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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep2守護騎士ヴォルケンリッター~Belkan Ritter~

†††Sideフェイト†††

私は傷ついたなのはと、なのはを支えるユーノを守るために赤い子と対峙する。私よりも幼い女の子。でも強い。なのはを負かすなんてよほどのものだ。

「民間人への魔法攻撃は軽犯罪では済まない罪だ。解かっているね・・・?」

私はあの子へと罪状を告げる。心の中で、友達(なのは)を傷つけて私を怒らせた罪も追加。けどあの子はそれに反発するようにデバイスを掲げて「あんだテメェ、管理局の魔導師か?」私が何者か聞いてきた。

「そう。私は時空管理局、嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。出来れば抵抗しないでほしい。そうしてくれたら弁護の機会が君に与えられるから。同意するなら武装を解除して――」

「誰がするかよ! バーカ!」

私の話の途中で赤い子は軽く挑発してから逃亡を図った。つまらない挑発を私は気にせず、なのはのことはユーノに任せて、あの赤い子を逮捕するために追撃することを決めた。なのはに付いているユーノに「なのはをお願い」と伝えて、すぐに追跡開始。絶対に捕まえてやるんだから。クロノとルシルに鍛えられたこの力。相手が誰であっても必ず勝ってみせる。

†††Sideフェイト⇒なのは†††

フェイトちゃんが逃げた赤い子を追っていく。また逢えることを楽しみにしていたのに、こんなかたちで再会することになるなんて。それがすごく悲しかった。

「大丈夫? なのは。待ってて、すぐに治癒魔法を掛けるから。(たえ)なる響き、光となれ、癒しの円のその内に、鋼の守りを与えたまえ」

――ラウンドガーダー・エクステンド――

知らず顔を伏せていると、ユーノ君は私の怪我を治すために魔法を使いながら、何故ここに居るのか教えてくれた。フェイトちゃんとルシル君の裁判が終わって、私とシャルちゃんにその事を教えるために連絡しようとしたけど通信は繋がらず、そのうえ広域結界が出来ていたからこうして慌てて来てくれた、ということだった。

「そっか、ごめんね、ユーノ君。ありがとう」

私は助けに来てくれたことへのお礼を言う。でも今の私には1つ気になることがある。

「あの、ユーノ君。アルフさんとルシル君が居ないみたいなんだけど・・・?」

私のところに来てくれたのはフェイトちゃんとユーノ君の2人。アルフさんとルシル君ならフェイトちゃんと一緒に行動していると思ったんだけど。私の疑問にユーノ君は治癒魔法を続けながら答えてくれた。

「アルフは外に居るよ。ルシルはシャルの方へ向かったんだ。シャルもなのはみたいに襲われているみたいだったし」

「え? そんなっ、シャルちゃんは無事なの!?」
 
まさかシャルちゃんも誰かに襲われていたなんて。でもそうだよね、結界が張られたんだったらシャルちゃんだって気付くはず。そうしたら私のところへと来てくれるか、念話で連絡してくれるくらいはあると思う。それがないということは、シャルちゃんにも何かあったんだと思うのが普通だ。

「私、自分のことだけで精一杯だったから、どうしよう・・・」

「大丈夫だよ、なのは。ルシルがシャルと組んだらそれこそ無敵だよ」

ユーノ君は少し顔を背けて、引きつった笑顔でそう言ってくれた。今の私には安心できる言葉だけど、ルシル君と向こうで何かあったのかな?

「えっと、それよりあれは誰なの? どうしてなのはやシャルを襲ってきたのか解かる?」

「ううん。ごめんね、解からないの。急に襲ってきたから何とかしないとって思ったんだけど。でもね、ユーノ君。あの子が使ってるデバイスって、シャルちゃんのデバイス・トロイメライと同じみたいなんだ」

シャルちゃんとあの赤い子が使っているデバイスが同じカートリッジシステムっていう機能を持つことを話す。そうしたらユーノ君は「シャルと同じ? だったらベルカの魔導師、いや騎士なのか?」って驚いていた。

「いやでも・・・それなら一体どうしてこんな辺境世界に居るんだ?」

そう言ってユーノ君は考え事を始めた。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

“トロイメライ”の刃先を背後の相手に向けると、そこに居たのは12枚の剣の蒼翼アンピエルを背にしたルシルだった。そして左手には2mほどの漆黒のケルト十字架型の杓杖、“第四聖典”が握られている。

(グングニル・レプリカは質量兵器に抵触する可能性があるからってことで、使用できなくなったって言っていたっけ・・・)

ううん、今はとにかく「ちょっと、なんでここに居るの、ルシル!?」あまりの予想外の展開に、ついついそう怒鳴ってしまう。けどルシルはそんなことを気にしない様子で返事をしてきた。

「ん? なんでって裁判が終わったのを連絡しようとしたんだが、繋がらない上に結界まで張ってあったから来たんだよ。それでフェイト達はなのはの元へ向かわせて、俺は君の元へと来たというわけだ。それよりシャル。砲撃後も油断せずに周囲に気をかけないのはまずいだろう?」

「はぁ!? 見てたなら援護くらいしてよ! 私が慣れない魔法に苦戦してたの知ってるでしょ!?」

ルシルはどうやら私とザフィーラの戦いをただ見ていたらしい。それなら援護の1つくらいはしてくれてもいいのに。まったく、空気を読んでほしい。

「いや待て。以前の契約の際に援護したら滅茶苦茶怒っていたじゃないか。“騎士の決闘に横槍入れるなんて信じられない”と。だから今回は黙って見ていたのに、その理不尽な怒りを向けられる覚えはないぞ」

ルシルと組んで2回目くらいの契約の際に、確かにそんなことがあった。生前から引っ張っていた苦手意識と敵対意識がまだ残っていた当時、私はいつもルシルに辛く当たってた。だからその時には、死ね、話しかけるな、失せろ、消えろ、みたいなことを言ってばかり。まともに口すら利かなかったなぁ。

「あ、ごめん、そうだったね。確かにあれは私とザフィーラだけの戦いだった。ありがとう、ちゃんと見ていてくれて」

私はルシルに怒鳴ったことへの謝罪と、見守っていてくれたことへの感謝を告げる。ルシルは「気にするな」って言って、ザフィーラが向かっていった方向を見据えた。

「さてと再会の挨拶はここまでだ。そのザフィーラという狼を追撃して動機を聞く。その後、フェイト達と合流し、状況によっては加勢する」

「え? すぐに加勢しないの?」

ルシルの発言に疑問を抱き聞き直す。でもすぐには答えてくれず、ルシルは「移動しながら説明する」と言った。

†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††

「バルディッシュ!」

≪Arc Saber≫

「はっ!」

手始めに電撃の魔力刃・アークセイバーを放って先制攻撃。

「アイゼン!」

≪Schwalbe fliegen≫

「おらぁっ!」

あの子も対抗するように4つの球体をハンマーのようなデバイスで叩きつけて撃ってきた。回避に移ると私に向かって軌道を変更したから、誘導操作弾なんだって理解した。だったら・・・。

「障壁!」

≪Panzer hindernis≫

飛来するアークセイバーを、あの子は回避ではなく防御を選択してバリアを発動した。だけどそれは間違った選択だ。アークセイバーは障壁を噛む性質を持ってる。1度食いついたらガリガリ障壁を削る。私はあの子の放った誘導弾を回避しながら、互いに衝突させて自滅するように誘導して処理した。未だにあの子のバリアと拮抗しているアークセイバーを爆破させることを選択。上手くいけばこれで片がつくかもしれない。

「セイバーブラスト!」

≪Saber Blast≫

「っ!? うわあっ!?」

トリガーを詠唱したことでアークセイバーは爆破。その衝撃によってバリアは砕けたものの、「くっそ!」あの子はその速い動きでダメージ判定圏内から離脱した。でも残念。あの子の離脱した先にはアルフが攻撃態勢で待ち構えている。あの子はアルフに背を向けるようにしていたから気付くのに遅れたみたい。

「そらぁぁぁぁ!」

「まだ居たのかっ!? チッ、こぉんのぉぉ!」

≪Panzer hindernis≫

アルフの拳打を、私に使ったバリアで防ぐけどそれもまたミスだ。

「バリアァァ・・・ブレイクゥゥッ!」

アルフが放った拳は、アルフが得意とするバリア生成プログラムに割り込みをかけて破壊するバリアブレイクの一撃。アルフのそれはクロノのバリアも、ルシルが学んで組んだ魔法のバリアも、時間が掛かったけど破壊できるほどの、2人のお墨付きを頂いた魔法だ。

「何なんだよ、これぇぇぇッ!?」

次第にヒビが入っていって、ついには破壊されるあの子のバリア。次々と襲い掛かるあまりの予想外の展開に叫ぶ赤い子。私は再度投降を呼びかける。

「もうこれ以上はやっても仕方ないから、大人しく投降してほしいんだ。そして名前と出身世界、そして目的を聞かせて。ちなみにこれが最後の通告になる。受け入れられない場合はこちらも全力で相手をしないといけない」

「上等だっつうの! アイゼン!」

やっぱりダメだったみたい。あの子は“アイゼン”っていう名前らしいハンマー型のデバイスを掲げながら突撃してくる。

「フォトンランサー」

≪Photon Lancer≫

「ファイア!」

行く手を妨害するためにフォントンランサーを5発と放つ。けどあの子は最小限の動きで全弾回避して、さらに速度を上げてきた。

「おらああぁぁぁッ!」

「バルディッシュ!」

≪Scyth slach≫

「はあっ!」

あの子のハンマーによる直接攻撃を回避して、すぐさま魔力刃による直接斬撃でカウンターを仕掛ける。けどあの子もまた回避して、「墜ちろぉぉぉ!」再度ハンマーで私を狙ってきた。それから何度もデバイス通しがぶつかり合い、火花を散らす。見た目なんて当てにならないようなその力強さに多少押されてしまうけど、何とか耐え切っている状態だ。

(それにしてもここまでついて来られるなんて・・・!)

確かにこの子は速いし強い。だけど、私はアースラで何度もルシルを相手に戦ってきた。炎攻め、水攻め、槍攻めetc...そんな冗談じゃない攻撃をたくさん受けてきたんだ。それに比べたら、今の状況ははるかにマシだ。

(ルシルの顔に泥を塗らないためにも、私は・・・負けられない!)

確かに1対1では向こうに分があるけど、私にはアルフが居てくれる。このまま押していけばきっと勝てるはずだ。私は間合いを空けて、“バルディッシュ”をデバイスモードへと変更して、砲撃魔法サンダースマッシャーの発動準備に入る。

≪Thunder Smasher≫

「サンダースマ――えっ!?」

あの子へ砲撃を放とうとした瞬間、目の前に剣を持った女性が現れて「はあっ!」その剣で私を薙いできた。その突然の襲撃に驚きながらも“バルディッシュ”を構えて防御することが出来た。けどその衝撃は、あの赤い子以上に速くて重かった。

「うぁぁあああああ!」

「フェイト!?」

私は耐え切ることが出来ずに弾き飛ばされてしまった。アルフは弾き飛ばされた私を見て心配の声を上げるけど、今の状況でそれはダメだよ。完全に意識が襲撃者じゃなくて私に向いてしまっているから。

「はあッ!」

「ぐっ!? うああ!」

その女の人は半回転して、今度はアルフに剣を叩きつけた。アルフは咄嗟にシールドを張ったけど容易く破壊されて、私と同じように弾き飛ばされてしまった。

†††Sideフェイト⇒????†††

「らしくないなヴィータ。お前が苦戦するような相手ではないと思うが。何かあったか?」

「苦戦なんかしてねぇよ。ちょっと遊んでただけだ」

あたしを助けてくれたシグナムに、苦戦していたと言われたからつまらない言い訳をした。認めたくねぇけど、こいつらの強さは本物だった。あのままアイツが砲撃を撃っていたら墜とされるとはいかないまでも、それなりのダメージは受けていたって思う。

「それは済まなかったな。てっきり苦戦していたように見えたのだが、そうか遊んでいただけか。だが気を付けろ。ザフィーラがもう片方の対象に、撤退を余儀なくされるほどのダメージを与えられた」

シグナムはそんな信じられないことを言ってきた。ザフィーラが、負けた? そんなことあるわけねぇ。

「嘘だろ!? ザフィーラは今どうしてんだよ!?」

「落ち着け。今はシャマルのところへ行き、回復してもらっている最中だ。しばらくすれば合流できるだろう」

「・・・なんだよ、それくら――」

「あなたもその子の仲間ですか!?」

「あぁ?」

あたしらが話してる最中だっつうのに、さっきシグナムがぶっ飛ばした黒いアイツが(今ので墜ちないっつうことは、やっぱ強ぇな)、シグナムに向けてそう聞いてきた。ったく、うっせぇなぁ、しゃあねぇ。このままついでにコイツも・・・やっちまおう。

「シグナム。先にコイツらの方を片付けて、蒐集しちまおう。さっきあたしが潰した白いガキはまだ動けねぇみたいだしさ。コイツもあの白いガキと同じくらい魔力持ってるみてぇだし。今日は運が良いよな」

「ふむ、そうだな。だがザフィーラを退かせた騎士というのが気になる。手早く済ませよう」

「(ん? シグナムは今なんつった? 騎士・・・?)なぁ、シグナム、今――」

「来るぞ」

「あ~もう! 人が大事な話をしてんだから邪魔すんな!」

話してる途中で割って入ってくるのはマナー違反だってことを知らねぇのかよ。

「私が黒衣の少女を相手にしよう。ヴィータはもう1人の方を頼む」

シグナムが勝手に決めちまったけど、その方が早くケリがつくだろうと思うから文句はない。

「判った。グラーフアイゼン、カートリッジロード」

「レヴァンティン、カートリッジロード」

≪≪Explosion≫≫

シグナムの言った騎士っつうのが気になるけど、今はこいつらをぶっ潰すのが先だ。

†††Sideヴィータ⇒ユーノ†††

「フェイトちゃん! アルフさん!」

「まずい、新手だ。シャルとルシルはまだなのか!?」

最悪な状況だ。あの赤い子だけならまだ何とかなりそうだったけど、さらに増援として来たあの剣を持った女の人は危険だと直感が警告してくる。シャルと同格か、もしくは上。今のフェイトじゃ勝てないのは明らかだ。なのはが「どうしようユーノ君!?」そう聞いてくる。こうなったら僕が出て、少しでもフェイト達の助けにならないと。

「僕も行くよ。なのははこのまま待ってて!」

「その必要はないから」

「・・・へ? あ、シャル!」

突然声を掛けられて振り向くと、そこにはシャルが立っていた。よかった。ようやく来てくれたんだ。これで何とか互角の戦いに持っていけるはずだ。シャルをあの剣士に。フェイトとアルフを赤い子に向かわせれば。

「シャルちゃん! シャルちゃんは大丈夫なの!?」

なのはがシャルの心配をして声を上げると、「もちろんよ」シャルは笑顔で返事をした。

「見て判る通り大丈夫。少し苦戦したけど、何とか退けられたから」

「そう、なんだ。良かった~。あれ、ルシル君は?」

そうだ、ルシルが居ない。シャルと一緒に来てくれたと思ったんだけど。するとシャルはフェイト達の方を指を差して「ルシル? それならあそこ」そう言った。

「魔術で姿を消しているから見えないと思うけど、ちゃんとフェイトとアルフを見守っていて、いつでも戦闘に移れるようにしてる」

シャルはそう告げたまま何もしようとしない。おいおい、早くフェイト達を助けに行かないとまずいよ。

「っていうかシャル!? 早くフェイト達を助けてあげないと!」

「そ、そうだよ! こんなところでのんびりしてる場合じゃないよ!?」

僕となのははシャルのその行動に戸惑って、急いでフェイト達を助けるように声を張り上げる。だけどシャルは僕たちへと視線を移して、真剣な顔で見つめてくるだけ。

「そのことなんだけどね。ここに来るまでにルシルと相談したの。確かにいま私たちが手を貸せば簡単に、とはいかないかもしれないけど勝てると思う。でも、だからと言っていつも私たちが手を貸してたらあなた達が成長できないって。だから出来るだけあなた達に任せることにした、ということなんだ。これは私たちが何時いなくなっても大丈夫なように、あなた達を成長させるためなの。解かってくれる、よね?」

「居なくなってもって・・・そんな、でもシャルちゃん!」

なのははシャルのその言葉に少しショックを受けているみたいだ。今まではずっと助けてくれたのに、今になって自分たちの成長のためにという理由で助けてくれないことに。僕も少なからずショックを受けてる。なんていうか・・・辛い、悲しい・・・。

「私もルシルもずっとなのは達と一緒に居ることが出来るわけじゃない。私の留学期間もあと少しだし、まぁルシルはどうか知らないけど。別れは必ず訪れる」

そうだ、いつかシャルとは別れなければならない時が来る。いつでも、いつまでもシャル達に手伝ってもらえると考えるのは間違いだ。
 
「・・・シャルちゃん、でも、でも!」

「安心して、なのは。本当に危ないと判断したらちゃんと助けるから。だから今は黙って見ててあげて」

シャルはなのはの頭を撫でながら優しい声でそう告げる。僕は2人が姉妹のように見えて、ずっと一緒に居られたらいいのに、と思った。

†††Sideユーノ⇒フェイト†††

赤い子と女の人が「カートリッジロード」と告げると、赤い子のハンマーが変形、女の人の剣からは炎が吹き上がる。その光景に「え・・・!?」戸惑ってしまうけど、それは一瞬のことですぐに対策を思考する。

(焦っちゃダメだ・・・! でも・・・)

だけど魔力が一気に増大していると判ったから、焦りが大きくなって上手く思考がついていかない。これまでの状態ですら後れを取ってる。そこで魔力増大。焦りが募る一方だ。

「紫電・・・一閃!」
 
女の人が炎の剣を構えて私に向かって斬り掛かって来た。あれはまずい、明らかに威力が高い。おそらく私の防御魔法で受けきるのは不可能だと判断。

「コード・エオロー!」

だからこそ、私はある手段を行使。左手の小指に嵌められた指環が光る。ルシルの魔術、確かルーンって言ってた術が施された指環だ。術式名を告げると蒼く輝く紋章が現れて、炎を纏った斬撃を防ぐ。

「なにっ!?」

それを見て驚愕する女の人は、それでもしばらくそのままの体勢で障壁を破壊しようとするけど、「むぅ・・・!」結局破壊できずに距離を取った。紋章が雪のように散っていくのと同時に私は“バルディッシュ”を振るって追撃する。

「はあっ!」

「くっ、はああっ!」

私のサイズスラッシュを剣で捌き、あちらも反撃として剣を振るってきた。

≪Defencer≫

速い。回避できる体勢じゃなかったから防御を選択する。バリアに衝突する剣。拮抗は一瞬で簡単に粉砕されたけど、バリアを破壊されながらも私は攻撃を受けることなく、何とか逃げ切ることが出来た。お互いが相手を見据え静かに佇む。女の人は私の指環を見ているようだ。

(良かった。ちゃんと使うことが出来た)

さっき使ったこの指環は半年くらい前、私とアルフの契約記念のお祝いとしてルシルがくれた物だ。銀のリングにルシルの“第四聖典”の形をした十字架が付き、そして4方と真ん中に嵌められた小さな丸い宝石が輝く指環。私の宝物だ。
真ん中の金色の宝石は私、右はオレンジ色の宝石でアルフ、左は青色の宝石でルシル、上はピンク色の宝石でなのは、下は赤色の宝石でシャル、そして十字架の円環は私たちを出会わせてくれたユーノとクロノたち管理局ということを表しているらしく、みんなが私と一緒に居るという意味だと話してくれた。
ちなみにアルフは指環じゃなくて腕輪で、宝石の位置もオレンジの宝石が真ん中にきていて、金色の宝石が右となっている。

「んだぁっ!? この盾は!」

どうやらアルフもルシルから貰った腕輪の力を使ったみたいで、赤い子の打撃を防いでいる。でもこれには1つ欠点がある。それは1度使うとその日はもう使用不可となることだ。確かにこれほどの強力な障壁なら、連続して使えるはずがないとその時も思った。ともあれ1つの危機を脱したのだから良しとしよう。

「まさか私の一撃が防がれようとは・・・。それはお前の魔法か?」

「いいえ、私の大切な人がくれた力です」

「そうか。しかし先程の斬撃には肝を冷やしたぞ。なかなか良い剣筋だった、良い師を持っているのだな」

私がそう返すと、女の人はそれとは別の話をしてきて私の攻撃を褒めてくれた。私の師、リニスとルシル、クロノのことを褒められたようでそれが嬉しかった。

「え、その、ありがとう・・・ございます」

「だが、確かに腕は良いが、我らベルカの騎士に1対1を挑むにはまだ・・・足りん!」

私がお礼を言ったそばから攻撃を仕掛けてきた女の人に、同じように“バルディッシュ”を振るって斬撃を叩き込む。

†††Sideフェイト⇒ルシリオン†††

シャルと共にザフィーラの辿った軌道を飛んで来たが途中で見逃してしまった。しばらく索敵してみたが、転移して逃げたのか見つけることが出来ず、諦めてフェイト達の元へと向い、現場に到着。ここに来るまでにシャルと決めたことを守るため、俺は複製術式の遮断羽衣(ステルス・コート)を発動し、フェイトとアルフの戦闘を見守っていた。

(あの剣士は強いな。たぶん大戦時の騎士の中で、下の上から中の中くらいだろう。今のフェイトでは経験・技量ともに足りてないか)

そう考えていると、フェイトが剣士の一撃を防御ごと押し弾かれ、ビルへと叩き落されてしまった。剣士がフェイトに近付き何やら話しているようだが、ここからでは聞き取れない。それだけでなくアルフの方にも、ザフィーラが近付いているのを視認する。ここまでか。

『シャル、戦闘開始だ』

念話ではなくリンクを使い、シャルに俺たちの戦闘参戦を告げる。続けてフェイトとアルフには念話で、俺たちが戦闘を引き継ぐことを告げた。

『フェイト、アルフ、よくやった。ここからは俺とシャルが剣士と赤い子の相手をする。2人には悪いが、新手がもうひとり来そうなんだ、そちらを任せたい』

『ルシル!? えっ、もしかしてずっと見てた!?』

『そうなのかい!? だったら早く助けてくれてもいいじゃないか!』

フェイトとアルフは、俺の行動にショックを受けてしまったようだ。だが今はとにかくあの連中の対処をする方が先だ。あとでいくらでも文句を聞こう。

『それに関してはあとで説明するから。今は新手の方をお願いしたい、頼む』

『・・・あとでちゃんと聞かせてね、ルシル』

『はぁ、あいよ。新手ってどんな奴なんだい?』

なんとか言うことを聞いてくれるみたいで助かった。俺はフェイトとアルフに新手の説明を終え、赤い子供の方へと向かう。

†††Sideルシリオン⇒シャルロッテ†††

ルシルからリンクを通して戦闘開始の合図を受けた。そうと決まれば、あの剣士と戦うまでのことだ。というより戦いたい。

「さて、行ってくるね。なのはとユーノはここでちゃんと待っててね」

「シャルちゃん。その、気を付けてね」

「危なくなったら僕も加勢しに行くから」

――真紅の片翼(アインス・ルビーン・フリューゲル)――

私は2人の声を背に聞きながら飛翔術式を発動して、背中から真紅の片翼を展開、あの剣士の元へと飛び立った。私は剣士との距離を詰め、“トロイメライ”を向けて戦闘の引継ぎを告げる。

「ここからは私が請け負います。フェイト。ルシルに言われた通りにお願い」

「・・・判った。気を付けてシャル」

「白い騎士甲冑、蒼い刀剣型のアームドデバイス。そうか。お前がザフィーラの言っていた騎士か」

フェイトはアルフと合流して、ザフィーラとの戦闘に入るのを私は確認した。それにしてもザフィーラの様子からして、私の砲撃があまり効いていなかったみたいだ。ううん、それとも回復した、か。もしかすると治癒を行える味方が居るのかもしれない。

「ザフィーラには逃げられたけど、あなたは逃がさないのでそのつもりで」

“トロイメライ”を構え、いつでも戦闘に移れるようにする。それを見た剣士もデバイスを構え、「ほう。幼い外見では考えられなほどに美しい構えだな」って私を称えたあと、名乗りを上げた。

「守護騎士ヴォルケンリッターが将シグナム。そして我が剣レヴァンティンだ」

「シュテルンリッターが第五騎士、シャルロッテ・フライハイト。愛剣トロイメライ」

静かに対峙して互いを見据える。やばい、すごく楽しみで仕方がない。なのははロングレンジの砲撃系、ルシルは一応オールラウンドだけど、正確に言えばロングだ。唯一のクロスはフェイトだけど、こう言ったらなんだけど私の相手には全然足らない。だからこそ、このシグナムと名乗った騎士との決闘には心が躍る。
 
「フライハイトにトロイメライか。お前もベルカの騎士なのか?」

「いいえ、この世界の騎士よ」

私の魔法陣はベルカのものではなく、私の出身世界であるレーベンヴェルトの紋章だ。でもその形が似ていることから、もしかしたらベルカはレーベンヴェルトの未来の名かもしれない。

「そうか、いや忘れてくれ。今はお前との戦いを楽しみたい」

「同感です。ベルカの騎士の力、見せてもらいます」

お互いの闘気が膨れ上がるのが分かる。さぁ、今の私がどこまで戦えるか。いざ尋常に・・・勝負!

「紫電・・・一閃!」

炎牙(フランメ)・・・月閃刃(モーントズィッヒェル)!」

私の“トロイメライ”とシグナムの“レヴァンティン”に炎が渦巻いた。そして瞬時に間合いを詰め、互いに斬撃を繰り出した。

†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††

フェイトとアルフが合流して、ザフィーラとの戦闘に入るのを確認した。そしていま俺が対峙するのは、不機嫌さを隠そうとしない幼い赤い少女。その態度を見て、何故かかつての敵、夢幻王プリムスを思い出してしまった。

「あんだよ、テメェも管理局かなんかか?」

「そうだ。管理局嘱託ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロードだ。フェイトからすでに聞いているかもしれないが、名前、出身世界、目的をとっと話せ幼女」

どうせ何も話さず戦いを仕掛けてくるのだろうから、期待せずに挑発しておく。案の定「あ゛あ゛!?」と女の子にあるまじき言葉を吐いている。挑発には乗りやすい性格のようだ。精神から攻めていけばボロを出していくだろうな。

「上等だよテメェ、アイゼンの頑固な汚れにしてやる! アイゼン!」

≪Schwalbe Fliegen≫

指に挟んでいた4つの鉄球らしき物体をハンマーで打ちつけて放ってきた。

――術式名:シュワルベフリーゲン。付与効果:飛翔・誘導制御・バリア貫通・着弾時炸裂。複製完了。英知の書庫アルヴィト類似術式検索・・・ヒット31319件、時限登録280秒。発動開始――

「シュワルベフリーゲン」

俺は8つの弾丸を作り出し、第四聖典で打ちつけて放った。それを見た少女は目を見開いて「ウソだろ!?」驚愕していた。さぁ、自分と同じ魔法を使う俺に動揺し、自滅の道を勝手に突き進んで行ってくれ。 
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