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八条学園怪異譚

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第四十九話 柳の歌その七

「だからあの二人でも務まる」
「歴史上最低最悪の連中でもなんだ」
「普通になんだ」
「そうじゃ、務まる」
 普通にだというのだ。
「あの連中でもな」
「ううん、何か凄い話になってるけれど」
「要するに人間で大事なのは人格なのね」
 愛実と聖花は首相とコミッショナーの話になったところで元の話に戻してこう結論付けた。
「人種とか宗教とか生まれじゃなくて」
「そこなのね」
「そういうことじゃ、白人至上主義者が科学的に自分達こそが最も優れていることを証明しようとすると」
 その結果は、どうなるかというと。
「常に黄色人種がその最優秀になるのじゃ」
「アジア系が、ですか」
「そうなるんですか」
「アメリカでも白人よりアジア系の方が知能指数が高いという統計が出ておる」
 このことは世界的にだ、知能指数ではアジア系国家の方が白人国家や黒人国家よりも統計上知能指数が高いのである。
「よく知能指数で優劣を語る輩がおるがな」
「そこで崩れますね」
「その時点で」
「うむ、簡単にな」
 統計は残酷である、人種論に対しても。
「運動神経もじゃ」
「あっ、黒人の人ですね」
「オリンピックとかバスケでの」
「そうじゃ、黒人の人は多くが見事な運動神経を誇っておる」
 それに音楽センスもだ、アメリカのスポーツと音楽におけるアフリカ系の貢献は最早世界的に有名である。
 博士もだ、その音楽について語る。
「音楽もジャズ、ブルース、レゲエ、ゴスペル、ラップとな」
「ざっと挙げただけでもですね」
「それだけ出ますね」
「そうじゃ、多い」
 実にだというのだ。
「そして白人にしてもじゃ」
「やっぱり色々ありますね」
「優れた部分が」
「うむ、知性でも運動神経でもな」
 むろん能力でもである。
「そうしたものを見ればな」
「どの人種が立派かは、ですか」
「言えないんですね」
「どの人種も一緒じゃ」
 これが博士の結論だ。
「日本人だろうが何だろうがな。それに知能指数も運動神経もな」
「そんなの訓練次第ですよ」
 ここでろく子が首を出して来た。
「簡単に上下しますよ」
「訓練するだけで、ですか」
「簡単になんですか」
「そうです、本当に簡単に」
 上下するというのだ。
「ですからあてになりません」
「優劣を語るにはですか」
「これといってですか」
「はい、ありません」
「ううん、そうなんですね」
「些細なことなんですね」
「個人の差はそれぞれの努力でどうとでもなります」
 これがろく子が二人に言うことだった。
「それを絶対のものと考えないことです」
「何人だからといって立派とか劣等とかはない」
 博士はまた言った。
「要はそのそれぞれの人格じゃからな」
「最近ネットでは日本人の間でも人種論が出ていますが」
 所謂ネット右翼と呼ばれる人種だ、書き込むことは人種差別と日本の優秀性だ。それはさながらナチスの様である。 
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