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今を生きる

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第二章

「真剣を持って来たということはな」
「ああ、間違いないよな」
「先生本気だぜ」
「本気で見せてくれるぜ」
 気、それをだというのだ。
「剣道の極意をここで見せてくれるんだな」
「凄いものが見られるな」
「ああ、そうだな」
「武専仕込み、柳生新陰流免許皆伝の秘技か」
「どんなのだろうな」
 気を使ってどうするのか、彼等はわくわくしながら見ていた。そしてだった。
 森下はまずは前に巨大な灯篭を出させた、間合いは五十歩は開いている。その灯篭に対してだ。
 彼は剣を上から下に、掛け声と共に一閃させた。その掛け声も普段と違っていた。
 その声自体が剣だった、その声と共に。
 剣を一閃するとその剣から何か光るものが飛んだ、そしてだった。
 灯篭は左右にゆっくりと開き真っ二つになった、それで切られたのだった。
 それを見てだ、庭に集まっていた学生達の間からどよめきが起こった。
「おい、今のがか」
「今のが気か」
「あんなに離れていた灯篭を真っ二つにしたぞ」
「凄いものだな」
 真剣でも灯篭は斬られない、しかしだ。
 彼はそれをしてみせた、さらにだった。
 今度は兜を持って来させた、戦国時代の武将が被っていた見事な兜だ。それが石の台の上に置かれた。
 その台の上の兜をだ、今度は直接斬った。やはりその掛け声自体が剣だった。
 その一閃の後でだ、兜も石の台もだった。
 真っ二つになった、それを見てまた皆言う。
「今度もか」
「あれが剣道の極意兜割りか」
「いや、斬ったぞ」
「真っ二つにしたぞ」
 こう話して驚くしかない彼等だった、集まっている学生達の中には剣道部以外の者も多い、だがその彼等も驚いていた。
 しかしそのどよめきの中でだ、森下は彼等にこう言うのだった。
「大道芸だ」
「えっ、今のがですか」
「大道芸ですか?」
「まさか、それだけの剣技が」
「そうだと」
「そうだ、、大道芸だ」
 それに他ならないというのだ。
「まさにな」
「それはどうしてですか?」
「どうしてそう仰るのですか?」
 学生達は彼の言葉に先程までとは違う驚きで応えた。
「先生の剣技、見せてもらいました」
「まさに神技です」
「それで何故そう仰るのですか」
「その様なことを」
「これを活人とするならいい」
 剣道を活人剣とするなら、というのだ。柳生新陰流はそれだとされている。
「しかしだ、武器とするならば」
「それならですか」
「その剣技も」
「そうだ、大道芸だ」
 それに過ぎないというのだ。
「所詮な」
「何故そう仰るのですか?」
 昨日道場で彼に聞いた学生がここで彼に問うた。
「それは」
「今は剣の時代でないからな」
 武器はというのだ。
「だからだ」
「銃ですか」
「そうだ」
 まさにそだとだ、森下は彼に答えた。 
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