義手
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第六章
「やっと見つけたんだ」
「おいおい、まさかこんなところで再会するなんてな」
エドワードは逃げなかった、その場に留まってだった。
彼と対した、そして首を振って苦笑いで応えた。
「全くなあ」
「探したんだ」
「そうか、俺に会いにな」
「生きていたんだね」
「ああ、お陰様でな」
そうだとだ、彼はこう言った。
「生きてるよ」
「よかったよ、本当に」
「ちょっと場所変えるか?」
エドワードは牧師の姿を見てからジョージに返した。
「ここじゃあれだしな」
「そうだね、じゃあね」
「ちょっとこいつと話してきますね」
そうするとだ、エドワードは牧師に言った。
「そこで」
「わかりました、それでは」
牧師は彼にも笑顔で応えてくれた、そうしてだった。
二人は一旦町の喫茶店に入った、この町に相応しく古く今にも崩れそうな感じだ、その店の中に入ってそしてだった。
二人共コーヒーを頼んだ、そのうえでそのコーヒーを飲みながら話した。
まずはエドワードがだ、こうジョージに言った、
「あの事件からな」
「マフィア辞めたんだ」
「ああ、揉めたがな」
裏社会は抜け出ることが難しい、それでだというのだ。
「だから俺が持ってるやばい話の証拠を全部ファミリーに渡してな」
「それでなんだ」
「あの州から離れて何の縁のない場所で裏の仕事に一切関わらないって条件で抜けたんだよ、片手になって仕事も出来なくなってたしな」
「成程ね」
「で、俺はこの町に来てな」
そしてだったというのだ。
「牧師さんの厄介になってるんだよ」
「教会のお手伝いさんなんだ」
「牧師の資格はまだ取ってないけれどな」
それでもだというのだ。
「今は神様にお仕えしてるんだよ」
「随分変わったね」
ジョージもここでこう言った。
「マフィアと比べたら」
「そうだな、けれどな」
「けれど?」
「御前にとってもその方がよかっただろ」
エドワードはここでは自嘲めいた笑みになって言ったのだった。
「俺がいなくなったからな」
「いや、そう思わないからね」
「探してくれたんだな」
「そうだよ、興信所の人に頼んで探してもらったんだよ」
「そこまでしてくれたのか」
「もう死んだじゃないかとも思ったよ」
このことは本当のことだ、心配で仕方なかったのは事実だ。
だからだ、彼はエドワードに本気で言った。
「心配したんだから」
「そうか、済まないな」
「急にいなくなったからね」
「御前に迷惑をかけたからな」
あの事件のことに他ならない。
「だからな」
「そのことはいいよ、おじさんも撃たれたし」
「俺のせいだったからな、御前の右手もな」
「そう、この右手だよ」
まさにその手のことだった、ジョージはエドワードにかつて彼自身のものだったその手を見せながらそのうえで言った。
「この右手、僕にくれたじゃない」
「御前の右手がそうなったのは俺のせいだろ」
「けれど叔父さん自分の右手を僕にくれたじゃない」
「当たり前だろ、俺のせいなんだからな」
それ故にだから気にするな、エドワードはジョージにこう返した。
「それで何もしなかったら本当に駄目だろ」
「そう言ってくれるからだよ」
だからだとだ、ジョージは言うのだ。
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