弾幕ストレート魔理沙
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試作
前書き
いつぞや書いた初めての二次創作です。
「氷符”アイシクルフォール”」
チルノの放った氷弾は魔理沙の服をかすめる。状況は一向に好転しない。未だチルノは余裕の表情だ。なんせまだ一枚目のスペルカードだから。魔理沙はもう一度ポケットの中身を確認してみてもやっぱり無い、ミニ八卦炉が………
「くそう、八卦炉さえあればこんな妖精なんて…おわ!!」
悪態づく暇もなく左右から横殴りの雨のように氷弾が降ってくる。チルノ自身も弾幕を撃っているため正面に行くこともできない。
最初の通常弾幕は何とかタイムアウトまで避け続けられたが、このままでは体力が持たない、なんせ今は空を飛ぶことができないのだった。
異変の起こっていない平和な幻想卿の朝、魔法の森にある小さな家の中で魔理沙はいつも通りに本を読みながら新しいスペルカードを作っていた。しかしどうもミニ八卦炉の調子が悪く、どれだけ弄っても直らないから仕方無しに香霖堂に行って、森近霖之助にミニ八卦路を預けた。暇だから適当に店の商品を物色していると突然紫のスキマに飲み込まれた。
そこで一度記憶が途切れている。
気付くと暗い竹林の中で倒れていた魔理沙はとりあえず周辺を探索することにした。その時に魔理沙は気付いた。箒にまたがっても空が飛べない…
「なんでだ?いや…何処なんだよここは?」
永遠亭に行く時に通るあの竹林とは雰囲気がまるで違う、もしかしたらここは幻想卿ですらないのかもしれない。
手がかりの無い今、迂闊に歩き回るのは危険だな、ふぅ一体あのスキマ妖怪は一体何を企んでいるんだ?私をいきなりこんな場所にスキマ送りにしやがって…
そう考えていたら歌声が聞こえてきた。
「キラキラ~ダイヤモンド~あたいは~最強だもん~」
あぁチルノか。でもまぁ今は一人でいるよりかは数倍マシだな。
「お~いチルノ~」
声をかけると案の定、氷の妖精チルノがてくてくと一人で歩いていた。
「あ!魔理沙だ~…よしっ今日こそ決着をつけてやるぅ!!」
あれ?何だこいつ…今の状況が分かってないのか?
「落ち着けよ、チルノ、決着は置いといてだ、チルノはどうしてここに居るんだ?」
もしチルノが紫にスキマ送りにされていないのならここは幻想卿のはず、ただ空が飛べないことについてはまったく分からない、もしかして新しい異変なのか?
「ふっふーん、その手には乗らないよ魔理沙、あたいが怖いから話を逸らそうとしてるんでしょ?」
「いや違う、っておい!止めろ!!」
チルノはもう魔理沙の言葉を聞いていなかった。両手を広げて放射状に複数の氷弾をばら撒いた。
「たくっ!厄介ごとが次から次へと…」
さっさと墜としてやるか……ん?あれ・・・
「八卦路を香霖堂に忘れたー!!」
なんてこった、ミニ八卦路が無いとまともなスペカが使えねぇぞ!特にマスタースパークなんか暴発して自爆しかねない。
「くそっ、ならこれでどうだ!”マジックミサイル”」
氷弾の隙間を縫うように右、左と避けながら左右にビットを発現させて二つの緑色の光弾を放つ。それらはまっすぐチルノに向かって飛んでいく。
しかし・・・
「甘いよ!」
チルノの前で二つの光弾が凍り付いて砕け散る。以前、夜桜の散る場所で散々手こずったあの弾幕を氷結させる能力だ。
厄介だぜ、星屑系は凍らされちまう。かといってレーザーは出力不足でイリュージョンレーザーが単発で撃てるぐらいか。 普段ミニ八卦路に頼りすぎていたせいか今の魔理沙には強力な魔法が…スペルカードが何一つ使えなかった。
「魔理沙が苦戦してるわ、やっぱりあたいったら最強ね!」
チルノは魔理沙が一度しか反撃してこないから調子に乗ってホーミング弾と固定弾を同時に放つ。
魔理沙は元々当たらない固定弾を無視して真後ろにジャンプした、するとホーミング弾が魔理沙を追いかけるように集まり、一列に重なった。
今だ!
「”イリュージョンレーザー”」
左右のビットを手前に集中させて一列になった氷弾をレーザーで打ち落とす。良かった、チルノがレーザーは凍らせられないことを覚えていて。
でも肝心のチルノにはレーザーはかすりもせずに通り過ぎた。
「やるじゃん魔理沙、ならこれはどう?氷符”アイシクルフォール”」
余裕の表情でチルノはスペルカードを取り出した。ここで冒頭に戻る。
「それそれそれそれ~!」
チルノの放つ氷弾は一度左右に広がり、そして横から挟み込むように襲ってくる。初めて対処したときはチルノの目の前のスペースが氷弾がかすりもせず、がら空きだったんだが今では学習したのかチルノは通常弾幕を五つほど放っていて近づくことができない。
弾幕は火力(パワー)だぜ、頭を使うのは得意じゃないんだが…今は考えて戦う時だな。
「天儀”オーレリーズソーラーシステム”発動」
魔理沙は自分の前と後ろにさらに二つのビットを発現させた。そして合計四つのビットが魔理沙の周囲を浮遊して魔理沙に直撃する氷弾だけにぶつけて打ち落としていく、それでも複数の氷弾が魔理沙の服をかすめていき、切り傷が増えていく、さらにチルノは狙ってはいないのだろうが、氷弾で周囲の気温を下げていた。そのせいで、ただでさえ走り続けている魔理沙の体力を容赦なく奪っていく。
「魔理沙避けてばっかりじゃん!!つまんない~、もう、しかも全然当たんないし!ならこれよ…雪符”ダイヤモンドブリザード”」
チルノは苛立ってきたのか、弾幕の量を一気に増やした。チルノの周囲で小さな爆発を起こしながら無数の氷弾を生み出していく、そして魔理沙とチルノの視界が完璧に氷弾幕で埋め尽くされた。
避けるにも隙間など無い、不可避弾幕だった。
さらに魔理沙は体力をひどく消耗していて、射程範囲から逃げようにも氷弾の数が多すぎて逃げ切れない。
チルノは自分の勝利を確信した。
なのに、魔理沙は笑っていた。
「詰めが甘いぜ、チルノ」
魔理沙の立っていた位置の氷弾が弾ける。隙間が無いなら作ればいい、魔理沙はビットを一点に集中させて何とか通れるだけの穴を作ったのだろう。
チルノは、それを見越していたのだが。
「あたいは天才なんだから」
チルノは弾けた氷弾の位置に撃てるだけの通常弾幕を放った。先程の氷弾は囮、本命は魔理沙の逃げ道を一ヶ所に限定させて、そこを狙った通常弾幕だった。
作戦は完璧だった。
だからこそ気づくのが遅れてしまった。目の前にレーザーが迫っていることに。
「え?」
ピチュ――――――――――――――――ン
「はぁ、はぁ、どうだ…私の…渾身の一発………は…」
レーザーは地面にうつ伏せになった状態で魔理沙が放っていた。
魔理沙が氷弾に囲まれた瞬間、ビットを目の前に集中させて”コールドインフェルノ”を使い、その場に固定させて氷弾を砕いた。さらに足元にマジックミサイルを放ち、その反動と爆発を利用して後ろに飛んで、射程範囲から逃れていた。
魔理沙はチルノの考えを読んでいて、あえてその裏をかき、穴の開いた位置から離れた場所でイリュージョンレーザーを放ったのだ。チルノは自分で撒いた弾幕のせいで魔理沙の姿が見えなくなっていたため、気づけなかった。
「あ~~いってぇぇ~~~」
魔理沙は立ち上がると身体のあちこちが軋むように痛んだ、これじゃすぐ走ったり出来ないな。
「いった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!!!!」
ぱっぱっと帽子の土埃を落としていると、後ろからそんな声が聞こえた。
ってまさか……
「あたいっふっか―――――っつ!!」
チルノは両手を広げ、天に向かって叫んだ。思えばその時に撃てば良かったんだけど、魔理沙は呆気にとられてしまっていた。
「何でだよ、直撃したはずだぜ……」
「魔理沙のレーザーを受けて平気なあたいってやっぱり最強ね!」
「嘘だろ……」
魔理沙は満身創痍なのに。
「さーて、よくもさっきはレーザー食らわせてくれたね、これで魔理沙を墜としてみせる!!」
チルノが声高に宣言した瞬間、大きめの氷弾が大量に放たれる、だが魔理沙には当たる弾は一発も無い。
「凍符”パーフェクトフリーズ”」
魔理沙の周囲に放たれた氷弾は一定の位置でピタリと止まった。
どうくるかは知っている。周囲を氷で囲い逃げ道を限定させてからレーザーで止めを刺す。
チルノの持つ中で最強のスペルカードだ。
そして今の魔理沙には立っている事がやっとだ、さっきのような無茶ももう出来そうに無い。避ける事はもう無理だろう。
「まさか…チルノにやられる日がくるとはな……」
―あきらめるのかい?あたしはそんな風にアンタに稽古つけた覚えは無いよ―
脳裏に緑色の髪をした悪霊、魅魔様の声が響く。
…………あきらめる?
―アンタは持ってるだろう?とっておきの恋の魔法を―
目の前にはチルノのレーザーが迫る。
でも、ミニ八卦路が無いと……
―忘れたのかい?特訓しただろう?幽香にやられてあたしに泣きついてきた時にさ……―
幽香、夢幻館に住んでいて初めて戦ったときに長極太レーザーで墜とされて、逃げ帰った相手だ。やられてしまったが、あの極太レーザーが忘れられずに何度も魅魔様の特訓の下で練習したけど結局ミニ八卦路を手にするときまで一度も放つことが出来なかった。さらに特訓している間に霊夢が幽香を倒していて、あの時の自分の無力さが情けなく辛かった。
でも、あの特訓があったからこそ、今は霊夢に追いつくことが出来るんだ……
……そうだ、私の恋の魔砲は、マスタースパークだけじゃない、あの時に必死で習得した……あの魔砲がある………
両足に力を込め、両手を前方に突き出し、まっすぐチルノを睨みつける。
見せてやる、私だけの、誰の真似でもない、霧雨魔理沙のマホウを!
「喰らえぇぇぇえええええええええ!ナァロォォォォォォォォッッ……スパァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァック!!!」
チルノの放ったレーザーが魔理沙に届く寸前、光り輝く一閃のレーザーが白く焼き、塗りつぶす。さらにその閃光は辺りの氷を砕き、チルノへと向かい、そして………
ピチュ―――――――――――――――――――――――――ン
二度目のチルノの墜ちる音が辺りに響いた。
まったく、何なんだぜ……チルノはどこかに消えちまったし、身体中痛いし、未だにここが何処か分からんし……とりあえずは……
「寝る」
寝て忘れることにした。
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「っていう夢をみたんだぜ」
「アンタは楽しそうでいいわねぇ」
「霊夢は夢を見ないのか?」
「………賽銭箱が一杯になった夢なら見た」
「はは、霊夢らしいな」
ある晴れた平和な幻想卿の朝、博麗神社はやっぱり平和だった。
後書き
少しでも気に入っていただけたら続編を書きます。
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