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久遠の神話

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第六十一話 図書館でその三

「永遠の戦いなぞ求めない」
「ではそうした意味で駒となることは」
「望まないしそうならない様にする」
「ではです」
「剣士の戦いを止めろというのか」
「はい、そうです」
 聡美はさらに言う。
「そうして頂きたいのですが」
「戦いは止める、だがだ」
「今の戦いが終わってからですか」
「剣士として最後の一人になってだ」
 そのうえでだというのだ、権藤の言葉も考えも微動だにしていない。
「それからのことだ」
「どうしてもですか」
「私はこの国の首相になる」
 国政の頂点に立つというのだ、即ち権力の。
「そして日本を太平洋、jひいては世界の主導的な国の一つで居させ続けるのだ」
「そうですか」
「国内もよりだ、公平で豊かな社会にする」
 ただ権力を望むのではない、政治的ビジョンがあってのことなのだ。
「その為の政策は既にある」
「首相になってからの」
「その前からだ」
「ですか」
「議員立法も提出するし必ず通す」
 一議員の頃からそうするというのだ。
「通し方も整えている」
「万端なのですね」
「五流の政治家だけは己のことしか考えない」
 左翼政権の頃の与党の政治家達に他ならない、一見極左だったがその実は浅ましいエゴイスト達でしかなかったのだ。
「しかし私は違う」
「全てのビジョンを既に持っておられて」
「その動き、通し方もだ」
「全て分析して考えておられますか」
「失敗した場合もだ」
 その場合もだというのだ。
「考えている」
「そこまで、ですか」
「無論想定の範囲外のことも起こる」
 政治とは想定通りに動くものではない、政治もまた人間が行うものであり不確定要素に満ちているものなのだ。
 それでだ、権藤もこう言うのだ。
「その際にも冷静に対応する。そして」
「さらにですか」
「ブレーンも既に何人かいてこれからもだ」
「揃えられますか」
「全て考えている、今の時点でな」
「そしてその政治家としての理想の為にも」
「私は剣士として生き残りだ」
 そしてだというのだ。
「望みを適える」
「ですか」
「もっとも日本を世界の盟主にしようとは思っていないがな」
 あくまで主導的な国の一国だ、そこまでは考えていないのだった。
「盟主、覇権国は負担が大きく長期的に見れば力を弱める」
「ローマの様に」
「覇権国の時代は終わっている」
 権藤の見立てではそうなのだ。
「多くの国が協調していく時代になっている」
「そうしたお考えなのですね」
「私は覇権は否定する」
 戦うがそれでもだというのだ。
「そんな時代ではない」
「時代が変わったのですね」
「そうだ、変わった」 
 権藤はそう見ていた。
「それよりも経済圏だ、太平洋経済圏においてだ」
「欧州とは別にですか」
「出来ようとしているがだ」
「日本はその中においてですか」
「主導的な役割を果たす国の一国だ」
「野心はないのですね」
「私個人の野心はあるがな」
 自覚はしていた、そのことは。 
 だがそれでもだった、国家としてはだった。
「日本の立ち位置は考えているつもりだ」
「そこまでお考えでしたら」
 どうかと、聡美は権藤のその目を見て言った。 
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