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万華鏡

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第四十八話 文化祭の準備その十六

「あんたはね」
「そうなのね」
「結局あれよ、男の子は女の子にらしさを求めるのよ」
「女の子らしさね」
「そうよ、あんたはそれが欠けているのよ」
 ガサツで女の子らしさが、というのだ。
「もっとその辺りをしっかりしたらいいわよ」
「じゃあ努力するわね」
「というか前に経験あるとかも聞いてたけれど」
「そうだったかしら」
「その辺りあやふやね」
「実はキスもね」
 これが実際だというのだ。
「まあその辺りはね」
「何よ、そうだったの」
「そうよ。それとあんたはどうなの?」
 高見先輩が逆襲に出た、副部長自身はどうかというのだ。
「一体」
「私?」
「そう、あんたはどうなのよ」
「欲しいわね」
 切実な言葉だった、そこに全てが語られていた。
「そう願ってやまないわ」
「あんたはあんたで堅苦しいからね」
 副部長には部長が言う、いつも抑えられている立場の彼女がだ。とはいっても抑えきれていないのであるが。
「それが駄目なのよ」
「誰のせいでそうなってるのよ」
 副部長はむっとした顔になって部長に顔を向けて返した。
「一体」
「私のせい?」
「そうよ、いつもあんたに注意してね」
「いやいや、あんたずっとじゃない」
 副部長になる前からだというのだ。
「私と会う前からね」
「そうだったかしら」
「そうよ、あんたとはじめて会ったのは中学の時だけれど」 
 二人の付き合いはその時からだった、高校に入ってからではなかったのだ。
「その頃からじゃない、中一の頃から」
「あんたがずっとそうだったからでしょ」
「私は私よ」
「居直ってきたわね」
「人はそう簡単には変わらないわよ」
 流石に部長は強い、それで副部長に言われても平気だった。それで彼女にも笑ってこう返したのである。
「これでもよくなったでしょ」
「何処がよ、全然変わってないじゃない」
「別にいいじゃない、個性ってことで」
「よくないから言うのよ」
「気にしない気にしない」
 部長は副部長の小言を笑ってかわす、そのうえでジョッキの中の焼酎を楽しんで飲むのだった。
 そしてその二人のやり取りを見てだ、琴乃は目を瞬かせて言った。
「あれっ、部長さんと副部長さんって」
「そうよね」
 景子が琴乃に応える。
「中学校の時からなの」
「お友達だったのね」
「そうなのよ、その頃から口煩くて」
「いい加減なのよ」
 部長と副部長はお互いを指差して二人に応える。
「まあ軽くあしらってるけれど」
「こんな調子だから」
「最初からやれやれって思ってるわ」
「何度言っても聞かないのよ」
「というか最初からですか」
「今みたいな感じですね」
 琴乃も景子も事情はわかった、それでだった。 
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