八条学園怪異譚
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第四十七話 洋館ではその五
「実際ここはいい」
「居心地がいい国だね」
「妖怪に親しみがある国民だからな」
「特にこの学園は素晴らしい」
「最近この研究室には来てなかったがな」
今日は来ているとだ、博士も言う。
「今日は久しぶりに来ておったのじゃ」
「そうして会えたのね」
「たまたまにしても」
「うむ、そうなるのう」
その通りだとだ、博士も二人に答える。そのうえで二人にそのハリウッドの定番妖怪達について話すのだった。
「あとこの四人は悪い者達ではないからな」
「血を吸ったりはしないんですね」
「あと人を襲ったりとかは」
「私は人の血は吸わない」
吸血鬼であるドラキュラからの言葉である。
「スッポンやマムシの血だ」
「それってかなり精がつきそうね」
「夜寝られない位ね」
「ははは、確かにな」
ドラキュラは二人のツッコミに笑って返す。
「それで最近はトマトや苺のジュースにしている」
「そっちを飲んでるのね」
「菜食系なのね」
「そうだ、あと吸血鬼とはいってもだ」
確かに吸血鬼だがそれでもだというのだ。
「日光は好きではないが平気で大蒜や十字架、聖水に銀もだ」
「どれも平気?」
「そうなのね」
「あれはハリウッドや一部の吸血鬼の話でだ」
今ここにいるドラキュラはというのだ。
「私は平気だ」
「僕も銀の銃弾だけが苦手じゃないからね」
狼男も言って来る。
「あとそもそも狼は人を食べないから」
「ああ、ニホンオオカミがそうよね」
「人間食べないわよね」
「そうだよ、僕は鶏肉が好きだよ」
それがこの狼男の好物だというのだ。
「食べる量は多いけれどね」
「そこもハリウッドとは違うのね」
「あと伝承と」
「そうだ、わしもだ」
今度はフランケンがいる、これで顔を自由自在に変えられる少年がいればそのまま何処かの有名漫画になる。
「全く違うぞ」
「どう違うの?」
「わしはそもそもフランケンシュタインという名前ではない」
こう愛実に話すのだった。
「わしはモンスターと言った」
「それがあんたの名前だったのね」
「そうじゃ、フランケンシュタインとはわしを生み出した博士の名前だ」
「そうなのね」
「最近忘れられておるがな」
「小説だとね」
ここで聖花が愛実に話す。
「この人最後は何処かに去っていくのよ」
「北の彼方にな」
フランケンシュタインもこう聖花に応える。
「そうだったな」
「史実でも開発されてたっていう話があったわよね」
「あの小説はそこから生まれた」
チューリンゲン大学の博士が人造人間を生み出そうとしていたのだ、ただ博士が残している日記はいよいよという場面で中断されている。
「実はわしはその時に生まれたのだ」
「博士はどうなったの?」
「さて」
フランケンシュタインは愛実の質問に首を傾げさせて返した。
「覚えておらん」
「そうなのね」
「別に殺したりはしていないがな」
尚小説でも博士は最後まで生きている、少なくともそうした版がある。
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