久遠の神話
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第五十七話 北の国からその九
「別に」
「違うと仰るのですか」
「自分の欲望の為に学園を築こうと考え」
そしてだというのだ。
「戦い多くの人を殺めようというのですから」
「だからですか」
「はい、私は高潔どころか」
自分を否定するシニカルな笑みでの言葉だ。
「冷酷で下種な人間です」
「しかしその貴方理想とする学園は」
大石はその高代に言う。
「どうした学園かといいますと」
「生涯を持った子供がいますね」
「はい」
「先天的、後天的にしてもです」
所謂障害者だ、とはいっても色々なケースがある。
「その子達のケアが。我が国ではまだまだと思っていますので」
「彼等の為の学校を築かれたいのですね」
「その施設もです」
それもだった。
「それもまた、です」
「設けられるのですね」
「障害者の方々の就職は困難です」
これが現実だ、社会はどうしても健常者を基準として構成される、ただしこれは肉体的な意味でのことである、
「その支援施設、技能育成施設もです」
「築かれたいのですね」
「誰も築かないのなら」
だからだというのだ。
「私は築きます、願いを適え」
「それでどうして下賤なのか」
違う、大石は言った。
「私はそうは思いません」
「そうでなのですか」
「貴方は人を、剣士を殺め罪を背負われますね」
「そのつもりです」
最初から覚悟している、戦いを選んだその時から。
「他の誰かが救われるのなら」
「貴方は地獄に落ちてもいいのですね」
「自己満足ですよ」
また自分自身を否定するシニカルな笑みを出した。
「それに過ぎません」
「そう仰る方が下賤だったことはありません」
大石も尚言う。
「貴方は高潔です。ですが高潔だからこそ」
「残念ですか」
「貴方と戦うことが」
「そして止められますか、私を」
「必ず」
これが大石の決意だ、彼のそれもまた変わらない。
「絶対に」
「では止めて下さい」
「最初からそのつもりです」
「お互い引けませんね。では」
「今闘われますか?」
大石はここでこの場ではじめて高代の横顔を見た、そしてそのうえで確かな顔でこう問うたのである、そうしたのだ。
「そうされますか?」
「そうしますか。では場所は」
「外に出ましょう」
そうしてだというのだ。
「そしてそこで」
「そうですね。教会の中で闘うことは」
「憚れます」
このことは大石だけでなく高代もだ。
「ですから」
「そうですね、それでは」
二人は共に席を立つ、そのうえでだった。
教会の外に出ようとする。しかしその二人の前に。
聡美がいた、彼女は険しい顔で教会の扉のところに立ちこう言ってきた。
「申し訳ありませんが」
「今は闘いを止めろと」
「そうです。お二人にお客人です」
こう高代に答える。
「ですから」
「新しい剣士の方ですね」
大石がその事情を察して言う。
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