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八条学園怪異譚

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第四十六話 秋のプールその十一

 だが疑問はまだあった、何故ここで彼の名前が出たかというと。
「どうしてここで高橋是清さんなんですか?」
「それもわからないです」
「高橋是清さんは無類の酒豪だったのよ」
 そうだったと話す茉莉也だった。
「一日三升飲むね」
「殆ど先輩みたいですね」
「それだけ飲まれる人だったんですよ」
「そうなのよ、遊郭でもう毎日ね」
 飲んでいたという話が残っている、それで今言ったというのだ。
「超人的な酒豪だったのよ」
「超人的ですか」
「そこまでだったんですね」
「そうよ、もうとにかく飲む人でね」
 茉莉也はこう話しつつビンガを飲んでいく。
「私もそうなりたいわね」
「あの、お酒は確かに美味しいですけれど」
「ちょっとそこまで毎日飲まれると」
 二人も流石に一日三升、それも毎日飲むとどうなるかは容易に想像がついた。普通の人間がそこまで飲むと。
「身体を動かしていますから糖尿病にはならないでしょうが」
「アルコール中毒になりますよ」
「お身体に悪いですよ、絶対に」
「大変なことになりますよ」
「だから、私の肝臓は鋼鉄でね」
 今もこう言う茉莉也だった。
「代々毎日それだけ飲んでるけれどね」
「お嬢の家は長生きの家系だよ」
「皆普通に八十超えるんだよね」
 河童達がここでこう話す。
「皆毎日お嬢みたいに飲むけれどね」
「全然何ともないよ」
「何かね、そういう体質なのよ」
 茉莉也は今も飲みながら言うのだった。
「アルコールへの耐性が凄いのよね」
「そういえば二升飲まれても泥酔ってところまでなりませんね」
「三升でも」
「そうなのよ、人によってはビール一本で酔い潰れるじゃない」 
 この辺りは本当に体質だ、意外にも織田信長は下戸で酒は殆ど一説には全く飲めなかったらしい。しかし茉莉也はというのだ。
「私の家系は違うのよ」
「そうなんですか、だから」
「毎日三升かそれ以上飲まれても」
「全然平気よ、やっぱり人間飲まないとね」
 相変わらず飲みながらの言葉である。
「大きくなれないわよ」
「いや、お嬢小さいけれど」
「中学の時から背は伸びてないよ」
 河童とキジムナー達がこう突っ込みを入れる。
「一五〇位だよね、今」
「今の時代だと女の子としては小さいよ」
「小さいのがいいんじゃない」
 そこを自分のチャームポイントだと言う茉莉也はそう言われても平気だ、その顔で妖怪達にも返すのだ。
「かえってね」
「小柄な女の子が人気あるから?」
「だからっていうんだね」
「そうよ、背が低くていいじゃない」
 逆に、というのだ。
「彼氏にもそれで人気あるから」
「お嬢の婚約者一七五超えてるしね」
「かえっていいっていうんだよね」 
 背の高い男は背の低い女を好む傾向にあるらしい、人それぞれだろうが。
「だからいいんだ、小柄で」
「そのままで」
「一向に構わないわよ、小柄でもね」
「ううん、だったらいいけれどね
「お嬢自身がそう言うなら」
「そう、何の問題もないわ」
 またこう言う茉莉也だった。
「私としてはね」
「私も小さいけれどね」
 ここでこう言ったのは愛実だった、少し残念そうな顔での言葉である。 
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