ!! 『虚無』だッ!! 伝説に唄われる魔法だッ!! お前は正しかったッ!! そう言えばお前はこうも言ったな。『兄さんは、いつかもっと凄いことができるよ』と。ハハハッ!! お前は預言者だったのかもしれないなッ!! 確かにその通りだッ! お前の行った通りおれは凄いことをしているぞッ!! 世界だッ! 世界を将棋盤(チェスボード)にして対局(ゲーム)をしているのだッ!! お前の言った全てが実現したぞシャルルッ!!」

 広い部屋の中を、壊れたような哄笑が響き渡り……不意に途切れた。
 シンっ、と静まり返る部屋の中、暫しの時が流れる。
 音が消えた部屋の中で、ジョゼフはタバサの頬に触れていた指先を動かし唇に触れた。

「……口元は母に似たか……シャルロット。……お前の母は、心を狂わされようとも美しいな……感謝しているかお前は? お前が飲むはずだった水魔法の薬を代わりに飲んだ母を……それとも憎んでいるのか……」

 唇からさらに指を動かし顎先に持っていったジョゼフは、タバサの細い顎を掴み上げる。

「お前は母の心を取り戻そうと、何やらやっていたようだが無駄なことだ。あの水魔法の薬は、エルフの先住魔法を使った複雑な薬だ。治すにはエルフの力が必要不可欠なのだ。それをまたお前に使うのは……いささか心が痛むな……だがやらねばならぬ。お前は飼い主であるおれを裏切ったのだ。裏切りには相応の罰を与えなければならないからな」

 優しく柔らかな声で話しかけるジョゼフ。
 傍から見れば、眠る我が子に愛を囁くような姿でありながら、タバサを見下ろす瞳の中には、見る者に怖気を震わす狂気が宿っていた。

「薬が完成するまでは、暫しの猶予がある。残された時間をどうするかはお前の自由だ。それが血を分けたお前に対する最後の慈悲だ。そうだな。折角だ、今までお前から奪ってきた王族としての時間も与えよう。王女としての時間も返してやろう。心を無くすまでの僅かな時間だが……伯父からの最後の贈り物だ」

 タバサの顎を掴み上げ、自らの眼前に近づけると、ジョゼフは禍々しい笑みを顔中に広げた。

「ああっ! ああッ!! 本当に悲しいことだッ! あの日、あの時、もしもシャルルが笑わなければ、お前は、お前たちは今も眩い笑みを浮かべ幸せの中にいただろうにッ! エルフの魔法により心を失うこともなかっただろうにッ!」

 呵呵と哄笑しながらも、大粒の涙をボロボロと零すジョゼフの姿は異様に尽きた。
 笑い声と嗚咽が混じる声で、ジョゼフは声を絞り出す。

「だがまだ足りないッ!! お前の愛した女を! 娘をどれだけ苦しめても……ッ! あの日の痛みには……後悔には遠く届かない……足りないのだ……ッ!!」

 タバサから顔を離し、ジョゼフは顔を上げる。
 高い部屋の天井を仰ぎ見ると、真っ赤に充血した目を見開く。

「もう止まることは出来んっ! この世界が壊れようともあの日、お前をこの手にかけた時よりも心が痛む日が来るまで、おれはこの世界を陵辱し蔑み続けるッ!! どんな手を、力を使ってでもだッ!! 誰にも止めることなど出来はしないッ!!」
 
 








「……ここは?」

 目が覚めたタバサは、身体を起こすと左右を見回し声を上げた。眼鏡がなく、ぼんやりとした景色であったが、そこが自分の知らない場所であることはわかった。
 広い部屋の中心に置かれた天蓋付きのベッドの上にいると理解したタバサは、肌に触れる心地の良い感触に目を落とすと、公女時代でさえ見たこともない程の豪華な寝巻きを身につけていることに気付く。僅かに眉を顰めたタバサは、大人でも五人は並んで寝られる程の大きさのベッドの上を進み、ベッド隣りに置かれた小机に近付く。その小机の上に、タバサは宝石が散りばめられた眼鏡立てに立てかけられた自分の眼鏡を見つける。

「…………」

 眼鏡をかけ、鮮明になった視界で自分の身体を見下ろし異常がないことを確認すると、再度周りを見渡すタバサ。先程は気付かなかったが。寝巻きだけじゃなく、ベッドや小物、この部屋にある調度品はどれも桁が違うものであった。様々な知識が蓄えられたタバサの頭が、その調度品が前カーペー時代の調度品であると判断する。ガリア最大の隆興の時代の物だ。
 
「目が覚めたか」
「ッ!」

 背後から声を掛けられ、咄嗟にベッドの上で身体を回す。
 突然の動きにより、目の前が歪む中、細めた目に映ったのは、自分を難なく下したエルフの姿だった。エルフは部屋の入口付近に置かれたソファに座っており、何かの本を読んでいた。エルフから視線を逸らさず、手を動かし杖を探すが、指先にはベッドの柔らかな感触が帰ってくるだけ。閉じた口元が悔しげに歪む。杖がなければ、自分に抗う手段はない。いや、例えあったとしても、あのエルフに抗えるとも思えない。
 エルフから目を離さず、ゆっくりとベッドから降りたタバサは、ベッドの前に立つ。

「あなたは何者?」
「ネフテ―――……『サハラ(砂漠)』のビダーシャル」
「ここはどこ?」
「アーハンブラ城だ」

 『……アーハンブラ城』と口の中で呟くタバサ。タバサには聞き覚えがあった。それはエルフの土地『サハラ(砂漠)』との境にあるガリアの古城の名前であった。首都リュティスを中心に、ラグドリアン湖の丁度正反対の位置にある。
 状況から鑑みるに、気絶したあと、自分はここまで連れてこられたようだ。
 何が目的かはわからないが……。
 頭の中で様々の考えが生まれては消える中、最も知りたいことを問いかける。

「母は何処?」
「隣の部屋にいる」

 タバサの問いかけに、ビダーシャルが顔を部屋に設置された扉に向ける。ビダーシャルの顔が向けられた扉が目に映った瞬間、タバサは駆け出した。ぶつかるような勢いで扉に駆け寄ったタバサは、そのままの勢いで扉を開く。扉に鍵は掛かっておらず、抵抗なく扉は開いた。タバサがいた部屋は、貴人のための部屋であったのだろう。扉の向こうは、世話をするための使用人が住む小部屋であった。扉の向こう。小さな部屋の隅に設置された一人用のベッドの上には、母が横たえられていた。

「……かあ、さま……」

 飛び込むように部屋に入ったタバサは、たたらを踏みながら足を止めて小さく呟くと、ゆっくりとした足取りでベッドの脇に近付く。
 ベッド脇に立ったタバサが、ベッドに横たわる母を見下ろす。母は寝息を立て静かに眠っている。

「母さま」

 腰を落とし、母の耳元で声を掛ける。
 だが、母親は何の反応も返さない。硬く瞑られた瞼が動く気配はない。もしかすれば、魔法によって眠らされているのかもしれない。
 立ち上がったタバサが小さな部屋の中を見渡す。部屋の中を見回していたタバサの顔が、部屋の隅に設置された鏡台の上に置かれた人形を目にし止まる。かつて母が自分にと手ずから選んでくれた人形。『タバサ』と名付けた人形。今は心を病んだ母が『シャルロット』と呼ぶ人形。
 ズキリと胸に鋭い痛みが走り、顔が歪みかけたタバサの目が、背中に感じる視線に向けられる。自分が開け放った扉の隙間から覗くビダーシャルの顔をタバサは睨み付けた。
 タバサと視線が合うと、ビダーシャルは扉を開け放ち部屋の中に入ってきた。

「あまりにも暴れるのでな、眠っていただいた」
「何をするつもり?」

 ビダーシャルに険しい視線を向けるタバサは、自分を見るビダーシャルの目の中に、死を確定された実験動物を見るかのような憐れみが含まれていることに気付き顔が強ばる。

「どちらのことを聞きたい?」
「……母」

 タバサの答えに、ビダーシャルは眠るタバサの母に顔を向けた。
 
「母親に関しては特に何もしない。我はただ『守れ』とだけ命じられている」

 ビダーシャルの言葉に、僅かに安堵の吐息を漏らしたタバサは、続いて自分の運命を問う。

「わたしは?」

 母親からタバサに移動したビダーシャルの目に、僅かに逡巡の色が宿ったが、瞬きの後、その色は何処にも見えなくなっていた。何も変わらない平坦な声音で、ビダーシャルはタバサの運命について口にする。

「心を失ってもらう。その後はお前の母と同じく『守れ』と命じられた」

 死と同義の宣言を受けたタバサだが、その目には恐怖の影はない。ただ、一度目を閉じ、小さく顔を伏せただけ。

「それは今から?」

 顔を伏せたまま問いかけるタバサに、ビダーシャルは首を横に振る。

「心を失わせる薬は特殊なものだ。調合には短くとも十日はかかる。それまではこの部屋の中だけであるが、好きにしたらいい」
「母の心を狂わせた薬もあなたが?」

 顔を上げたタバサの目がビダーシャルと合う。

「あれだけの持続性を持つものは、薬でも魔法でもお前たちでは不可能だ。お前には気の毒な話であるが、これもまた『大いなる意思』の思し召しと思い諦め受け入れろ」

 タバサに背中を向け、ビダーシャルが扉に向かって歩き出す。
 それを尻目にタバサは窓際に近付く。
 窓の向こうには、天に輝く太陽の光に照らされた砕けた城壁の姿があった。タバサの知識の中では、アーハンブラ城は打ち捨てられた廃城だった筈だが、先程の貴人室やこの使用人部屋を見るに、どうやら最近改築されたものと思われた。
 砕けているとは言え、未だ優に五メートルを超える高さを保つ城壁に遮られ、その奥の中庭や城の外を見ることは出来ない。だが、僅かに覗く本丸から張り出した大きなエントランスには、槍や銃で武装した兵士の姿が見えた。今見えているだけでも十人は超えているだろう。一体どれだけの人数がいるのか、わかったとしても、杖がない以上母を連れての脱出は無理だ。いや、例え杖があったとしても、あのエルフがいる限り脱出の可能性はない。
 今にも部屋から出そうになるビダーシャルの背中に、タバサは声をかける。

「わたしの使い魔は何処に?」

 貴人室にもこの使用人部屋の中にも自分の使い魔の姿がないことに気付いたタバサの質問に、ビダーシャルは背中を向けたまま答える。

「あの韻竜ならば、逃げたぞ」
「……そう」

 シルフィードの正体は見抜かれているようだ。だが、この高位のエルフによれば、それも仕方がないことだろう。
 殺されていないということがわかり、安堵の息を漏らすタバサだったが、次に心配気に眉が寄った。自分を姉と呼び慕うシルフィードのことだ、自分の救出のため、魔法学院に助けを呼びに向かうだろう。
 そこに考えが至り、唇を噛み締める。
 真っ先に浮かんだ顔は、士郎の顔であった。
 巻き込まないために黙って出て行ったというのに、これでは何の意味もない。
 普通に考えればガリアという大国に捉えられた自分を助けようとする者は考えられない。大国に喧嘩を売るようなものなのだから当たり前だ。こんな自分を友だと言うキュルケでも、そんな危険を犯すとは考えにくい。
 だが……エミヤシロウならばと考えてしまう。
 今ではトリステインの近衛騎士であるが、あの人ならばそんなことも関係なく助けに来るかもしれない。
 タバサの脳裏に、自爆と言ってもいい自らの命を賭けた罠を、自分の身体を盾にしながらわたしの命を守ったシロウの姿が蘇る。

 敵であるわたしの命を……。

 ドクンと心臓の鼓動が一度強く鳴る。
 無意識に胸に置かれた手に力込もり、微かな胸の膨らみを握り締める。
 
 何を考えているの。
 もしかして、わたしは期待しているの?
 彼が助けに来るのを……。
 ……そんな筈はない。
 そんなに自分は弱い筈がないのだから。
 それに助けに来たとしても無駄なことだ。あと十日でここを突き止められるとは思えない。わたしはここで母と同じく、エルフの薬で心を無くすことになる。エルフの薬は特別だ。何とか母の心を取り戻そうと様々な方法を試したからわかる。わたしが心を取り戻すことはないだろうと。エルフの手によって造られた聞いて納得した。あれは確かにわたし達の手におえるものではない。

 心の消失を前にしても、タバサの心には何故か乱れはなかった。
 それは絶望のためだろう。
 決して逃げられないという。

 部屋から出て行ったエルフが開いた扉を見る。
 
 あのビダーシャルと名乗ったエルフにはどうしたとしても勝てはしない。杖があっても自分は手も足も出なかった。杖がない今、何が出来ようか……何も出来はしない。虫のように踏み潰されるだけ。
 それがわたしにはわかる。
 わかってしまう……わからなければ生き残れなかったから。

 これまでタバサが北花壇騎士として様々な亜人、魔獣、メイジと戦い、生き残ってこれたのは、魔力の強さや魔法の巧みさによるものではない。相手の戦力を正確に分析することが出来たからだ。
 基本的に亜人や魔獣は人間よりも優れた力を持つ。その戦力を正確に分析し、自分の力と比べて何が強く何が弱いかを知ることで、作戦を考え罠を張り生き残ってきた。
 相手の戦力を正確に図る分析能力こそが、タバサの最大の力だと言ってもいい。
 その力が告げていた。
 勝てない……と。
 抗うことの愚を伝えていた。
 胸に当てた手の隙間から、冷えた風が通り過ぎたかのように、押さえた胸の奥の心が冷え切り。心の奥に微かに燻っていた怒りや抵抗感といった熱が冷めていき、代わりに無力感が心を満たしていく。
 心が無力感に満たされると、今度は諦めが湧き上がり、身体が鉛のように重くなる。喉の奥から心から漏れた冷めた息が溢れた。
 虚ろに揺らぐ瞳でベッドに眠る母を見下ろすタバサ。
 何もする気が起きず、ただ母の安らかな寝顔を見続ける。何の苦しみも感じられない穏やかな顔を浮かべる母親を見つめるうち、鉛のように重くなった心が僅かに軽くなった気がした。そのうち、頭の片隅に、こんな安らかな顔になれるのなら、母と同じく心が失われても構わないのでは? という気持ちが湧いてきた。
 どれだけの時間が経ったのだろうか、窓から見えていた天高く白く輝いていた太陽は、赤く歪み山脈の彼方に消えていこうとしていた。
 
「……何時までそうしているつもりだ」

 背後から声を掛けられたタバサは、緩慢な動きで肩越しに(うしろ)を振り向く。
 そこには何時の間に部屋に入ってきたのか、扉を背に、広げた本に視線を落としたビダーシャルの姿があった。
 
「…………」

 何も映さないタバサの瞳がビダーシャルに向けられる。ビダーシャルは本から視線を上げ、タバサを見る。ビダーシャルはそこで、タバサの瞳に何の感情も感じられないことに気付くと、パタンっ、と音を立てて本を閉じた。

「……退屈ならば本でも読んでいろ」

 ビダーシャルは閉じた本をタバサの母親が眠るベッドの上に放り投げる。ボスンと音を立て、眠る母親の脇に転がる本を無意識に追うタバサ。その目に、倒れた本の表紙が映る。

「その『イーヴァルディの勇者』は、中々興味深いものだ」

 タバサの視線は本の表紙から離れない。まるでビダーシャルのことを無視しているかのようなタバサの態度に、だが、ビダーシャルは気にすることなく話し続ける。

「特に興味深いのが、この本の中に現れる英雄に似たものが我らエルフの伝承にもいることだ。聖者『アヌビス』。かつて大災厄でシャイターン(悪魔)からサハラを守った聖者だ。この本に、勇者イーヴァルディは光る左手を持っていると語られているが、同じく聖者『アヌビス』も、輝く聖なる左手を持っていたそうだ。その他にも、人とエルフの違いはあるが、驚く程共通点が多い……これは何を意味するのか……興味が尽きないな」

 『イーヴァルディの勇者』という物語は、数多にある英雄譚の中で特に異色を放つ話であり、最も知られている話でもある。特に他の英雄譚と違うのが、物語の主人公がメイジ(貴族)ではないというこである。勇者イーヴァルディは始祖ブリミルからの加護を受け、人に仇なす竜や悪魔、亜人たちを左手に握る『剣』と右手に握る『槍』を使い打倒していく。『イーヴァルディの勇者』には原典がないため、口伝や詩吟、芝居等様々な方法で語られているため、国や地域に留まることなく多くの人に知られている。語られる国や地域、人によって伝え方や筋書き、登場人物が違う等があるが、それもまた、多くのバリエーションがあるということで飽きられることなく語り継がれている理由の一つだ。
 もはや『イーヴァルディの勇者』は、一つの作品と言うよりも、一つのジャンルと言っても良かった。
 
 そしてタバサはそのことを良く知っていた。
 見下ろす母の横に転がる『イーヴァルディの勇者』。表紙の端は手垢に汚れ、所々赤黒く変色している。最初は綺麗だっただろう(ページ)も、何度もめくったのだろう、今はもうよれよれに波打っていた。
 良く……知っている。
 何故なら、その本をそのようにしたのがタバサ自身だったからだ。
 何度も何度も読んでいた。
 幼い頃は母に寝物語で読んでもらい。
 本が読めるようになると、他の本に興味が向き、積極的に開くことはなくなったが、不思議と時間があればこの本を読んでいた。
 タバサが『イーヴァルディの勇者』を好んで読むことについて、父や母など近しい人は気にしていなかったが、時折来る他の貴族はいい顔はしていなかった。
 それも仕方がないだろう。
 メイジではない者が主人公の英雄譚である『イーヴァルディの勇者』を好む貴族の方が珍しい。例えその主人公が、物語によって男や女、神の息子に変わったとしても、メイジ(貴族)ではないという時点で、この貴族を中心とした世界では異端に過ぎるのだ。貴族でこの本を読む者や、研究しようとする者は、異端や愚か者とさえ呼ばれ蔑まれていた。そのため研究する者は少なく、『イーヴァルディの勇者』が表舞台出ることはなく、最も古い物語と言われながらも、今も貴族支配に不満を持つ平民が適当に生み出した御伽噺だと言われていた。
 語られる方法や場所、国や地域で全く違うと言ってもいいほど変わる物語―――『イーヴァルディの勇者』。
 ビダーシャルが言う『光る左手』は確かに多くの『イーヴァルディの勇者』に出てくるが、全てに出ているわけではない。
 文法も筋書きも登場人物でさえ、語る人によって違う。 
 同じものはただ一つだけ。
 その名前(タイトル)―――『イーヴァルディの勇者』だけ。
 
 彫像のように固まっていた身体が動き出す。
 膝を曲げ、ベッドに眠る母の横に転がる(イーヴァルディの勇者)の表紙を撫でると、ゆっくりとそれを開いていく。
 
 タバサがこの『イーヴァルディの勇者』を好んで読んでいた理由は、単純明快なものであった。
 面白いのだ。
 勧善懲悪で、幼い子供にも理解できるほど単純なストーリーで、しかも面白い。これが広がらない理由がない。確かに単純で簡単な物語は研究対象には向かないものではあるが、ただ楽しむだけならば、これだけ向いた物語はなかった。
 
 シャラっ、とページが捲られる乾いた音が部屋に響く。現れた時と同じく、ビダーシャルは既に部屋からいなくなっていた。
 母が眠る横で、本を読む娘。
 重く鈍く、霞掛かっていた思考の隅に、微かに幼き時、母が眠る自分の横で物語を読んでいる光景が浮かぶ。
 何時からか、タバサは声を出して物語を読んでいた。
 幼き時、母が自分を寝かしつける時のように。

 ――― イーヴァルディは、シオメントをはじめとする村のみんなに止められました。村のみんなを苦しめていた領主の娘を助けに、竜の洞窟へ向かうとイーヴァルディが言ったからです。 ―――
 
 何かが動く気配を感じ、タバサが本から顔を上げると、目を見開いた母親と目が合った。思わず息を飲み、声が止まってしまう。数舜の後、人形(シャルロット)を探す。あの人形がなければ、母は取り乱し暴れ始めるから。膝を立て、立ち上がろうとした。しかし、そこで違和感を感じた。母の顔を見る。何時もならば、傍に人形(シャルロット)がいないことに直ぐに気付き、暴れだす筈。タバサ()に向かって『わたしの娘を返して!』と掴みかかって来る筈なのに……。なのに今、母はただ何かに驚いた顔で、タバサの顔だけをじっと見つめているだけだった。
 もしかして、とタバサは視線を(イーヴァルディの勇者)に向ける。この物語の一節で、母が何かを思い出したのかもしれない。自分のことを娘だと思い出したといった都合のいい考えだけは、思い浮かばなかったが、悪いものではないだろうと思う。母の顔に浮かぶ驚きは、悪いものではなかったから。

 立ち上がりかけた足を曲げ、タバサは床に膝を着ける。

 最後になる母と娘の時間。

 淡く脆い優しい時間を守るため。

 窓から射し込む双月の光の下。
 
 タバサは、物語を紡ぎ始める。




   
 ――― シオメントは、イーヴァルディに尋ねました。
 『おお、イーヴァルディよ。そなたはなぜ、竜の住処へ赴くのだ? あの娘は、お前をあんなにも苦しめたのだぞ』
 イーヴァルディは答えました。
 『わからない。なぜなのか、ぼくにもわからない。ただ、ぼくの中にいる何かが、ぐんぐんぼくを引っ張っていくんだ』―――
 
 
 









  
 

 
後書き
 前書きに書いた通り、これから物語は加速していきます。
 ジョゼフの問いにビダーシャルは何と答えたのか……それは何を意味することなのか……。

 今年ももう少しで終わりますが、この物語はまだまだ続きます。
 どうぞ来年もよろしくお願いします。
 
 
 ……年賀状代わりに感想ご指摘お待ちしております。
 
  
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