八条学園怪異譚
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第四十七話 洋館ではその三
「最悪だったわ」
「そうみたいね、それじゃあそんな奴にはね」
「絶対に付き合うなっていうのね」
「そうしなさいね、愛実ちゃんだったら絶対にいい人が来るから」
そしてその相手とだというのだ。
「その人と一緒になってね」
「わかったわ、じゃあ」
「そういうことでね、それでね」
「それで?」
「有り難うね、本当に」
お礼だった、ここで言ったのは。
「ワッペン付けてくれてね」
「だからいいのよ、そういうことはね」
遠慮するなというのだ。
「別にね」
「そうなのね」
「うん、ところでこのワッペン猫ちゃんだけれど」
「それがどうかしたの?」
「いや、私の家には犬がいるけれど」
チロのことだ、いつも可愛がっている柴犬である。
「それでも猫ちゃんもいいわよね」
「うん、うちの家族皆猫好きでね」
「飼ってるのね」
「何匹もね。中には黒猫もいてね」
「商売にいいわね」
関西、特に大阪では黒猫はお客を招く存在として人気がある。佐賀では化け猫として忌み嫌われているがそこは全く違うのだ。
「いい子いるわね」
「うちの家は普通の公務員の家よ」
「じゃあ商売は関係ないわね」
「それでもね、やっぱり猫がいる家はね」
「いいわよね」
「うちの学校も犬猫ランド、動物園の中に一杯いるけれどね」
その猫達がだというのだ。
「何か洋館には黒猫、あと黒犬がいるわよね」
「洋館?あっ、大学の喫茶店の」
「その一つのね」
八条学園には喫茶店が幾つかある、そのうちの一つだというのだ。
「洋館にね」
「そういえばあの洋館も」
「結構雰囲気があるでしょ」
「かなりね」
「妖怪が出そうな」
「それも西洋の」
話はこうしたものになった、愛実が聖花と一緒に探している泉の話だ。しかしそれは今話しているクラスメイトの娘は知らず自然に話している。
そしてだ、クラスメイトの娘は言うのだ。
「ああいう場所に幽霊がいたりとかね」
「向こうのホラー映画じゃあるわよね」
「そう、だからね」
それでだとだ、愛実に話すのだった。
「あそこに行くとひょっとしたらね」
「何かあるのね」
「あると思うわ」
こう言うのである。
「白い服の幽霊とかね」
「本当にあっちの幽霊ね」
「あそこにそうした話があったかしら」
クラスメイトの娘は言いながら首を傾げさせる。
「そこまでは知らないけれど」
「面白そうね、あそこに行ったら」
「それはね」
そんな話を二人でしたのだった、そしてその後だった。
愛実は聖花のところに行ってその喫茶店のことを話したのだった。
「ねえ、柳道と桜に行く前にね」
「他の場所二行くの?」
「うん、さっき聞いたけれどね」
ここで喫茶店のことを話す、そして聖花に問うたのである。
「あそこに行く?」
「洋館を喫茶店にしたあそこね」
「そう、大学のところにあるね」
「確かに如何にもって感じね」
聖花はその喫茶店を見たことがある、それでその姿を思い出しつつ言うのだった。
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