問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 あるお盆の物語 ⑤
再び時間を遡り、場所も変わって第一部隊のところ。
「特に作戦はない。以上だ。」
白夜はそう二人に言って、刀を抜いた。
特に名があるわけでもないが、夜刀神家に伝わる強力な・・・強力すぎて、危険すぎる妖刀だ。
「相変わらず単純だな、白夜殿は。拳殿はこれで?」
「うむ!なんせ俺はバカだからな!作戦など説明されても理解できん!!」
冷静に式神の調節をする鈴女と、ガッハッハ!と笑う拳。
正反対な二人だが、意外と気が合う二人でもある。
「そうだ、先ほど捕らえた猪を焼いたのだが、食べるか?美味いぞ!」
そう言いながら、焚き火で焼いた猪一頭分の肉を差し出す拳。
「やけに来るのが遅いと思ったら・・・そんなことをしていたのですか?」
「うむ!腹が減っては戦に勝てぬ!単純に美味いものはそれだけで力をくれるからな!」
「相変わらず単純すぎる考えだな・・・だが、間違ってはいない。ありがたくいただこう。」
「では私も。御相伴に預かるとしよう。」
そういって、拳は漫画に出てくるような骨付きの肉を豪快に食べ、白夜と鈴女は普通に箸で食べ進めていく。
そして、一頭分の肉を三人で食べつくし、食器や骨を片付けたタイミングで、日付が変わり、妖怪の大量発生が始まる。
「お、始まったな。では討伐開始と行こうか。」
「では、まずは動きを封じるとしよう。縛れ、『紅緋』!」
その言葉と同時に鈴女の背後に一メートルほどの蜘蛛が現れ、糸を吐いて周りにいる妖怪を全て縛り上げる。
鈴女は紅緋の口元の、全ての糸がまとまったところを切り、拳に渡す。
「では拳殿、お願いします。」
「任された!天よ、我に雷撃の加護を与えん!」
拳がそう唱えると、天から落雷が拳に当たり、拳のもつ紅緋の糸を通じて全ての妖怪に流れ込み、その命を奪う。
では、まず鈴女の奥義から説明するとしよう。
まあなんてことはない、全ての式神を使うことができ、その力を300%発揮できる、というもの。
本来そこまでの負荷をかければ、式神は壊れてしまう。だが、それが起こらないのが土御門の奥義の一端である。
さらに、土御門の人間は式神を紙の状態ではなく、自らの体に入れ、持ち歩く。常に武装を解かない一族だ。
次に拳の奥義。
これについては、本当に単純なものだ。
それは、天に頼み、天より雷を預かり、それを扱うというもの。
体にいくら電撃を流し込んでも効かないなどのことはあるが、本当に、ただそれだけの単純な能力だ。
「さて、これで近くにいたものは退治できたが・・・」
「今年はいつもより特異点の数が多い。その上、三箇所に一際でかいのがあるからな。早々数は減らん。」
「だが!向こうも無限ではない!いつか終わることだ!」
「単細胞が・・・まあいい。この俺自ら、数を減らしてやろう。」
そういって、妖刀を構えると・・・一気にその力を解放し、荒れ狂う呪力、妖力の波を放つ。
結果、先ほどの比ではない量の妖怪が倒され、それらの死体と先ほどの死体が、全て妖刀に食われた。
「ふむ・・・ザコばかりではあるが、あれだけの数があればそこそこにたまるのだな。まあ、まだ全然足りんが。」
「おや、今回は準備していなかったのか?」
「したんだが・・・その、妹が勝手に使ったんだ・・・」
「小さな子供の手に届くところに置いてはいかんぞ!」
「相変わらず、夜露殿は好奇心旺盛だな。おっと、貫け、『雌黄』!」
無駄話をしているうちに集まってきた妖怪は、鈴女が召喚した蜂の式神の放つ黄色い光に貫かれ、絶命する。
そして、その死体を白夜の妖刀が貪欲に食い散らす。
「では、倒した妖怪の死体は、全てその刀が片付けてくれると考えていいのだな?」
「ああ。霊獣が現れたときのために、できる限り準備はしておきたいからな。」
「では、俺達は第一席のためにも妖怪を狩るとしようか!雷鬼晩餐!」
拳は再び雷を自らの身に落とし、それらを鬼の形にすると妖怪に走らせ、食い漁るかのように噛み千切り、命を奪わせる。
こんな性格だが、意外と器用だったりする。イメージに合わないところが多いやつなのだ。
「焦げてはしまったが、問題あるまい!」
「多少変わるのだが・・・まあ、これだけの量がいれば大して気にはならんか。」
「あまり贅沢を言ってもいけない。まあ、白夜殿の奥義は使わずにすんだほうが・・・おや?」
三人が妖怪を殺しながら進んでいると、鈴女が何かを見つけた。
「どうした、鈴女?」
「いや、今人がいたような・・・拳殿、あれ・・・人ですよね?」
鈴女は大量の妖怪がいるその先、自分達のほうに向かってくる四つの人影を指差す。
「どれ・・・うむ、二人は人、二体は人形だな。傀儡か?」
「は?俺達以外は避難したはずだろう・・・おい光也。どういうことだ?」
拳が保障したことで、白夜は光也へと連絡を取る。
「おかしいですね・・・確かに避難するように命令したはずですが。」
「なら、あれは命令違反ということか・・・最悪、見捨てればいいな。」
「お願いなので、それは最終手段としてください。」
光也は白夜にそういって、電話を切った。
「はあ・・・しかたない。まずはそいつらと合流するか。」
「うむ!死んでしまう前に保護しなくてはな!」
「巻き込まれただけならば、助けなくてはならない。それが強者の責任というものだ。」
三人の意見が一致したため、その二人の元に向かおうとするが・・・
その瞬間、日本で三箇所に霊獣クラスが出現、うち一体は二人の傀儡使いの元に出現した。
そして・・・三人の霊獣殺しのいる位置から等距離の地点に、神が、出現しようとしていた。
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