八条学園怪異譚
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第四十七話 洋館ではその七
「問題は洋館の泉の場所だけれど」
「そこが何処なのかね」
「ああ、そこはな」
暫く沈黙を守り水羊羹を食べていた博士が言って来た。
「カウンターに入ればな」
「お店のですか」
「そこに入ればいいんですね」
「そうじゃ」
それでいいというのだ。
「それでよい」
「カウンターは異世界ですか」
「そこへの入口なんですね」
「カウンターはお店の人が入る場所じゃな」
「はい、そうですね」
「客室と」
「そうじゃ、だからな」
博士は二人にさらに話す。
「カウンターに入るかどうかじゃ」
「それで、ですね」
「若しそこが泉なら」
それならだとだ、二人も応えて話す。
「学校の外、ですね」
「そこに出るんですね」
「そうなる、妖怪さんや幽霊さん達がこの学園の中に出入りする場所じゃからな」
「だからですか」
「それじゃあ」
「うむ、行ってくるのじゃ」
「私達がエスコートしよう」
ここでまたドラキュラが出て来る、他の三人も。
「それではな」
「あっ、お願い出来るの?」
「洋館まで」
「お安い御用だ、というかだ」
「というか?」
「っていうと?」
「あの洋館は私達の今の家だ」
ドラキュラはにやりとした感じの笑顔で二人に話した。
「実はな」
「あれっ、あんた達あそこに住んでるの」
「そういえばそんな話を聞いたけれど」
半魚人の話がだ、ここで思い出される。
「それでなのね」
「私達を案内してくれるのね」
「我々の今の家にな」
そう言ってだというのだ。
「そうしていいだろうか」
「もう一人住人がいるのじゃよ」
フランケンは親しげな笑みで二人に言う、かなりの長身で愛実と比べると一メートルは違う。しかし顔立ちはよく見れば優しい。
「その幽霊さんじゃ」
「白い幽霊よね」
「その人がいるのよね」
「そうじゃ」
その通りだとだ、フランケンは答える。
「日本の幽霊とはまた違う感じじゃ」
「定番の白い着物で頭に三角の布がある」
「ああいうのじゃないのね」
「あれは日本の死んだ人の服だからね」
狼男も言う。
「ヨーロッパとかのそれは違うんだよ」
「じゃあその幽霊さんも」
「そうみたいね」
二人もここで気付いた。
「西洋の人なのね」
「そうみたいね」
「あの洋館は八条大学のフランス語学科の人が建てたのじゃよ」
博士は二人に洋館の由来から話した。
「フランソワ=ジョシュワさんというな。わしの同僚じゃった」
「博士の同僚の人ですか」
「その人が建てられたんですか」
「うむ、明治の頃にな」
建てられた年はかなり古かった。
「建てられたのじゃ」
「歴史ある建物なんですね」
愛実は博士の言葉にこの学園の歴史を感じた、そしてその話から博士に対してこう尋ねたのである。
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