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チートだと思ったら・・・・・・

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二十一話

「何だか何時もと様子が違う!?」

「皆! 手ぇ離すなよ!」

カシオペアの起動、それは上手くいった。だが、起動後の様子がこれまでとは明らかに違っていた。身を無理やり捻じる様な圧迫感。普通では絶対に経験できない様なそれを受けながら、ネギパーティは過去へと旅立った。



「それじゃあ、作戦会議といこうぜ」

普段とは違った起動をしながらも、カシオペアはしっかりと一週間前にパーティを飛ばし、その役目をはたしてくれた。上空数十メートルに突然出現したり、ネギが魔力を使い果たして倒れるなどのアクシデントはあったものの、今のところは順調だと言えよう。

「まず、兄貴が魔法先生に聞いた情報を整理してくぜ」

ネギパーティは頭の良い者が何人かいる。だが、彼女等は所詮軍師に向いてるとは言い難く、また魔法に関わって日が浅いため知識も乏しい。夕映などは素養があるかもしれないが、後述の理由が当てはまるためこの時においてはその役に立つことはできない。
そのため、消去法で魔法に関して広い知識を持ち、また短慮さはあれど企み事にに長けているカモが自然と中心となって話を進めることとなる。

「ようは六つの拠点の内一つでも守り切れば俺達の勝ちだ。だが、そう話が上手くいくわけがねぇ」

「数の暴力と言うのは侮れないでござるからな」

戦において手っ取り早く優位に立つには相手より多く兵数を集めることだ。超の用意した戦力は2500体のロボ。麻帆良の魔法使いをかき集めてもこの数の1/10もいればいい方だ。この戦い、ネギ達の圧倒的不利な状態での苦しいものとなるだろう。

「勝つには攻めるしかねえ。幸い、強制認識魔法を使う術者は拠点の近くにいるはずだ」

「ええ。全世界規模、魔法陣を用いる儀式魔法であることから術者の長時間にわたる儀式と呪文詠唱が不可欠です。また、術者は天井などの遮蔽物の無いある程度開けた場所にいなければなりません。術者……おそらく超さんは発動の数十分前から直径3kmの魔法陣上のどこかに姿を現すと思われます」

カモの言葉をアーティファクトを使って得た知識から夕映が補足していく。皆、既に分かっている。超を止めるには、もうこうするしかないと。

「何処かの拠点を死守してその間に別動体が超を探し出して捕える。これっきゃねえ」

「確かに」

「しかし、3kmでござるか。しかも可能性は六ヶ所……中々厳しいでござるなぁ」

不安があるのも確かだ。3km……瞬動を使えばそうかからず走破できる距離だが今回はただ単純に走るのとはわけが違う。術者がいるのは上空、それもどれほどの高さにいるのかは全く不明。ましてや候補は六つもあるのだ。これは厳しいと言わざるを得ない。

「それについては一応案がある。健二の旦那のアーティファクトだ」

「その手があったか!」

健二のアーティファクト、センリガンは単純な視力強化に加え透視能力まで持っている。何処かに潜む相手を探すにはピッタリの能力だ。

「すまないが、それは無理だ」

「ど、どうして!?」

元々カシオペアの時間跳躍の感覚が苦手だった健二は今回の不安定な時間跳躍をした結果、相当まいっていた。それこそ、魔力が枯渇したネギなんかよりよっぽど酷いのではないかと全員に思われるくらいにだ。だが、それでも呑気に休んでいる場合ではないと椅子に身を預けながらも話は聞いていた。

「この戦い、勝手だが私は参加できない」

「理由は、何ですか?」

問いかけたのは刹那だった。修学旅行で見せた剣軍による面制圧は拠点防衛で大きな力を発揮するだろうし、先ほどカモが上げたとおり健二のアーティファクトはこの作戦では必要だ。だから、何か理由もなく戦線から離れさせるわけにはいかない。

「序盤は問題ない。だが、中盤から終盤にかけては無理だ。俺には、戦うべき敵がいる」

「それは、超さんの?」

「いいや、超鈴音は全く関係ない。勝手、と言ったろう。この敵は、今回の件とは全く別物だ」

「それは何に置いても優先すべきこと、なのでござろうな」

付き合いが短くとも、健二からにじみ出る戦士としての雰囲気が楓に戦線離脱を納得させていた。その敵とやらとの戦いは、超を止める事よりも重要なのだと。

「俺の敵は、強い。そして、奴は俺と戦う事だけが目的だ。俺が奴の前に現れねば、最悪、超に味方する形で介入しかねない」

これは事実だ。だが、それ以上に健二はあの男と皆を会わせたくなかった。それに、この戦いは誰にも見られるわけにはいかない。健二だけで、終わらせねばいけないのだ。

「でもよ、健二の旦那がいないんじゃ……」

作戦の成功率はガクッと落ちる。パーティのブレーンとして、カモが渋るのも無理は無い。

「カモ君」

「兄貴! 目が覚めたのか!?」

「カモ君、健二さんは作戦のメインから外そう」

「で、でもよう!」

「いいんだ、カモ君。それと、作戦について、追加案があるんだ」

貴重な人材である健二を作戦から外すことをネギは選んだ。その考えの中核には、申し訳なさがある。元々、健二がネギと仮契約を結んだのは修学旅行時、事件に巻き込まれ戦略上の都合でのことであって、ネギの従者になる事を了承してのことではない。今日まで特に何も言わず仮契約はそのままだったが、時間跳躍について、健二だけが自覚していたその重さ。それを聞いたネギは自分との仮契約があるから健二はその重さを自分の内に隠して付いて来たのではないかと思ってしまった。
実際はそんな理由ではないし、今回以外にも一度だが健二はカシオペアを使っている。その事に気付けないのはまだ体が本調子になっていないからだろう。なにはともあれ、健二はネギの勘違いによる罪悪感のおかげで最後の戦いへの準備が整ったことになる。



ネギが超のロボット軍団に対抗するための策。それは、雪広コンツェルン主催の最終日イベントを利用し、一般人を戦力として組み込むことだった。非生命型の魔力駆動体を活動停止に追い込むことのできる魔法具。これさえあれば、一般人とて立派な戦力へと早変わりする。
そして、この作戦には魔法使い達にとっても大きな利をもたらす。学生側の強力な力を持つお助けキャラクターとして万全の戦闘力を発揮できるのだ。

「開始の鐘を待たず敵・火星ロボ軍団が奇襲をかけてきました! 麻帆良湖湖岸では既に先端が開かれている模様! さぁ、皆さん準備はいいですか!? それではゲーム、スタート!!」

朝倉のアナウンスが麻帆良中に響き渡り、ついに超との決戦が始まる。既に麻帆良のあちこちで激しい光が上がり、序盤から激しい戦いが繰り広げられているようだ。

「…………」

それをセンリガンで健二は眺めていた。明日菜達が準備に走る間、体を万全にするために充分な休息をとった。

「本番は時間跳躍弾が使われ始めてからだが」

ヒーローユニットである魔法使い達はその内龍宮真名にその弾丸で無力化される。それは、一般人も同じだろう。それまでに、どれだけ数を減らせるか、だ。

「……どうせ、人の多い内はどうにもならんのだ。それなら……」

――俺が出ても構うまい

赤原礼装に身を包み、今宮内健二が戦線に加わる。



「こんの糞ロボットが! くらいやがれぇ!」

――敵を撃て!(ヤクレートゥル)

杖から放たれた一条の光がロボの胸に直撃する。ロボはその活動を停止しその場に倒れ伏した。

「おらおらぁ! 次はどいつだこんちきしょう!」

「いやぁ~、荒れてんなぁ」

「そりゃあ彼女……美砂ちゃんだっけ? が大衆の面前で剥かれちゃあなぁ」

「眼福でしたけどね」

「me too」

「そこぉ! サボってんじゃねえ! つーか何でここらへんはヒーローユニットが来ねえんだよ!」

彼の言には間違いがある。ここいらにもキチンとヒーローユニットはいるのだ。ただ、余り目立った活躍ができないだけで。それも仕方のない事ではある。戦闘能力に秀でた者たちは皆現れた鬼神兵の対処に優先的に回されたため、ロボを相手取る魔法使いの戦力が落ちたのだ。それに加え、ここは特に魔法使いの数が少ないハズレ区域だっただけ。

「おおりゃあ!」

脱げビームを喰らった男が落としたバズーカを拾い上げロボに向けてぶっ放す。狙い良くバズーカの一撃は数体のロボを停止させた。しかし喜ぶのも束の間。空から十数体のロボが一気に降り立った。

「まずっ!?」

バズーカのトリガーを素早く引くものの、残弾数が元々一発しかなかったらしくいくら引いてもカチカチと虚しく音を発するだけ。それではポケットから杖を抜いてと逡巡するものの、この数をさばくのは無理だと結論をだす。

「……ちっ」

既に脱げビームが放たれるまで秒読み段階。こうなってはどうしようもない。だが、そんな時彼の耳に聞き覚えのある声が届いた。

「諦めるのは勝手だが、怪我をしたくなければそこを動くな」

――全投影連続層射!!(ソードバレルフルオープン)

「んなっ!?」

彼が振り向くより早く、彼の脇を凄まじい勢いで何かが通り抜けた。そして、それが彼を裸にしようとしていたロボを撃ち抜いた。

「これは、剣?」

ロボに突き刺さったものは剣だった。これといった装飾もないオーソドックスな西洋剣。何でこんなものが、と考えたが突如周りから上がった歓声に彼は思わず顔を上げた。

「…………」

その光景を見て彼は言葉を失った。剣の雨。いや、雨の様に降り注ぐ剣軍が数多いるロボを次々と撃ち抜いていたのだ。これを機に防戦一方だった生徒たちが一気に攻勢へと回る。そんな中、彼は一人視線をロボとは逆方向へと向けた。先ほどの声の主、そしてこの剣を降らせている男を探して。

「健二!」

程なくして、見つけた。紅い外套と黒きボディアーマーを身に纏った親友の姿を。

「よく耐えていたじゃないか。遅ればせながら、英雄(ヒーロー)として助太刀に来た」

「けっ、おせーんだよ」

「何、主役は遅れてやってくる。そうだろう?」

「畜生、カッコいいじゃねーか」

「さて、そろそろ私は行くが……ついてこれるか?」

「はっ! テメェこそ、ついてきやがれ!」

二人は駆ける。片割れは気付いていなかったが、健二は笑っていた。それはそうだろう。かけがえのない親友と、最後に肩を並べることが出来たのだから。





超が時間跳躍弾を使い始めてそこそこの時間がたった。ロボ軍団以上に多くいたはずの生徒たちも数を減らし、今では防衛拠点近くまで押し込まれている。そんな中、健二は既にロボ達もいないような地点に、一人立っていた。先ほどまで、ここら一体に人払いの結界を張っていた所だ。

「さて、これで準備はOKだ。出てこい」

「お見通しってか?」

姿を現したのは蒼い男。健二と同じくこのネギま! の世界に転生し、ランサーことクー・フーリンの力を持つ者だ。そして、健二の敵。

「お前は結局原作から離れなかった。これからどうなるか、分かるよな」

男の手に深紅の魔槍が現れる。ゲイ・ボルク。因果逆転の呪いを持つ放てば必ず心臓を貫く魔槍。

「ああ。だが、俺とてそう簡単に諦めることはできん」

最後に友と駆ける事が出来た。明日菜……最愛の女には気持ちを伝えることは出来なかったが、後悔はない。ここで全てをかけることに、躊躇うことなど何もなかった。

「馬鹿だなお前。救いようがねえ」

「何とでも言え。所で、一つ聞かせてくれ。お前は神に、ランサーにしてくれと願ったのか?」

「……だから何だってんだ」

最も聞きたかったことが聞け、健二はニヤリと笑った。

「気持ちのわりぃ奴だ。そいじゃあ、死ねや!」

宮内健二、最大にして最後の死闘が幕を開けた。 
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