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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第58話 やっぱり理解できませんでした


 レイナはまた、抱きしめてくれた。包み込んでくれる優しさを、感じていた。

「……ありがとう。本当にありがとう、レイナ」

 リュウキも、レイナを抱きしめ返した。
 本当に安心出来る、温かく柔らかい。レイナに包まれている今が、この世界で一番、安心出来た瞬間だった。

「君に会えて、本当に良かった……」
「私も……リュウキ君と出会えて良かった。……ほんとに嬉しかったんだよ。……でも、辛い事なのに……ゴメンなさい。無理に言わせて……」

 レイナは、リュウキを抱きしめる力を上げた。自分でもリュウキに何かしてあげられる。そう思えたら……嬉しくも思えたんだ。レイナは沢山、リュウキから貰っているから。

「……そんなこと無い。話を聞いてもらって……レイナの言うとおり、全部言えて良かった。……軽くなったよ。ありがとう」
「そう……良かった。私でもリュウキ君の為にしてあげられる事があって良かった……」

 そう言うと、レイナも自然と涙が出てきた。

 そして、今までの事を思い返した。

 この世界にアスナと一緒に、囚われて。……そして 自分をずっと責めていた。そして、大切な、大好きなアスナと別れた時期もあった。

 そんな時、彼が助けてくれたんだ。
 
 この世界に来て、暗い事ばかりじゃなかった。優しく、暖かい事もあったから。 



 そして、暫くレイナはリュウキを抱きしめていて。

「レイナ。もう良いよ。落ち着いた、落ち着けたよ……」

 リュウキが、そう言った。その言葉を聞いたその瞬間!

 本当にボンッ! と言う音がしたかと思えば、レイナの顔が真っ赤に染まった。
 それは、まるで火炎系の攻撃を、或いはブレスを顔面に直撃したかのように熱く燃え上がってし待ったかの様だ。《リュウキを抱きしめている》 その事実を、レイナはそれを改めて実感したようだ。
 先ほどまでは大丈夫だったのに、今更だと思えるけれど。

「わっっ!!! わあああっ///ご……ごめんっっ!!」

 レイナは、頭で理解すると、即座に離れた。リュウキは、そんなレイナを見て首を傾げる。

「……謝らなくていい。と言うより、オレはレイナに感謝をしているんだ。レイナは、安心させてくれたんだから。……礼しか出ないよ」

 リュウキは、そう言って微笑んだ。
 更に更にレイナは顔が赤くなったが、この行為、抱きしめると言う行為。それは、リュウキにはそう写った様なのだ。確かに間違えてはいない。でも、好意を感じてくれてなかったのかな、と残念にも思えたのだ。

(――……ううぅ……、こ、このまま恋愛にまで発展させ……。あっ! いやっ そ……そんなつもりはないけどっ!)

 ……レイナは、誰かに言い訳するわけじゃないんだけれど、そう思ってしまっていた。だけど、やはり 心が弱ったところに漬け込むなんて真似……好きじゃないのは事実だった。そう、やっぱり最後はお互いに、好き同士じゃないと駄目だと思っているのだ。

「さて……」

 リュウキは、辺りを視渡した。随分とこの場所で無防備な姿でいた訳だ。この場所はダンジョン。危険エリアなのだから。周辺に危険が無いかどうか、それを確認したその時。

「……ッ!」

 リュウキが周りを視渡した結果。周囲にモンスター達が集まってきていた事にいち早く察知した。

「……リュウキ君?」

 だが、レイナは気がついていない。隠蔽(ハイディング)スキルを最大限に活用している様だ。
 森のその奥から、相手の攻撃が遠距離攻撃である咆哮(ブレス)が飛んできたのだ。

「レイナッ!!」

 リュウキは、レイナを抱きかえ、素早く横へ飛んだ。その瞬間、レイナの居た場所が風の刃が飛び交う。空気を切り裂く様な一撃が頭上を掠めた。

「きゃあっ!!」

 レイナは、いきなりの事で驚いていた。が、彼女もこの世界の最前線で戦っている身であり、歴戦の剣士だ。直ぐに冷静さを取り戻し、状況を理解した。

「……周囲10m範囲内に20、いや、隠れているが、30はいるな。この場所でここまで来るのは想定外だ」

 リュウキは再び周囲を視渡した。なぜ モンスターの軍団が集まってきているのか、それは解らないけれど。時期的なものなのか、何らかのトラップだったのか。
 はっきりとした事は解らないがこの層では随一のモンスターの群だと言う事だ。

「……いきなりだが、レイナ。背中を任せられるか?」

 リュウキは、下ろし背後にいるレイナにそう聞いた。レイナは力強く頷く。

「任せて……! さっきは、気付けなくて、ドジっちゃったけど! 大丈夫。リュウキ君に見てもらいたいから。成長した私をっ!」

 レイナは、ゆっくりと腰に携えていたレイピアを引抜き構えた。

「……OK。頼む」
「うんっ!」

 2人はモンスターと向き合った。リュウキとレイナの2人の剣舞。

 それはまるで名の通り舞を踊っているように鮮やかで、そして リュウキの動きに合わせて攻撃を出来るレイナも相当な腕前になっていた。トップギルドの名に恥じない程の腕だった。現れたこの層随一の数のモンスター。

 それも囲まれている状況での大軍団。それをものの数十分で仕留めきったのだった。



「ふぅ……。やっぱり リュウキ君はすごぃなぁ……あの数なのに、殆ど疲れてないみたいだし……」

 レイナは、軽く肩で息をしながらリュウキを見て呟く。パラメータ的には問題ない相手だったけれど、数が多すぎる。神経を削られた様で、やや疲弊してしまったのだ。

「……レイナも良かったよ。さすがはトップギルドの副団長補佐、だな。」

 レイナの肩を叩いてそう言った。すると、レイナは花開いたような笑顔になった

「ほんとっ……? 私、成長したかな?」
「ああ、間違いない。……保障するよ。見事だった」

 リュウキは笑顔でそう答えた。リュウキは本当に自然に笑顔になる事が出来たようだ。
 レイナはその事を自分のことの様に嬉しくて、それで何だかくすぐったくて、何よりも、とても嬉しい……。

「嬉しいよ……。ありがとっ」

 レイナも、めいいっぱいの笑顔をリュウキに見せた。

「ははは……。評価するなんて、偉そうに言うつもりなかったが……それに、何か大袈裟な気がするけど」

 リュウキはそう答えていた。
 
 2人はこの後もレイナにギルドから連絡が来るまで暫く行動を共にしていた。このパーティで暫くは、2人の笑顔が絶える事は無かった様だ。

「じゃあ、……時間だから」

 レイナは、名残惜しそうに……そういった。場所は第55層のグランザム。リュウキはそこまでレイナを見送っていたのだ。

「……ああ」

 リュウキも手を上げた。名残惜しいのはリュウキも同じだった様だ。それはその表情に現れていた。

――……次はいつ会えるだろう……?

 レイナはこの事で頭がいっぱいのようだ。

「また……またな。レイナ」

 リュウキは、レイナにそう言った。
 ずっと……いつ会えるか?の言葉でいっぱいだったんだけれど。その言葉を聞いていただけで……十分だと思えたのだ。
 いつだって、きっと会えるんだって……、安心できるから。

「うんっ// ……今度会うときは、料理! 振舞ってあげるからね?」

 レイナは手を振った。
 リュウキも、楽しみにしていると一言、そして、互いに別れていった。




「……レイナ、か」

 リュウキは、帰る道中に考えていた。それはレイナの事。
 彼女は、自分のことを『ほっとけない。』と言っていた。それは、なぜだろうか?自分が頼りないから……だろうか?

「ふむ……。確かに、戦場のど真ん中であんな事になったら、誰でもそう思うかな。事の顛末はキリトに聞いたらしいし」

 リュウキはそう結論づいた。でも……何だか、体の芯の方から何かがこみ上げてくるような感覚に見舞われる。上手く言えないが、バイタルデータが、心拍数が、やや増している様だ。強く、早く脈打つのを感じていた。

「………これ、なんだ?」

 益々よく解らないが、どうやら、体も火照っている様だ。

 レイナと会って、その事を考えると更に。抱きしめられたあの時も、そうだ。心拍数が増しているから、火照ったように熱くなるのは判る。
 ただ、何故そうなったのかは判らなかった。

「……爺やなら、何でか教えてもらえるんだけど……」

 リュウキは、ため息をはきながらそう呟く。自分が判らない事は何でも教えてくれていたんだ。
 でも、他にも方法はある。それは、ここアインクラッドの皆に聞くという事だ。攻略組に所属しているメンバーの中でも、気軽に話せる者は勿論いる。キリトとかクラインとか。

 だが、何故だろうか。
 キリトやクライン、アスナ、エギル、………皆に相談するのは何故だか嫌だった。

「相談しづらい……。なぜか解らないが、何となく恥ずかしい気がする」

 リュウキは、解らない気持ちはとりあえず、一笑し忘れようとしていた。
 そして……。

「さてと……、とりあえず 戻るか……、今日はゆっくり休みながら、……少し考えてみようかな」

 リュウキはホームへと帰っていった。いつか判るだろうと思いながら。

 
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