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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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短編 あるお盆の物語 ③

会議があった日の次の日、23時55分。部隊はそれぞれの担当地区に集合していた。

「今、日本全体に結界を張りました。民間人の避難も終わりましたので、被害については気にせず、妖怪退治に励んでください。」
「第一部隊、了解。」
「第二部隊、了解。」
「第三部隊、了解。」

光也からの連絡に、各部隊のリーダーはそう返事を返す。
光也は陰陽師であると前に語ったが、彼の習得した奥義は“結界”の類のものだ。
攻撃のための奥義ではなく、何かを守るための奥義で、それを建物などに密着するように張ることで一輝たちが遠慮なく暴れられるようにしたのだ。

「じゃあ、最後に簡単に確認するぞ。まず、美羽はサポートに回って。」
「はい・・・。」
「次に、殺女はでかい一撃を大物に叩き込む。」
「りょ~かい!」
「匁はザコから大物まで、目に付いたやつを切り刻め。」
「分かりやすいな、了解だ。」
「で、俺は全体のサポートをしつつ妖怪を問答無用に潰していく。
 後全体的なことだけど、封印作業はする余裕がないだろうからしなくていい。霊獣以上のやつが出た場合、最低でも三人で対処し、最低限俺が行くまでは耐えること。」

一輝の見立てでは、三人がかりでならば霊獣クラスも倒すことができる、という形だ。
一輝とはかなりの差があっても、日本での第五、七、九席だ。間違いはないだろう。

「なにか質問は?」
「あの・・・いい、ですか?」
「どうぞ、美羽。」

一輝が質問はないかと聞くと、美羽が遠慮がちに挙手をする。

「今回、特異点は、分かっているのですか・・・?」

特異点とは、今回の妖怪大量発生の中心となる地のことである。

「一応、分かってはいるよ。ほら、あそこの『危険、この辺りに特異点あり(笑)』って看板のところ。」
「あのふざけた看板?あれが一体・・・」
「あそこがちょうど特異点。」
「「ならあんなふざけた看板を立てるな!!」」
「あれは・・・駄目、です。」

一輝としては大真面目だったのだが、三人からするとそうでもなかったようだ。

「まあ、今回は大きいのが三つに小さいのがバカみたいな量あるから、」

その瞬間、日付が変わり、

「あそこが特異点だと分かっても、だから何?って感じなんだけど。」

日本全土を覆いつくすように、妖怪が出現した。

もちろん、一輝たちの目の前にも、大量に、視界を埋め尽くすように。

「おー!!去年の比じゃねえぞ!これは楽しめそうだ!」
「いやいやいや!」
「この量は、ちょっと笑えないかな~・・・」
「かなり、笑えません・・・」

現時点で、四人の中でこの状況を楽しんでいるのは一輝だけのようだ。

「じゃあ、作戦開始!美羽は俺の水の上に乗れ!」

一輝の乗る水の上に乗りながら、美羽は左目を隠していた髪をどかし、猫のようになっている左目で辺りにいる妖怪を見る。
すると、見られた妖怪たちが動けなくなったかのように固まるので、

「目覚めよ、“天之尾羽張(あめのおはばり)”!」

それを、右腰に差した刀のうちの一振りを抜いた匁が、一気に切り刻む。
ここまでの流れは、かなりスムーズなものだった。

まず、美羽が使った力についてから説明しよう。
彼女の一族は呼び名の通り『化け猫交じり』。化け猫の血が混ざっている。
妖怪達の動きを止めたのは化け猫が使う妖術、『猫操り』、相手やものの動きを操る妖術だ。
とはいえ、かなり昔に混じっているため血は薄く、普通ならばたいした力は発揮されない。
では何故美羽は力を振るえるのか?それは、彼女は化け猫の血を隔世遺伝したからだ。
そして、彼女はその力を操ることが自然と行え、第五席となった。

次に、匁が使った刀について。
これはイザナギがカグツチを斬る際に使ったとされる神刀で、また、後には神の名ともなる。
ただそれだけの刀だが、それでも神が使い、神を殺すだけの刀、かなりの力を持っている。
そういった只者ではない刀を使いこなすのが、匁が習得した奥義、『刀使い』である。

「おー、これまた一気に減ったなー。」
「こうでもしないと・・・なかなか減りませんし、」

美羽はそう言いながら自分達の上空を見て、

「殺女さんから、気をそらさせれませんし。」

自分の背後に金剛力士像のビジョンを漂わせる、殺女の姿があった。

「わが身に宿りしは全てを砕く力。我が前に残るものはないと知れ!」

言霊を唱えながら降ってきた殺女は、妖怪達との距離が縮むと拳を放ち、拳圧で一気に妖怪どもを潰す。

殺女の家が継承していく奥義は『金剛力』。
これは何にも複雑なことはい、純粋な力そのものだ。
その力は山河にとどまらず、この世の全てを破壊しつくすことができるものである。

「妖怪が押し花みたいに潰されたな。」
「そんな綺麗なものじゃない・・・です。」
「まあ、ただの死体だしな。これだけあるとさすがに邪魔か・・・式神展開、“封”。異形なる骸を封印せよ。」

一輝は“封”の式神を全て展開し、死体を封印していく。

「じゃあ、次は俺がやるかな、っと!」

一輝は大量に準備してあった水を環状の刃とし、一気に放つことで三人の日じゃない量の妖怪を殺す。
陰陽師としての力ではなくとも、一輝の実力はけた違いなのだ。

「ここまであっさりやられると・・・自身失うな~。」
「まあ、仕方ないだろう。一輝は霊獣殺しなのだから。」
「それに・・・陰陽術の類とは、違いますし・・・」
「それ以前に、どこから来た力かすら分からないし、いつ何が起こることか・・・」

そう言いながら一輝は片手間で妖怪を退治していく。
中にはもちろん、妖怪としての大物もいるのだがそんなことは何の問題にもならない。
差別なく全て殺され、魂を一輝の中に封印されていく。

「さっさとするぞ!まだまだ大量に妖怪は顕現してるんだ、早く終わらせて打ち上げだ!」
「カズ君は気が早いな~。でも、それには大賛成!」
「そのためには、誰も怪我をせずに終わらせなくてはな!」
「はい・・・頑張りましょう!」

そのまま、四人は台風のような勢いで妖怪を殺していき、あと少しで終わる、というタイミングで・・・三箇所に霊獣が出現した。
 
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