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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第21話 戦争準備


――宇宙暦809年/帝国暦500年――

「よし、アロマ、今夜はお前の部屋に突撃だ~~グヘヘ」

銀河帝国は4年後のティオジア制圧作戦(第二次アシカ作戦)に向け動き出していた……が、アドルフはいつもと同じく平常運転だった。
アドルフはできるだけ自分が働かなくてもいいような体制を整えていたし、周りもアドルフに特に期待しているわけでもないので、これといって業務が増えたわけでは無かったのである(4年という長期計画であるのも影響している)。

幸いと言ってはなんであるが、この時代の銀河帝国の文官・武官には優秀な者が数多くいたため、特に問題も無く軍拡は進められていく。

『1億人100万隻体制』

大幅に誇張されているが、この未曽有の大軍拡はそう呼ばれていた。
実際のところ、期間限定かつ無理をすればそれとて達成可能なところが銀河帝国の恐ろしいところであり、その国力の強大さを物語っている。

だが、無論のこと軍拡を行っているのは銀河帝国だけではない。

ルフェールは既に第二次新規艦隊建造計画を完了させ第三次計画に入ろうとしていたし、ティオジアも各国の足並みの乱れからゆっくりとではあるが軍備を拡張している。

銀河帝国がティオジアに侵攻したときはルフェールが援軍を出すことが予想され、双方共に数十万隻規模を動員する空前の大会戦となるだろう。

来るべき戦いを思い浮かべた関係者は、震えを隠せなかった。


* * *


銀河帝国が軍拡に励む一方、ここルフェールでも軍拡は順調に成されていた。

「ようやく第三次新規艦隊建造計画が始動したか」

「これで多少なりとも銀河帝国に対抗できるだろう」

ルフェールは第一次計画で第十一、十二艦隊。第二次計画で第十三艦隊と計3個艦隊を新たに新設していた。
これで、ルフェールは既存の10個艦隊と合わせて13個艦隊を保有したことになる。

だが、銀河帝国の物量は圧倒的と言えるほど膨大。もはやチートの域である。
これだけでは到底満足できるものではなかった。

「第一次計画では2個艦隊、第二次計画では1個艦隊を増設しましたが……第三次計画はどれほどの規模になるのです?」

「計画では第十四、第十五の2個艦隊の予定だ。第十六から十八艦隊は第四次計画以降に持ち越されることになる」

「第十九艦隊以降は無いのですか?」

「それ以上はルフェールの国力が許さんのだよ。我々が保有できる艦隊は18個が限度だ。まあ、1個艦隊あたりの定数を減らせばいくらでも可能だろうが」

ルフェールの大統領でもある男は皮肉げに言う。
極端な話、1個艦隊を2隻とすれば1万個艦隊を揃えたところで総数は20000隻でしかないが、そんな艦隊など無価値だ。

「ですが、帝国は判明している正規艦隊だけで20個はありますぞ。ましてや8000隻程で編成されている半個艦隊も合わせれば………」

「それ故のティオジアよ。奴等の総力を結集すればなんとか10個艦隊は編成できるだろう。それを合わせれば現状でも23個艦隊になるではないか」

「しかし、そのティオジアとて何時まで持つか分かりません。あの手の共同体が崩れ出すと脆いのはお分かりでしょう!」

「別に永久に持たせようなどと考えてはおらぬさ。最低でも九王国連合との同盟が成るまで持てばいい」

「九王国連合との……同盟ですか!?」

九王国連合とは、近年ルフェールが発見・接触した新たな国家群の連合体である。
その名の通り、連合を構成するのは九つの王国であり、1国1国の国力はルフェールや旧ロアキアには及ばないにしろ、侮れない武力と技術力を有している。
そして、九つの国家全てを合わせた国力はルフェールより上であった。

この話はまだ民間には知らされておらず、知っているのは上層部の一部のみである。
それ故、この話(そんな国家が存在すること)はルフェール以外で知る国は無い。

「彼らは応じるでしょうか?」

「応じる他ないさ。なにしろルフェールが征服されれば次は彼らの番なのだから。そのときは、我らを吸収してより強大になった銀河帝国と相対するハメになることを分からぬ連中でもあるまい」

「そう持ちかけて我らと同盟を締結するよう揺さぶる…と?」

「揺さぶるも何も純然たる事実だ。我らは善意から帝国の危険性を教えてあげるのだよ、善意からな」

国家間の関係に純然な善意など存在しない。
この場合も表面上は善意であるが、実際には自国の利益からくる善意でしかない。

「そういえば、ティオジアの連中はどうしているのです?」

「話にならんよ。銀河帝国が攻めて来るのは当分先だと安心しきっている。彼の双星の片割れアルベルト・アルファーニは5年以内に来ると説いて回っているらしいが、ウェスタディア、トラベスタ、シャムラバートなど一部の国を除いて何処も本気にはしてないようだ」

「それはまた……頼りないことですな」

「だからこそ九王国連合との同盟を急いでいるのだ。彼らが頼りになるなら、もう少し余裕を持って交渉に臨めたというのに………」


* * *


――宇宙暦810年/帝国暦501年7月7日――

この日、アドルフは御召艦に乗り、10隻程度の護衛艦と共に宇宙を遊弋していた。

もちろん、基本宮殿内でゴロゴロしているアドルフが僅かな護衛しか付けずに宇宙海賊の多発するこの宙域へと赴いたのはそれ相応の理由があった。

「宇宙海賊のものと思われる艦艇30。こちらに向かってきます」

オペレーターから宇宙海賊出現の報告が入る。

彼我の戦力差は3対1。
数の上では圧倒的に劣勢である。

だが、オペレーターに緊張感は無い。

「愚かしいものだな。10隻とはいえ、新鋭艦と精鋭部隊で固められた我らに挑むとは」

アドルフは嘆かわしいと言わんばかりに首を振る。
そして告げた。

「『回想シーン強制流し装置』を作動させろ!!」

アドルフの命令の後、時を置かずして海賊船内のモニターが全てエロゲーの回想シーンに切り換わる。

海賊船はたちまち混乱し始め、もはや統一した行動など取れようもない。

「これは……想像以上の威力だな」

あまりの予想外の効果に、アドルフたちは海賊船の痴態を茫然と眺めるしかなかった。

「海賊たちはどうされますか?」

我に返った参謀の1人が、アドルフに問う。

「『回想シーン強制流し装置』の効果を確認した今、奴等はもう不要だ。速やかに宇宙のゴミにしてしまえ」

そう命令したアドルフは、味方艦の艦砲にて撃沈されていく海賊船を眺めながら(結局彼らは最期まで混乱から抜け出すことはなかった)喜びに打ち震えていた。

「くくっ…これは使える、使えるぞ!!」


後日、この『回想シーン強制流し装置』は皇帝陛下たるアドルフのゴリ押しもあり軍に正式採用されるかに見えたが……暴力冥土や良識派たちの必死の反対と妨害により、帝国軍の正式装備となることは無かった。
しかし、効果があったのは事実なので、特例としてフリードリヒ・デア・グロッセへの搭載は認められた。
 
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