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ヘタリア大帝国

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TURN107 母と娘その二

「私だけが残ってしまった」
「総統は孤児でしたね」
「あの頃のドクツは孤児に溢れていた」
 全ては敗戦と恐慌の結果だ、経済的に崩壊し社会のモラルも秩序も何もかもが崩壊した国家だったからである。
 それでだ、レーティアもなのだ。
「私にしても。苦しい中を生きてきた」
「総統さんはどうして生きていたんですか?」
「あの頃か」
「そうです、お一人になられてどうして」
「孤児院にいてだ」
 そしてだというのだ。
「そこを出て喫茶店でウェイトレスをしていたがな」
「食べられていたんですか」
「何とかだ、私は菜食主義でしかも小柄だからだ」
 彼女の食生活や体格もあってだというのだ。
「少食で済んだし家もあったがな」
「家は孤児院ですね」
「そこにいた、グレシアと出会ってからは彼女と共に済んだ」
「苦労されていたんですね」
「生きるだけで必死だった」 
 それが幼い頃のレーティアだった。
「その中でドクツの惨状をどう救うか考えてだ」
「そしてですか」
「私は立ち上がった、ドクツの惨状を救いもう一度誇りある国にする為にな」
 その為にだというのだ。
「演説をはじめグレシアに出会い」
「今に至るのですね」
「ドクツは救った」 
 そうしたというのだ。
「そして戦いをはじめたのだ」
「そうでしたか」
「私は母を失った」
 父も妹も、他の家族達もだ。
「だからこそ母の有り難さがわかるのだ」
「そうですか」
「長官の細君もだ、だからだ」
「ここはですね」
「そうだ、有効な手段だと思う」
 こう話すのである。
「是非な」
「では真希を呼ぶか」
「私も賛成だ」
 こうしてだった、東郷は真希をスカーレットの部屋に連れて行った、彼はこの時に真希にこう言ったのだった。
「真希、いいか」
「お母さんのこと?」
「そうだ、生きていてどう思う」
「嬉しいの」
 真希は父に手を引かれている、そのうえでの言葉だった。
「ただね」
「ただ?」
「お母さん今おかしいよね」
 こう言ったのである、父の顔を見上げながら。
「何かね」
「わかるんだな、真希は」
「だってお母さん真希のこと大好きだから」
 それ故にだというのだ。
「生きていたら絶対に最初に真希のところに来てくれるよね」
「確かにな」
「そうしないから」
 そこから感じていたのだ、スカーレットの変化に。
「だからね」
「そうだな、しかしな」
「しかしって?」
「真希がいればな」
 彼女がいればというのだ、娘が。
「絶対に大丈夫だ」
「本当に?」
「お父さんが嘘を言ったことがあるか?」 
 娘の顔を見て穏やかな声で問う。 
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