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久遠の神話

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第六十一話 図書館でその八

「願いを適える方法があります」
「まさか、お金に場所に人に」
「その三つが重なるからですか」
「はい、とてもです」
 そう簡単には無理だというのだ。
「私にしましても」
「主は、そして神は全てを見ておられます」
 今度は神に仕えるからこその言葉だった。
「ですから貴方にも」
「そうですか」
「はい、きっと」
「私も神は否定しません」
 大石は無神論者ではない、むしろ信じる方であり神社にも行くことが多い、寺参りもわりかしする方である。
 だから神自体は否定しない、だがだった。
「しかしです。運命はです」
「神が決められているものとまでは言いませんが」
 これはカルヴァンの予定説だ、大石はカトリックなのでこの考えはない。だからそこまでは言わないのである。
 だがそれでもだ、こう高代に言った。
「しかし見ておられますので」
「だからですか」
「貴方は戦われるのではなく」
「神の導きに従ってですか」
「戦いを降りられて下さい」
 是非にというのだ。
「そうされて下さい」
「そう出来ればしたいものですが」
 高代は苦しい顔で本音を言う、だがだった。
 それと共にこの言葉もまた出さざるを得なかった、その言葉はというと。
「現実は甘くはありません」
「何かを手に入れる為にはですか」
「犠牲が必要です、そしてそれが私だけで済むのなら喜んで」
「犠牲になられますか」
「罪も喜んで被りましょう」
 全て覚悟しての言葉だった。
「既に申し上げた通り」
「そこまで仰るのなら」
 大石は諦めたかに見えた、だが。
 殆どの者がこの言葉を聞けば空想だと言うが彼の立場では絶対の言葉を出した、その言葉はというと。
「貴方の為に、いえ戦わねばならないどの剣士の方にもです」
「祈られますか」
「はい」
 そうするというのだ。
「そうさせて頂きます」
「神に」
「そして主に」
 またしてもキリストを見て言ったのだった。
「そうさせてもらいます」
「有り難うございます」
「私の祈りは受けて下さるのですね」
「神は否定しないので」
 だからだというのだ。
「キリスト教の神もまた」
「では貴方に神のご加護があらんことを」
「そのことを私自身も願います」
「では」
 高代は大石の祈りを受けてそうしてだった。
 教会を後にした、後には大石だけが残り祈ったのだった、彼等の為に。
 日曜になった、上城は部活で汗をかいたがその間もそれからも硬った顔をしていた、その彼に樹里が声をかけた。
「今はリラックスしてって言ってもよね」
「うん、とてもね」
 ちょっと、ではなかった。今は。
「出来ないね」
「そうよね、今日の十二時よね」
「今は三時だから」
 部活は午前中でそれからシャワーを浴びてお昼を食べて今は学園内の図書館にいる、そこで硬った顔をしていたのだ。 
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