気まぐれな吹雪
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第一章 平凡な日常
9、ついに入学……はいいのだが
何だかんだで、とうとう並盛中学校の入学式になってしまった。
たった二週間されど二週間。
オレはこの二週間で銀にもらった身体能力を使いこなせるようになった。
ブレスの方も試したが、能力倍増を使ったところ、三日間筋肉痛によって死んだ。
他の機能とやらも色々模索してみたが、わかったことは、コンタクト映像が出る、気配が消せる辺りだ。
まだある気がする、するだけで確証はない。
『皆さん、入学おめでとうございます』
っと、今は入学式の途中だった。
生徒会長と思われる人物(いや、生徒会長です)が、何やら喋っている。
ずいぶんと異質なやつだな。
何が異質って、髪の色が赤っぽいピンクなんだよ。
しかも瞳の色が水色。
『最後にひとつ。人を見た目で判断しないように』
そう言ってそいつは壇上を降りた。
でさ、話変わるんだが、体育館の後ろにいる雲雀からの視線が痛い。
†‡†‡†‡†‡†‡
オレのクラスは1―Aである。
つまりは、沢田や山本など、原作キャラが集結しているクラスになった。
じみに銀の陰謀を感じるんだが……。
「皆さんおはようございます。担任の新島です」
いや、名前とかどうでもいいから。
どうせ根津にしか興味ねぇし。
「この学校にはいろんな人がいます。生徒会長の話にもありましたが、人を見た目で判断しないように。それでは、早く馴染めるように自己紹介をしましょうか」
そんな提案により、1―Aでの自己紹介が始まった。
出席番号順でやっているために、オレの前には黒川花、笹川京子、沢田綱吉が来る。
って順番回ってくんの早っ!?
ガタッ
席を立つと、教室が騒がしくなった。
『ねえ、かっこよくない?』
『思った! イケメンだよね~』
ああ、そういえば忘れてた。
今と言うか、制服は実は男子のやつを着ている。
やっちまったなぁとか思いながら目線を上げると、沢田がこっちを見ながら首をかしげていた。
そういやあいつだけは既に知ってんだったな。
「っと~、霜月要です。こんなカッコなんで分かんないかもなんすけど、一応女子です」
『ええーー!?』
妥当なリアクション乙。
「友達になりたいとかいたら……わかんね。人によるかもだけど、まぁキャピキャピした女子だけは近づかないでくれ。以上」
何言ってんだしオレ、友達なんてできる訳ねぇっての。
あいつがいないこの世界で、そんな夢見がちなこと言ってられねぇよな。
「長谷川やちるです」
ふと、聞いたことのある声が聞こえてきた。
待てよ、この声ってまさか……。
『生徒会長!?』
誰かが叫ぶ。
それを皮切りに一気に教室が騒がしくなった。
赤っぽいピンク色の髪、透き通るような水色の瞳。
そうだ、ついさっき挨拶してた生徒会長だ。
「長谷川さんは、特待推薦入学した人でね、実は一週間前には入学していて生徒会長に就任していたんだ」
なんだよそのアンビリーバブルな人材はよ。
そんな中学一年生がいるんかい。
いや、よく考えたら8歳で大学に入ったオレの台詞じゃないな。
じゃなくて!
これってイレギュラムじゃねえの!?
誰だよ生徒会長の長谷川やちるって!
あーとかうーとか唸っているうちに、一番最後である山本まで終わってしまっていた。
「あ、あの、霜月……さん?」
「誰だ? って、お前か」
呼ばれて見ると、そこにいたのは沢田だった。
めっちゃ話しかけづらそうにしている。
「なんの用だ?」
「いやっあのっ……この前のこと、謝りたくて……その」
この前のって……卒業式の時か?
今さらあれ持ってくるか?
思わず盛大なため息をついてしまった。
「お前さ、いつまで引っ張るつもり? 別にオレ、怒ってねぇし」
「ならよかった……。ほらオレ達、家もすぐそこだし、席だって隣だからさ、なんか気まずい気がして」
そうなんです。
沢田とは席が隣なんです。
て言うか、家も近所とかすぐ近くとか言ってるけど、実際問題隣ですからね?
「沢田」
「は、はい!」
「近くで問題起こしてオレの事巻き込むんじゃねえぞ」
「へ……?」
取り敢えず、今のうちに保険を掛けておく。
こう言っとけば、後でリボーンとかに絡まれでもしたらこいつが何とかするだろ。
傍観第一だ。
「お~い、ダメツナ。早速ナンパか?」
突然に聞こえてきた声。
そっちの方を見ると、なんと言うかチャラそうな男子がいた。
つーか、不良だなありゃ。
「しかもまさかの男子系女子? そんなんが趣味なのか?」
「ちっちがっ! ナンパとかそんなんじゃないから!」
「つーかそこのお前、ホントに女子かぁ? 女子だとしてもイケてねーし、男子だとしても全っ然イケてねー」
「んだとゴラ」
さすがにイラッと来て机を蹴るように前に押して立ち上がる。
正直オレは身長が高い方じゃない。
だから必然的に相手を見上げる感じになる。
が、よくある上目遣いなんてもんが期待できるもんじゃない。
昔から迫害対象の理由でもあった緑のつり目は、むしろガン付けにしかならない。
「てめぇ、今なんつった。ぁあ?」
「っ。お前が全っっ然イケてねーって言ったんだよ、オチビチャン」
「上等だぜ、ちょっと面貸せ!」
相手の顔面に向けて拳を繰り出す。
悪いが、力は弱くたってケンカ馴れはしてんだよ!
パシッ
顔に当たるすれすれのところで、誰かによって拳を止められた。
オレも相手も驚いて目を見開く。
何故ならば、
「入学早々ケンカなんて、やめてくださいよ」
それは、長谷川やちるだったからだ。
見た目華奢で、か弱い女子の筆頭にでも立ちそうだと言うのに、能力とトレーニングで並の男子より力の強いオレの拳を片手で止めていた。
「全くあなたは、もう少し言葉を選んでください。女子は繊細なんですよ?」
「っち」
「霜月さんも」
「あ?」
長谷川がオレに目線を向けてくる。
「女子なら女子らしく、おしとやかにするべきでは? 野蛮ですよ」
女子らしく?
ハッ、オレが一番嫌いな言葉だな。
「てめぇに、オレの何が解るってんだよ。知った口を利くな」
「まずは、口調から直す必要がありますね」
「黙れ。オレはそいつのせいで最高に機嫌が悪ィんだ。生徒会長だからって、容赦しねえぞ」
「説得は無理のようですね」
長谷川はカチャリと眼鏡を押し上げた。
くっそ、こいつ見てると真面目にイラついてくるぜ。
孤児院にいたいじめの筆頭みたいな面しやがって、嫌な思い出がよみがえってくんじゃねえかよ。
よみがえりそうな記憶を頭を振って追い出すと、椅子に足をかけて飛ぶように回し蹴りをした。
「ほら、野蛮じゃないですか」
が、いとも簡単にかわされた。
むしろ、反撃のつもりか、手刀を入れてくるが、屈んで避ける。
こいつ、ケンカ馴れしてんのか?
いや、ケンカ馴れというよりは、今の動きはどっちかって言うと戦闘馴れだ。
こいつ、何者だよ。
「あ~、もうやめた」
「はい?」
「萎えたわ。お前つまんねぇ」
そう言うと、オレは自分の席に戻り脇にかけてあったスクールバックを取った。
「し、霜月さん……? あの……」
「悪ィ、オレ帰るわ。なんか萎えちまったしつまんねぇし。じゃあな」
「ちょっと、待ちなさい!」
心配そうに見てくる沢田や止めようとして来る長谷川、驚き固まってるクラスメイトを余所に、オレは教室から出ていった。
あ~あ、こりゃ完全に不良として目ェつけられたな。
ま、学校側としてはオレを退学とかできないはずだから、そこんとこは心配ないんだが。
問題はあの女だよな。
あんな力持ってたら確実にリボーンに目をつけられ必ずファミリーにはいる。
けど、あんなやつ原作にはいなかった。
漫画を全巻揃え、小説も揃え、セッタンセッテにコローレまで買い、さらにはBGまで買っていたオレが言うんだから間違いない。
あいつは一体、誰だ?
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