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ヘタリア大帝国

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TURN108 トライアスロンその十一

「ではこれよりです」
「はい」
「それでは」
「モスクワ攻略作戦に許しを出します」
 帝自らそうするというのだ。
「必ず攻略して下さい」
「わかりました」
 東郷が応える。
「それでは」
「それでなのですが」
 ここで帝は東郷に問うた。
「カテーリン書記長のことですが」
「彼女が何か」
「先の話になりますが」
「その処遇ですか」
「それはどうなりますか?」
 帝が今気にかけているのはこのことだった。
「一体」
「それはソビエトの国民が決めることかと」
 東郷はこう帝に答えた。
「そのことは」
「我々が気にすることではないです」
「そうですか」
「他国の国家元首の処遇は内政干渉になります」
 だからだというのだ。
「我々が何かをするべきではありません」
「では、ですね」
「カテーリン書記長が戦後もソビエトの国民に選ばれたなら」
 その時はというのだ。
「彼女はそのままです」
「ですがそれでは」
「共有主義ですね」
「あの思想は私から見ましても」
 君主としてではなく個人から見ての言葉だ。
「危ういものだと思います」
「それだけは、ですね」
「何とかすべきではないでしょうか」
「ご安心下さい、そのこともです」
「解決出来ますか」
「問題は石です、お聞きだと思いますが」
「彼女の手にある赤い石ですね」
 帝もこのことは既に聞いている、誰もがカテーリンの話を聞くのは彼女の手にある石の力に拠るものなのだ。
 それでだ、帝も言うのだ。
「あの石さえなければですか」
「共有主義は力を持ちません、あの娘一人だけのものになります」
「そうですか」
「それでは若し彼女が国家主席のままでも」
 権力を持ったままでもだというのだ。
「共有主義を広めることは出来ません」
「誰も支持しないからですね」
「そうです、あの石を砕くだけでいいのです」
「その際書記長の身体は」
「無論傷つけません」
 ただ石を砕くだけだというのだ。
「手の甲にあるそれを」
「それで済むのですね」
「おそらくは」 
 それで充分だというのだ。
「それで充分です」
「それではそのことも」
「はい、お任せ下さい」
 東郷は帝に対して頭を下げた、そのうえでモスクワ戦に赴くのだった。ソビエトとの戦いはいよいよ最大の山場に入ろうとしていた。


TURN108   完


                           2013・5・10 
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