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蘇生してチート手に入れたのに執事になりました

作者:風林火山
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過去が未来を壊さないで下さい

「本当に・・・・どうしちゃったの・・・真・・・・。」
「・・・・・・・・・」
「おい、どうしたんだよ、真さん!」
「そうだぜ!いつだってアンタは俺らを引っ張ってくれたリーダーじゃないですか!」
「麗さんになんてことを言ってるんですか!」
「・・・・真さん・・・!」
「おぉい!真さんっツ!」
麗の信じられない、という風な声、明の無言、それに続いて、SP達の悲痛な叫びが、大アリーナを満たす。
しかし、真は・・・
「だってよ、隊長。で、今は・・・・」
「・・・・今はその元恋人とやらの・・・・・・麗をどう思ってるんだ?」
「おい!てめぇひとが一番言いたいこととんなよっつ!おめぇいつも無口なくせにこういうときだけでしゃばりやがって!」
「麗?確かに昔、麗は俺の恋人だった。しかし、今は抹殺する対象。全く愛情も、憎しみすらも、一切の感情を感じていない。俺はただ、若菜麗を、」
その先を言うな・・・・と宏助は心の中で願う。だが、その言葉は止まらない。
「麗は俺が殺す。」
「総長、アンタなんてことを!」
「ふざけないで下さい!麗さんは貴方を!」
「そうだぜ!アンタ一体どうしたんだよ!」
SPからの非難の嵐。しかし・・・・、
「ピーピーピーピーうるせぇな。雑魚供が。」
「・・・・・同意。力なきものには発言権すら与えられない。」
「さぁ、そろそろ、仕事を始めよう。時間も少ない。」
そろそろ動きはじめそうな相手に宏助も一応は身構える。
しかし・・・・
「・・・・・・。」
麗の表情が暗く、他のSPの士気も動揺していて低い。そもそも相手はおそらく宏助レベル。彼らでは相手に出来るはずも無い。
(だからって・・・・・俺ひとりで相手に出来る人数でも実力でもねぇだろ。)
前に多少手こずった有馬と、それと同レベルのような奴一人。そして、あの三人の中で最も強そうな真。
これでははなから勝負にならない。
そんな悪い方向にしか考えが浮かばない宏助の前に・・・・・
「ちょっと待ってください。」
「・・・・・・・!」
なんと明が立ちはだかる。
「私は少し、真さんに言いたいことがあります。」
「なんだ?この嬢ちゃん偉く強気じゃねぇか。」
「・・・・・時間が無い・・・・・。」
「分かってる。我々には時間が無い。貴方も当然抹殺する対象なのだが・・・・。」
「貴方は私達にとっては過去です。過去は話さず、さっさと消えてください。」
「・・・・なっつ!」
そう言われた瞬間、真の虚ろだった目が光、驚きと怒りの表情に変わる。
「てめぇ、俺らの長になんてことを!」
「・・・・・同意見。」
死神の強い口調にびびらず、更に明は続ける。
「貴方は私達を殺すと言いました。それは私達の未来を奪うこと。でも、貴方は過去。現在ではない貴方には、未来を奪う権利、いや、ここに立つ権利もありません・・・・だから・・・・」
その言葉に更に真が触発され、真が身を前に出す。
「・・・抹殺するっツ!」
「過去が未来を壊さないで下さいッツ!」
二人の叫びが重なり合い、臨界点に達する。
真の拳が突如、光だし、人外の力を持って、すさまじい速度で、その拳が明に繰り出され・・・・、
「ウオッォオおっぉおおぉぉぉぉおぉぉぉぉぉ!」
宏助が覇気と共に、思い切り、怒り、周りが見えていない真を殴りつけた。
「・・・ぐはぁっつ!」
そのまま真は、思い切り後ろの壁に飛んでゆく。
「総長っつ!」
「・・・・・・これが・・・・伊島宏助・・・・。」
二人の死神から一気に殺意が漏れ出すが、このさい気にしない。
「ふぅう。全く、迷惑な奴だ。」
「過去ほど迷惑なものはないです。思い出したくないと忘れるのに、突然フワっと出てきて本人を苦しめる。でも、過去は確かに必要です。同じ過ちを繰り返さないために。ただし、それはそれで、過去が勝手に本人の全てを奪っていくときもある。過去とはその本人の意思の持ちようで、強くなる道にも、弱くなる道にも転がる諸刃の刃。しかし、私と麗はその一歩を前へと踏み出した!もう過去が私達の前に現れることは無いはずです!過去は過去!未来は未来!貴方はここにはいてはいけない存在なんです!私のためにも、麗のためにも、ここにいる多くのSPの方々のためにも!」
「・・・・!」
『オオオオおお!』
麗が無言で感銘を受けたように小さく頷き、それにSP達の騒がしい同意が続く。
「てめぇら。調子に乗らせておけば・・・・。」
「ここは・・・・・やるしかない。」
「ああ・・・そうだな。気にいらねぇが。」
「それは・・・・・お互い様。」
死神二人が何か話し合っていたかと思うと、自分の持っている武器を突然掲げる。
「・・・・!?」
宏助は少し首を傾げる。しかし、既にこちらは攻撃体制だ。
「SP分析班は離れて指示だしっツ!戦闘班は三手に別れ、右翼、左翼、正面から叩くっツ!いいか、相手は死神、侮るなっつ!」
『おおおおお!』
麗が驚くべき立ち直りの早さで、迅速な指示出しを行う。
「主に、射撃で敵を狙え!接近戦を仕掛けるな!あの武器は何か特殊なものだっつ!」
「よくわかってるじゃねぇか。流石は長の、元恋人。」
「・・・・・やろう。」
「分かってるよ。」
「全員配置につけぇ!用意の合図で一斉射撃っツ!」
ガチャガチャガチャ
全員がいつも身に付けている拳銃を出し、射撃体勢に入る。宏助はとりあえず、
(あの射撃で奴らがくたばるとは思わない。真もさっきの拳ではまだダウンは厳しい。と、なるとやはり射撃で相手が怯んだタイミングで出るしかないな。)
そんな心構えで、その射撃の様子を見守ろうとした宏助だが・・・・
「チッ!舐めてやがるのか。俺らに向けて、合図ありの一斉射撃だと?」
「・・・・・・・同意見。」
「てめぇはちゃんとしゃべれ!」
こんな構えられているのに余裕な二人を見て宏助は悟る。
「一斉射撃っツ!」
「疾風迅雷っツ!」
「・・・・・灼熱炎獄・・・・。」
「みんな、ふせろぉぉぉぉオオオオオオ!」
まずは、麗の号令と、銃声がほぼ同タイミング。拳銃から放たれた多くの弾丸が、二人に向かって行く。
そして、SP達が二発目を撃つよりも早く、二人の死神がかかげた武器から異様なもの、とてつもない量の炎と風が飛び出す。
有馬の方からは、目に見えるほどの風。もう片方からは多くの炎。
どちらも至近距離にいなくとも、はっきりと感じられるほどのもの。
更に、その炎と風は互いに混じりもせず、消しあいもせず、ただSPの方向に分散して広がる。
そこで宏助。なんとか叫び、炎と風の中に思い切りの蹴りを放とうとして、
その脚を真に掴まれる。
真の拳が迫ってきて・・・・・、
とてつもない轟音とともに、真のいつの間にか光っている拳と、炎と風が宏助の視界を埋め尽くす。
だが、絶対に・・・・、
「誰も死なせるかァァ!」
真の拳に吹き飛ばされるのとほぼ同時に、宏助は、思い切り、両拳を振るう。
しかし、真の拳を防ぎにではない。
そんなことをしていても全く間に合わない。
宏助はその拳を、SPと麗と明に向かって繰り出した。
「らぁっつ!」
『うわぁぁあああああ!』
明と麗とSPを含む全員がその拳の風圧で吹き飛ばされる。
しかし、距離が離れているここからでは、さして強い訳ではない。
それを確認した後に、宏助は思い切り吹き飛ばされる。
しかし、今のところの図式はこうだ。
・宏助ー吹き飛ばされてアリーナの入り口付近の壁に激突
・明と麗とSP達ー宏助とは反対側の壁に倒れてる
・真ー宏助に向かって更なる攻撃をしようとしている
・死神二人ー宏助の拳によって炎と風が消され、多少呆然としている
それを瞬時に確認した宏助は素早く起き上がる。
が・・・・
「・・・・・っツ!」
突如、先程殴られた右肩に違和感。全く力が入らない。が、さして目だった外傷がある訳でもない。
(どういうことだ・・・?)
気になるのは先程から光る真の拳。あれは最早、拳自体が発光している。
「聖気の威力が効いて来たようだな。これで仕舞いだ・・・・・乱聖火!」
すでに宏助の正面に立っていた真の両手が光り、そこから多くの光の玉が宏助に飛んでくる。
(これはマズイっツ!)
おそらく、この光の玉を宏助は避けきれない。 
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