フェアリーテイルの終わり方
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三幕 惜別のベアウルフ
3幕
前書き
猫 は 守り人
「ゴメンネ、おばちゃん。フェイ、行く」
「その人は?」
フェイとマルシアが同時にルドガーを見上げてきた。マルシアの表情は柔らかく見えて眼光は鋭い。この少女に害ある者なら許さないと目が語っている。
フェイと自分の関係。数時間前に会ったばかりで、仲間とも保護者とも言いにくい。
「家が近所なんです。たまたま出先で会ったから、送って行こうと思って」
相手が首相だと気づいていないフリをしつつ、真実の一部だけを伝えた。
するとフェイも察してくれたのか、ルドガーの腕に掴まった。
「イイ人だよ」
「――あなたがそう言うのならそうなのでしょうね」
「すみません。それじゃ失礼します」
ルドガーはフェイを連れて前方デッキへ戻った。潜ったドアが背後で閉じる。
ルドガーは盛大に長い息を吐いた。
「お見事。上手く言えていましたよ」
「はは。ローエンに褒められるとなんか落ち着かないよ」
一方で、ルドガーから離れたフェイの手を、下からエルが握っていた。
「もー、だめでしょ。勝手にフラフラしちゃ」
「ゴメンナサイ」
「迷子になったりしちゃったらいけないから、エルが手繋いでてあげる。離れちゃだめだからね」
「うん。離れない」
エルと繋いだ手を、フェイはしっかり握り返した。
不思議なやりとりだ、とルドガーは思った。エルが常よりしっかりして見えるし、何より二人のやりとりは、年齢差を考えなければ姉妹そのものだった。
「首相の猫は前の車両へ行ったようです」
「分かった。じゃあ追いかけよう。無抵抗の猫をやるのは、ちょっと気が引けるけど」
「確かにイヌ派の私も怯みますが……」
分かっているのだ。それでもやらねばならない。やらなければ帰れない。
誰に聞いたわけでもなくルドガーはその事実を感得しており、仲間たちはルドガーの確信を信じてくれていた。
ルドガーたちはソウを追って前方車両へ進んで行った。これまた客のいない車両を一つ抜けた先のホールデッキで、ソウは待つように座していた。
『――おい。あんたら、ここへ何しにきた』
「え!?」
「うそー!」
「猫が――しゃべった?」
『さっきからそこで立ち聞きしてたろ。マルシアに用事がある連中でもなさそうだな。――そうか』
ソウが起き上がり上体を低く構えた。ルルでよく知っている。これは威嚇のポーズだ。
途端、メキメキと耳に痛い音を上げて、ソウの肉体が豹変した。
元の体積の何十倍もある、どこかの街道でクエストに出てもおかしくない、四本足の魔獣がそこにいた。
『あんたら、オレを処分しに来たんだな。悪いが、やられるわけにはいかねーんだよ!』
魔獣化したソウが飛びかかってきた。ルドガーはエルとフェイを担いで、ローエンはエリーゼを庇って左右に避けた。
「列車でバトルにはいい思い出がないってのに!」
ルドガーは双剣を抜き払うや、ソウに一撃、斬り入った。手応えはあった、が、浅い。間合いを取るため、一丁だけ銃を抜いて撃った。ルドガーは刀身を紫の背から抜き、ローエンたちのいる位置まで下がった。
「エル、フェイを頼んだからな」
「まかせてっ」
エルとフェイについては、年齢を鑑みれば逆だが、このトンデモ空間を知っているという点では正しいとルドガーは考え振り分けた。
「ローエン! エリーゼ!」
「分かっております」
「行きますっ」『ヤルぞー!』
全員がそれぞれの武器を構え、魔獣と化した猫へと挑みかかった。
後書き
はい速攻バトル突入です。これくらいやらないとペースが遅くなるんでサクッとやっちゃいました。
しゃべる猫いいですよねー。作者もしゃべる猫がいたら余生をその猫と過ごすとか考えちゃいますよ~。老後は動物と過ごすのがボケ防止になるかにゃ~?
さりげにここ、フェイをエルにではなく、エルにフェイを託したルドガーさん。動機は本文通り。指切りはまだですがすでに「アイボー」としての信頼が窺えますな2424
エルもエルでお姉さんぽくしています。
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