ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第53話 活力を胸に、気合十分です!
そして、まるで追いやられる様に、2人はそそくさとレストランから外へと出て行った。
このリストランテの街並み。十分綺麗であり、並木の間を2人で通るのなんて、とてもデートっぽくて、凄く嬉しい。
でも、それはこの層に来た最初に味わった事で、今レイナはゲンナリとしていた。
「あーあ……こんなのってないよ……」
はぁ……、っとレイナはため息を吐いていた。
幸せが逃げてしまうと言う事を聞いた事があるけど、吐かずにはいられない乙女のため息だった。何よりもこの店の雰囲気も。とても良いし、十分にムードもあって、最高の場面。そして、リュウキの感じもいつもと違ってて、チャンスの到来だとも思える。
だからこそ、レイナはいっそ自分の想いを言っちゃえ……っとも思えたんだ。
だけど、本当にそんな勇気があったか? と訊かれたら、素直にうんとは言えない。
「だよね……。無理だよね……。私だってさすがに……いきなりのって……」
実を言うと、レイナ自身も、完全に心の準備が出来てないようだった。リュウキの事を想っているんだけれど。いざ言おうとすると、やっぱり、恥ずかしいから。
「………大丈夫か?」
レイナは、リュウキが傍にいるのをすっかり忘れてたから、リュウキの言葉に更に動揺してしまった。
「わわっ!!!」
突然の事だったから、レイナは飛び跳ねるような思いだった。
「………はは」
リュウキは、そのレイナを見て笑っていた。
「……レイナ、ありがとう。……正直、最後のは驚いたが、今日は来て良かった。楽しかったよ」
レイナに礼をそう言うリュウキ。その顔を見て、レイナも微笑む。
(今日のところは……リュウキ君の笑顔を見れたし……十分かな……これ以上は欲張りな気がするよ……)
レイナは顔を赤らめながらそう思っていた。かなりライバルがいる(名前はわからないけど)このリュウキ。それに、滅多に会えないリュウキに会えた。更にその上に、お礼まで言われたんだ。
「私も……楽しかった。こちらこそ、ありがとう。寧ろお礼は私の方だよ? 無理言って頼んだのは私なんだし……」
レイナは苦笑いをしながらそう言った。最初はリュウキは何処かに行こうとしていた所を、呼び止めたのだから。
「………そうか? オレは別に無理と思ってないし、それに、その程度だったら、礼には及ばないのだが……」
リュウキは、不思議そうにそう言う。そんなリュウキを見て、レイナは もう少し頑張ってみようと思えた。今日も、頑張りすぎたと思うけど、もう少しだけ、。少し……あとほんの少しだけ。
(―――……勇気をだしてっ!)
レイナは、ぎゅっ と両の拳を握り締めながら。
「あの……リュウキ君」
「ん?」
レイナは、リュウキを……真っ直ぐ見つめる。今回は、たとえ恥ずかしくたって、レイナは決して目を背けたりしない。ただ、真っ直ぐにその瞳を見つめた。
「そのっ……登録……してくれないかな……? フレンド登録……。また、あ……会いたい……からっ」
本当にリュウキを真っ直ぐ、その目を見て。普段の様に決して逸らさない。赤くなったって……もう問題ない。次が何時になるのか、判らないんだから。今しかないかもしれないんだから。
(だって……)
レイナは、リュウキの目を見て心の中で叫んだ。
『彼が好きだから、好きになっちゃったからっ!』
心で叫んだあと、レイナはこれまでの事を思い出した。
『お姉ちゃんと仲直りすることが出来た切っ掛けはリュウキ君の言葉だった』
思い返すのは、初めて出会ったあの時の事。
『それに……あのボスの攻略の時。……何度も助けてくれた。お姉ちゃん共々助けてくれた。……中には厳しい時もあったけれど。鈍感……年頃の男の子の感性を持ってないって思ったけれど。彼は実は凄くやさしいんだってことも、判った』
第1層の頃の自分は、このゲームの初心者で、そしてリュウキはその頃からとても強くて、助けてくれた。……そして、その優しさにも触れる事が出来た。
だから、レイナは、この頃から徐々に変わっていったんだと、自分では思えた。
『……それに気がついたら、私 彼の方ばかり見ていた。目で追っていた。彼と少しでも話せたら、その日は穏やかでいられた。気持ちが弾んだ。だから、彼が直ぐに消えるようにいなくなるのは、毎回……悲しさが出ていた。ギルドに入ったからあまり、会議の時とかで勝手な事は出来ないから……。
多分もうその時には、私の心は定まっていたんだと思う。だから、空いた時間で、彼のこと……必死に調べた。アルゴさんにも聞いたり、いろんな層を回ったり。お姉ちゃんに違う理由つけて回ったり。だから、今日、会えた事。本気で嬉しかった。この世界に来て……【良かった。】と思えるほどにだから』
そもそもレイナの事をアスナが判ってない訳もないから、ただ笑っていたのだった。
そしてそのリュウキからの返答。時間にして数秒後だったが……体感時間は信じられないほど長かった。その答えは。
「ああ、構わない」
リュウキはOKの一言だった。間を開けず、即答だった。だからこそ、レイナは顔を赤らめ、目を輝かせ。
「ほんとっ!?」
レイナはリュウキとの距離を縮めた。凄く速い速度だ。
「……オレは嘘はいわない」
リュウキは少し仰け反りながらそう返した。そして、リュウキはレイナ同様に真っ直ぐに見つめて。
「……今日はさ。オレも楽しいと思えたから。なんだろうな……、こんな気持ちは初めてかもしれない。……きっと此処に、SAOの世界に来て以来、こんな気持ちになったのは、レイナが初めてなのかもしれない……かな」
リュウキはそう言い終えると、レイナに笑いかけた。
「ッッ!!」
レイナはその言葉を聞いて、心臓は跳ね上がる。脈打つどころじゃない。まるで 爆発したかの様に思えた。
(―――これって……私のこと……好きになって?)
心臓の次は、顔が一気に爆発寸前まで体温が高まる。が、直ぐに冷却をする様に考えを改めた。
(って! そんなわけないっ、わけない! だって、あのリュウキ君だよ?? 自分に都合がいいように変換しすぎだよっ!!)
本当に自分に都合の良すぎる! っと頭の中の想像をブンブン消す。打ち消しつつ、そう言ってくれたリュウキの事を改めて想った。
純粋に嬉しかったから。
「リュウキ君っ、……ありがとう/// わたし……、わたし、……嬉しい。とても嬉しいよ」
レイナは、にこりと笑った。その目には涙が溢れているようだった。
「…………っ」
リュウキはそこまで喜ばれるとは思っていなかったんだ。 なんでだろう、と思う程に。
そして、何か、暖かい何かを感じた。
(心が……)
リュウキは一瞬綻んだ。
それと同時に……、心から何かが湧き上がってくるようだった。
そして……その後フレンド登録を無事に問題なく終えれた。
レイナは、最後の一瞬まで気が抜けない、と気合を込めていた。……そして、時間。ギルドの用事が出来たし、リュウキにも、誰かからメッセージが来たようで、どうやら同じく用事が出来たみたいだった。
本当に、間違いなくどんな宝石より、貴重な時間だった。とレイナは思えた。
「今日は、本当にありがとね…? リュウキ君。良かったら……今度はまた、パーティを組んでくれないかな……? 私、強くなったって 見てもらいたいから……」
レイナは、リュウキにそう言っていた。
「そうだな。……構わない。空いた時にでも……な」
リュウキは、メニューウインドウを確認しつつ返事を返した。
「あ……ありがとうっ///」
レイナは満面の笑みだ。そして、同じ様にウインドウを消すと。リュウキはレイナの方を見て。
「それじゃあ……またな。レイナ」
リュウキの再開を意味を示すその言葉。過剰反応だって思われるかもだけれど、本当に嬉しい。
「う、うんっ! またねっ!」
だから、レイナもそう返した。また会えるんだって。リュウキを見つけるのは凄く難しいんだけれど、いつでも会える……かもしれないって思えて。
「あっ……フレンド登録だったら、キリト君に聞いたら早かったかな?あ……でも、そう簡単には教えてくれないか……。それに……今日のが嬉しかったし……いいかな……」
レイナは笑う。そして、背筋を ピンッと伸ばし。
「うんっ! 今日もギルドの事……攻略だって! 全部がんばるぞー! お姉ちゃんに負けないようにっ!!」
レイナは、気合十分だ。
そのまま、本部グランザムへと戻って行ったのだった。
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