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『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』

作者:零戦
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第四十話

 
前書き
……ハミルトンは何時からメインヒロインになった?
ゴスロリ様の反応が怖い……。
感想の返信は後でします。 

 


「久しぶりですねピニャ殿」
「……そうだなセッツ殿」
「それと、私に何の御用ですか?」
「……セッツ殿しか出来ない仕事だ。まぁ詳しくは館に到着してからだな」
「はぁ……」

 今一つよく判らない樹だった。そして樹はピニャの館に到着した。

「実は……ハミルトンを助けてほしい」
「ハミルトンさん……ですか?」
「そうだ」
「よく話しが判らないのですが……」
「実際にハミルトンを見たら判る。それでは頼む」
「ちょ、ちょっとピニャ殿……」

 樹はピニャに押される形でとある部屋に入らされた。

「此処は……」
「……誰ですか?」

 暗い部屋を見渡す樹の視界に一人の女性が映った。ハミルトンだった。

「ハミルトン……さん?」

 ハミルトンの姿を視認した樹は驚愕した。目の下には隈が出来、髪はボサボサであり風呂にも入っていない様子だった。

「ど、どうしたんですかハミルトンさん? その姿は……」
「何かあったんですか?」
「………」

 ハミルトンがボソボソと喋るが樹は聞き取れない。

「え?」
「……婚約者が亡くなりました……」

 辛うじて聞き取れた言葉に樹は申し訳ない気持ちだった。

「そうでしたか……御冥福を御祈りいたします」

 樹はそう言った。普通ならこれで大丈夫なのだが、ハミルトンの婚約者の死亡原因はある意味で樹にあった。
 そしてこの言葉にハミルトンは目に生気を宿して樹をキッと睨んだ。

「……御冥福ですって……ふざけないで下さいッ!!」
「……え……?」
「婚約者は……婚約者は貴方方の攻撃で亡くなったんですよッ!! どうしてくれるんですかッ!!」
「………」

 樹は何も言えなかった。確かに味方の海軍航空隊が帝都を爆撃したのは樹の耳にも入っていたが、詳しい事など知らなかったのは当然だ。

「返して……返して下さいよ……」
「………」
「返して下さいよッ!!」

 ハミルトンの悲痛な叫びに樹はどうする事も出来なかった。ハミルトンは再び泣き出してしまい、樹は近寄ろうとしたがハミルトンに睨まれた。

「貴方方が……貴方方が来るから婚約者は死んだんです。もう……私の前に現れないで下さいッ!!」
「………」

 樹は元の原因はそっちだろと言いたかったが出さずに、ハミルトンに頭を下げて部屋を出た。

「……貴方でも駄目だったか……」
「ピニャ殿……」

 樹が部屋を出るとピニャが待ち構えていた。

「こういう事だったんですね。自分を呼んだのは?」
「気分を害したのであれば謝罪する。だが、これは貴方でしか出来ない事だと思ってな」
「……難しいですね。自分は医師ではないので断定は出来ませんが……時間をかけてやっていくしか無いでしょう」
「……そうか。失礼だがセッツ殿は家族とか亡くされた経験とかは?」
「残念ですが両親は健在です。まぁ……似たようなものであれば、戦友が異国の空で多く散りました」
「………」

 樹は支那事変の事を思い出していた。支那事変では樹は九六式艦上戦闘機に乗って敵戦闘機を撃墜したが、戦友も撃墜され失っていた。

「……今日は帰ります。またいずれ来ます」
「そうか、送っていこう」
「恐縮です」

 流石に一人で帰れば、事情を知らない帝国側に捕縛される危険性があった。その日は翡翠宮に戻った樹であるが、太田大佐に説明をして時間の許す限りピニャの館へ赴きハミルトンと面会していた。
 ハミルトンも最初は心を閉ざしていた。樹は無理に話そうとせず、面会終了までに無言でおり時間が来ればハミルトンに頭を下げて部屋を出ていっていた。
 その行為が数日続いたが、そこで日本は驚くべき情報を入手した。

「モルト皇帝が病に倒れて皇太子のゾルザルが実権を握っただと?」
「は、ピニャ殿下の使者からの報告ですが……」
「確かゾルザルはあまり良くない話を聞くな」
「はい、拉致事件の主犯核と目されています」
「……太田隊長、至急今村司令官に報告をしてほしい」
「判りました」

 翡翠宮から発信された電文は直ぐに特地方面軍に届けられた。

「司令官……」
「……よし、念のためだ。部隊を出撃させる」
「ではどの部隊にしますか?」
「加茂の戦車部隊とイタリカで演習中の第三八師団、健軍大佐の挺進隊を出撃させる」

 健軍大佐の挺進隊は陸海で集められた精鋭の落下傘部隊である。
 各兵士の銃はベ式機関短銃に定められている。後に百式機関短銃に代わるがそれは先の話である。

「ですが、輸送機が足りません。海軍の零式輸送機は十二機しかありません」
「代わりがある。爆撃機があるだろう」
「爆撃機を輸送機代わりにですか?」
「戦いは常に臨機応変でなければならんよ。地図や書類でにらめっこするより現場に出て知る必要がある」

 今村はそう言った。兎も角、アルヌスの丘では加茂の戦車部隊、第三八師団、挺進隊はイタリカへ向かいそこで帝都からの指示を待つ事になった。
 なお、イタリカには協議して航空基地が設営中だった。設営中だと言っても滑走路や格納庫等は完成しており、対空陣地の設営がまだだったのだ。
 また、加茂の戦車部隊には新しい自走砲があった。旧式の三八式十五サンチ榴弾砲を搭載した試作十五サンチ自走砲ホロがいた。
 このホロは史実のフィリピン戦線のクラークマルコット飛行場の戦闘にて活躍した四式十五サンチ自走砲ホロだった。
 陸軍がリサイクルとした形で完成した車両を特地に移送していたのだ。
 このホロは後に特地で大活躍をするのであった。





 
 

 
後書き
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