〜Esper〜 何でも屋営業中
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序章
プロローグ
前書き
昔書いたお話です。
ビルが立ち並ぶ 都会の中
賑わうその通りに大きな轟音――
誰もがその音を耳にすると 野次馬のように集まってくる
ざわつく人々 そこには一人助けを求めるかのように叫ぶ男がいた。
「俺じゃない……違うんだ―――」
煙があがる車 どうやら交通事故だろうか
救いがあるとすれば、事故に巻き込まれた怪我人や被害者…そして加害者を含め、いない事かもしれない…。
男は叫ぶ「これは自分ではない」と、誰が信じてくれると言うのだろうか――― だが、それは頼むように青ざめた表情で叫んでいる。
側のビルの上では見物をするかのように、煙が上がる事故現場を、身を乗り出しながら見ている一つの影がある。
その影は、どうやら男、バンダナを巻いてた二十歳前後で 遊び人のような印象を受ける格好をしている。その男は、クスッと笑う。
「あ〜あ、やってるなぁ……今日も派手なこと」
そう、独り言のように呟いた。
彼の名は、浅茅英樹(あそう ひでき)
遊んでいるような容姿だが、彼には彼なりの仕事があった。今、このビルの上にいるのも、仕事の一ついわゆる、任務である。
「んー……見つからねぇ」
手すりでゴロゴロしながら、事故現場に目を下ろしている。
すると、野次馬のある一定の場所に眼をやった時、彼は何かに気がついた。
「……!」
ガバッと体を起こして、口元がほころぶ
「――ビンゴ」
そう呟くと目を瞑り、神経を研ぎ澄ませる様に集中した。
『しーちゃん、見つかったぜ?あいつ、薄い灰色の半そでのおっちゃん……あいつだ』
『珍しく早いな――お前も、現場に来い』
『うぃっす!』
そう、これが彼の仕事。彼には人とは違う力を持っている。
英樹は回線らしきものを落とすと、その場を退散しようとした が、警備員らしき人物が屋上に来てしまった。
「な、何してるんだ!君、ココの会社の者じゃ――――」
「はーい、はいはいはい!分かってるって、すぐ退散しますよ〜」
だが、そうも簡単にはいかないのが世間の常識
「待ちたまえ、少し話を聞かせてもらおうか?」
「ちょ、俺、急いでんの……んなのは後で」
すぐに、耳元でキーンと耳鳴りが起こる。
『何してるん、早うせい!!』
「だーもぅ、うっとうしいぃ!」
英樹は、警備員の両肩に両手を置き目と目を合わせた。
警備員は最初、警戒した態度だったのだが、何もなかったかのように、その場からいなくなってしまった。英樹も一息入れると、現場へ走り出した。
「しーちゃん!あれ?」
「……」
「あー……逃がしちゃいました?」
現場には野次馬はいるが、探している人物はもういなくなってしまっていた。
英樹が話しかけた人物、身長が高くスーツが似合うような男、一言で片付ければ頭がよさそうな人だ。表情からして今は怒りが爆発しそうな感じだ。名前を椎という
「なぜ、お前はすぐ来んのや」
「えーっと……け、警備員のおっさんが――って言い訳は、ダメ?」
彼は、どうやら怒ると関西弁が出るらしい。
「このどアホが!あれを使えばええやろうが!」
「んな事、言われたって……めんどいし」
この二人にとっては、いつもの会話だが、このミスは、ちょっとした出会いを引き起こす事となる。そして、こいつらは世間では第六感と呼ばれる、いわゆるサイコを持っている。
さっき警備員にしたのは、「マインド・コントロール」名前しか聞かない事が多いし、催眠術で有名だ、彼、英樹の得意の力。そして、野次馬の中で当てたあれは「シンクロニシティー」と言う。
同じ能力者が少しでも力がぶつかると感づく―――どちらか一方ではなく能力者全てに通じている。
後は、一般的には「テレパシー」と思われるだろうが、それとは違い「コネクト」と呼ばれている。
使い方は色々ある。が、2人はこれで会話をしている。
だが、使うには頭が少し痛くなるようだ。
彼らの仕事――
いや、やっている事は、自分達と同じ能力を悪用するやからをなくそうとしている事、それは「裏」の個人的な仕事、表は「何でも屋」を営業していた。
「あーぁ……どうしようか、しーちゃん」
「どうするも、こうするも、何もできないなら…戻るぞ」
二人は、その場を後をにした。
勿論、自分達の事務所へ――
****
都会の裏通り 狭い道を通ると少しくらい細道に行き当たる
そこにはボロいビルが一軒……
廃ビルと言えるビルだが、ここに英樹と椎がいる
少し階段を上がるとドアの前には、何でも屋の看板が立てかけられているのを見ると一応営業をしれているようだ。
「なぁ、しーちゃん。この事件、今日もあったみたいだな」
英樹は、ボロいソファに座りテレビのニュースをみながら椎に言う
ニュースの報道は事故扱い――― 一般的に言えば ただの交通事故なのだから、仕方がないと言えば仕方がない。
「お前がすぐ来れば、今日の“は”防げたんだがな」
まだ根に持っているのか、突っ掛かる椎。
「悪かったって。でも、しーちゃん 一人でも平気だったん―――」
「ほぅ?英樹……分かって言うとるんか?力を使う時、どうなるか言うてみい」
あまりの英樹の馬鹿な発言に、怒りが関西弁で表れる椎、英樹も慌てて考えると、謝る。
「すんません、もう言わない……」
英樹に言わせようとしていたのは、能力(力)の事なのだ。
一人が、力を使っている間は動きが鈍くなる。ほとんど何も出来なくなるのだ。それは欠点であり一人で行動できない理由でもあったりする。
「でも、どうするんだよ。逃がしちゃったけど、顔分かったんだし追いかけてみる?」
「アホか。シンクロしたって事は、向こうも“気がついている”って事だろうが」
眉間にしわを寄せながら椎はため息を漏らす。
「まあまあ、とりあえず。この現場に行ってみようぜ!どうせ、こんな事務所 誰もこないって」
テレビのニュースに映る現場を指差すと
椎の阻止する間もなく飛び出していくのだった。
「はぁ……来ないって事は、生活危機って事なんだがな」
そう、言葉をもらしつつ椎も追いかけて外へと行く事にした。
歩きながら2人は、例の事件の話をする。
「あれってやっぱり、俺と同じ、マインド・コントロールってやつかな?」
「いや、そうとも限らない。もしかしたら違う働きを持った力かもしれない」
「違う力って………俺、ぜーんぜん分からね!!」
「それは、お前が考えようともしないからだろ?」
こんな会話を周りが聞いたら、電波な奴に思える事だろう。
犯人の素性、目的 それについて二人は考えながら疑問をぶつけ合った
そんな時 ピンっと何かが過ぎった。
言葉で表すことができない 体に電気のように一瞬、走ったのだ。
英樹と椎は、後ろを振り向いた。横を見たりもした。だが、そのピンと来た人物が見当たらない――
「なぁ、さっきの感じってさ――」
「……シンクロ、だろうな」
シンクロした際 ほんの一瞬だが静けさが広がった
が、すぐいつものガヤガヤと人が話す、乗り物が走りあう音が戻ってくる
人込みの真ん中で たたずむ2人…沈黙の中、人込みを一瞥するのだった―――
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