銀河英雄伝説~物騒な副官~
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05突入
ドーラは目の前に建っている建物を見上げると溜め息をついた。
入口にドーラが向かうと、そこに立っている警備兵が胡散臭そうにドーラを見る。
警備兵がドーラに向かって言った。
「IDの提示を願います。」
ドーラは黙ってそれを差し出す。
「此方にはどの様なご用件で?」
「ワーレン閣下にお忘れ物の端末を届けに来ました。」
ドーラが実物をスッと見せる。
「そうでしたか、ではどうぞ。」
ドーラは覚悟を決めて中に入った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「やっぱ引き受けなきゃ良かった………」
ドーラはウェイターの案内で海鷲(ゼー・アドラー)の中を歩いていた。
そして、言うまでもなくドーラは完全に浮いている。客達が、
((((((((何で大尉のお前が此処に居る?しかも女かよ?))))))
という無言の圧力をドーラに目線でかけている。
ようするに、
非常に、
い・た・た・ま・れ・な・い
のである。
地獄のような時間だけが過ぎ、漸くワーレン達のテーブルに着くと、ドーラは非常に見てはいけない物を見てしまった気がした。
「ドーラ大尉かああ~~~~?????? ヒック元気にしてるかあ~~~~~? ヒック」
「……………」
「ドーラ大尉、ビッテンフェルト提督の事は気にしなくていい。………見た通り、もうかなり出来上がっていてね……」
ミュラーが 思わず無言になってしまったドーラを苦笑しながらフォローした。
「どうした?トンクス。」
とギリギリ正気を保っているワーレンがドーラに訊ねる。
「あ、はい。あの、閣下が端末を机にお忘れになっていたので届けに参りました!」
お酒の匂いでくらくらしながら、ドーラが言う。
「そうか、それはすまなかった。」
端末を受け取りながら申し訳なさそうに頭をかくワーレンを見て、ドーラは恐縮した。
「あの…」
「何だ?トンクス。」
「余計なことかもしれませんが、お酒はもうお止めになった方が…」
「酒を飲むのは良いことだぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ビッテンフェルトがドーラの話を遮る。
「……そうですか。」
「すまないな、本当に。」
ミュラーはひたすら(ビッテンフェルトの代わりに)謝る。
「そういう大尉も飲めっっ!!!!!ホラッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ビッテンフェルトがグイグイと押し付けがましくブランデーの入ったグラスを押し付ける。
そんなの無理です!とドーラが言いかけたのを(※ドーラはお酒が大の苦手)軽くとめたのは、意外にもミュラーだった。
そして、そっとドーラに囁く。
「このような時のビッテンフェルト提督は誰にも止められません。ブランデーはキツいでしょうからかわりにこのワインを飲みなさい。」
そしてミュラーはビッテンフェルトに向き直って言う。
「ビッテンフェルト提督、提督が今ブランデーを注がれたグラスは小官の物ですよ?」
「そうなのか?」
「ブランデーはもう残念ながらないので、このワインでいかがでしょう?」
「おう、かまわんぞ♪」
すると、今まで黙ってワインを楽しんでいたロイエンタールが口を開く。
「流石、ミュラーだな。馬鹿の一つ覚えのように猪突猛進なその男の手綱を引く術を心得ている。」
どうやら、ミュラーがした事は全てお見通しらしい。
「そんな事はありません。何かお間違えでは?」
ミュラーが答えると、突然、ミッターマイヤーが話始めた。
「卿とミュラーはお似合いだな、トンクス大尉。どうだ?付き合う気はないのか?」
今までとろんとしていた(アルコールで)目を素晴らしく輝かせながら話すミッターマイヤー。………だが、その爆弾発言としか言えない暴挙?にドーラはどう返事をして良いか分からず、ミュラーに救助要請をする。
「気にしなくていいですよ。提督は酔われるといつも独身者にこの手の話をふられるから。」
「そうなんですか…」
「ミッターマイヤー。」
「なんだ、ろいえんたーる?」
「そろそろ止めておけ。明日の執務に差し支えても知らんぞ。」
「まだ、だいじょーぶ!だ!」
「……本当に知らんぞ…」
ロイエンタールは呆れた様にミッターマイヤーに言った。
「そういえば、とんくすたいい?」
「……何でしょうか?ミッターマイヤー提督。」
「けいはなぜ、ぐらすをもったままなのか?わいんがおいしくなくなるぞ?」
余計なことを、とこっそり溜め息をつくミュラー。
「そうだ!!!!!!!!!早く飲め!!!!!!!!!!」
急に思い出したように、今まで若干静かになっていたビッテンフェルトが騒ぎ始める。
ドーラは仕方なく、ほんの少しワインに口をつける。かなり重い口当たりの物だったが、まわりにあるお酒の瓶達を見ると、そこにある中ではこれでも軽い方の物らしかった。
「そら、もっと飲め!!!!!!!!!!」
ビッテンフェルトは瓶をグイグイとドーラに押し付ける。ミュラーはもう自分ではビッテンフェルトの暴走を食い止める事が出来ないと、彼と同い年でありながら精神年齢は(彼より)遥かに高い(であろう)ロイエンタールに助けを求める。
……が、ロイエンタールは見向きもしない。
……実際はロイエンタールもビッテンフェルトも同じ程度の精神年齢だったようである。
ミュラーは何度目かの溜め息を吐き視線を空中にあげると、突然ガチャンという音がテーブルの上から響いてきた。
後書き
ミュラーはやはり苦労性のポジションです(笑)
次回、ミッターマイヤー提督が……(絶句)
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