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久遠の神話

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第六十一話 図書館でその一

                        久遠の神話
                     第六十一話  図書館で
 権藤はコーヒーが入った白いカップを手に取った、そしてだった。
 そのコーヒーを一杯飲んだ、それから言うことは。
「いいコーヒーだ」
「美味しいのですね」
「豆はキリマンジャロだが」
「日本ではインスタントコーヒーもありますね」
「あれはあれでいい」
 美味いというのだ。
「これでもインスタント食品は結構口にする」
「資産があってもですか」
「忙しい時はそれに限る」
「だからですか」
「資産や地位があってもだ」
 それでもだというのだ。
「時間はままらなないものだ」
「それでインスタント食品も」
「インスタントラーメンも好きだ」 
 意外な言葉だった、聡美からしてみれば。
「それに冷凍食品もだ」
「そちらもですか」
「冷凍うどんもよく食べる」
「何か意外と」
「質素だと思うか」
「はい、シェフの方もおられますよね」
「いるが食べる時間の問題だ」
 その関係でだというのだ。
「特に昼はそうしたもので済ませることが多い」
「お昼は忙しいんですね」
「そうだ、野菜ジュースや豆乳で栄養を摂ったりもする」
 飲み物はこうしたものだった。
「栄養バランスは考えている、その中でもな」
「何かと大変な様ですね」
「時間と栄養の関係がだな」
「はい、企業の経営者で政治家となっても」
「時間はかえってなくなる、多忙だからな。だが」
「だがとは」
「君は今私を政治家でもあると言った」
 権藤はこのことを聞き逃さなかった、やはり鋭い。
「それは間違いだ。何故ならだ」
「まだ選挙を経ておられないからですか」
「それではまだ政治家ではない」
 こう言うのだった、民主主義の摂理からの言葉である。
「全ては当選してからだ」
「いえ、貴方にとって選挙は」
「選挙は何だというのだ、私にとっては」
「ただの通過点です」
「絶対に当選するというのか」
「そしてそれ以上のものを手に入れられるでしょう」
「首相か」
「見えますので」
 聡美のその緑の目には見えるというのだ、実際に彼女はエメラルドを思わせる目で見ながら権藤に語る。
「貴方にはその資質があります」
「当選が何でもないまでのか」
「はい、選挙は要するに人が票を入れてくれればいいですね」
「つまりどれだけ人気があるかだ」
「それならです」
 容易なことだというのだ。
「何でもありません」
「だといいがな。しかしだ」
「しかしとは」
「予言かと思った」
 権藤は少し笑って聡美の今の言葉に返した。
「話を聞いていてはじめはな」
「私は予言は司っていません」
 聡美は首を小さく横に数度振って答えた。
「それは」
「司る?」
「はい、それは兄上のものなので」
「お兄さんがいるのか」
「はい、双子の」
 兄弟の話もするのだった。 
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