魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter34「舞い降りる影」
前書き
お待たせいたしました。
最近、エクシリア2ドラマCD聞きました。
おもしろい内容でしたが、一部疑問点が生まれました。
ネタバレになるので、あまり詳しく書きませんが、
リドウが出てくる話の終盤、とあるデータを分史世界からリドウが持ち帰っていたという話しですが、
どうやって分史世界から正史世界に持ち込んでいたのかという点です。
クルスニクの鍵の力無しでどうやって?
データは人間でいう、記憶と同じ扱いになるのでしょうか?
わかる方がいたら、ご解説お願い致します。
それでは、本編をどうぞ……
ロビーに於いてフォワード達に混じり、なのはの過去を聞くことになったルドガー。
シャーリーとシグナムにシャマルを加えた面々から聞かされたなのはの過去はティアナ達に大きな衝撃を与え、ルドガーは彼女と戦った際に彼女が語った言葉の意味が映像を見てわかった。
何よりエルとそう変わらない年齢から、半ば巻き込まれる形で魔法を知り、生死に関わるような実戦を繰り返しいたことは心中複雑だった。
そして何よりも、度重なる事件で繰り返した無茶が原因で、任務中に再起不能の大怪我を負い、
それでもう一度立ち上がった彼女は自分よりずっと力強く見えた。
「もう飛べなくなるかもとか、立って歩くことさえできなくなるかもって聞かされて、どんな思いだったか……」
「無茶をしても、命をかけても譲れぬ戦いの場は確かにある……だが、お前がミスショットをしたあの場面は自分の仲間の安全や命を賭けてでも、どうしても撃たねばならない状況だったか?」
シャマルとシグナムの言葉にティアナは固まる。
頭に浮かぶのはホテルでの自分の無茶な射撃……周りに嫉妬し、自分が安心できる結果が欲しくて、勝手に暴走して失敗した自分の姿。
「訓練中のあの技は、一体誰の為の……何の為の技だ?」
シグナムの続ける言葉に何も言えないティアナ。
“お前はまだ、小手先の力しか信じていない……それは本当の強さなんかじゃない”
かつてルドガーに告げられた言葉の意味をの重さが彼女に圧し掛かる。
「なのはさん、皆にさ…自分と同じ思いをさせたくないんだよ。だから無茶なんてしなくてもいいように、絶対絶対……皆が元気に帰ってこられるようにって、本当に丁寧に、一生懸命考えて、教えてくれてるんだよ」
それから程なくして、ロングアーチから出動したなのは達がガジェットを殲滅したと知らせが入り、ロビーで待機していたフォワード達は解散することになった。
その後、なのはの過去を聞いた後、ルドガーは海沿いの道路で夜風に当たっていた。
今彼の目の前には俯いたティアナが隣に座っている。
「もうじきなのはが帰ってくる。自分の今の正直な気持ち、今度はちゃんと伝えないとな」
「はい、それは勿論……でもそれはルドガーさんもです」
「え?」
意外な返答が返ってきて、思わず呆けしまう。
「私は、ルドガーさんの教えを守らないで、今日の模擬戦ではルドガーさんの技を……」
「ああ…アレね。……まぁ確かに驚いたな。いつも俺の教える事を素直に従っていたティアナが全く逆
の教える事をするもんだからさ」
「ごめんなさい!」
「謝るな。あと、これは驚いたは驚いたが、つい嬉しかったのは、お前が俺の技を使ったことだな」
ティアナが決め手に一迅を使った時、まさか教えもしない自分の技の一つをほぼそのまま再現したことに、驚くこと以上に嬉しかった。
「えっ…でも……」
「一迅を含めた俺の剣技は、俺の兄さんから伝えられたものなんだ」
「ルドガーさんの…お兄さん?」
「ああ。ティアナを見ていると自分を見ている気がするんだ……」
面と向かっては言えないが、ルドガーはユリウスの事が大好きだった。
たった1人の大切な家族だった。
だからこそ、自分に何も話さず1人で全て背負いこんで、クルスニクの宿命に挑んだユリウスの事を許せなかった。
「俺の剣は兄さんから受け継いだものだ……こうして、兄さんの意志を継いでくれる奴がいてくれた事は、本当に嬉しいんだ」
「あの……もしかして、お兄さんは?」
「ああ……死んだよ」
「……あの、私……」
なんて言葉をかけてよいのかわからない。
言葉を探すティアナの前でルドガーはあの事を呟く。
「いや……俺が…殺した」
「え……?」
自分の失言に気付く。今更遅いかもしれないが何とか別の話しを新たにする事で誤魔化そうとするルドガー。
「何でもない……だがこれだけは覚えておけよ。どこで生きようと、お前はお前だ。何も変わらない……俺のようになる事を目指すのではなく、俺を越える事を目指し、自分の世界を作るんだ」
「あの、私…まだ聞きたい事が!」
自分の横を通り、立ち去ろうとするルドガーを呼び止めるが、既にルドガーの姿は何処にもなかった。
(兄を殺したって、いったい……?)
間違いなくルドガーはそう語った。もし、それが本当ならルドガーは何故実の兄を手にかけたのかという疑問が生まれてくる。ティアナはルドガーの弟子としてではなく、ティアナ・ランスターという1人の人間としてルドガーの事を知りたくなっていた。
「ティアナ」
「ぁ……」
声が聞こえた方角には、任務から帰ってきたなのはが近づいてきていた。
「隣、良いかな?」
「……はい」
真っ直ぐなのはを見ることができない。出動前にどれだけ自分が惨めで馬鹿なことを口にしたか思い出したことから、ティアナは俯いたまま応える。
「シャーリーさんやシグナム副隊長に、色々聞きました」
「なのはさんの失敗の記録?」
「じゃなくて!その……」
「無茶すると危ないんだよ、って話だよね」
場を取り繕おとしたのか、冗談を交えティアナを元気づけようとしたが、やはりそう直ぐには振り切れるものでもない。
「すいませんでした……」
「うん」
少しの間が空く。息苦しいが、これは全て自分が招いた結果であり、仕方ないの事だ。
「じゃあ、分かってくれたところで、少し叱っとこうかな」
それはある意味ティアナが待ち望んでいたものだった。
もしなのはから六課から出ていけと言われることも覚悟している。
「あのね、ティアナは自分の事を凡人で射撃と幻術しかできないって言うけど、それ間違っているからね。ティアナも他の皆も、今はまだ、原石の状態。デコボコだらけだし、本当の価値も分かり辛いけど……だけど、磨いていくうちに、どんどん輝く部分が見えてくる。エリオはスピード、キャロは優しい支援魔法、スバルはクロスレンジの爆発力。3人を指揮するティアナは、射撃と幻術で仲間を守って、知恵と勇気でどんな状況でも切り抜ける。そんなチームが理想系で、ゆっくりだけど、その理想に近づいて行ってる……模擬戦でさ、自分で受けてみて気付かなかった?って、最後のはルドガー君が庇ったんだっけ」
「え?」
だがなのはの話す内容は、ティアナが覚悟していたものとは大きく違っていた。
「ティアナの射撃魔法って、ちゃんと使えばあんなによけにくくて、当たると痛いんだよ?」
「あ……」
なのはの一言で、その場面を思い出し、その時感じた痛みも思い出す。
「一番魅力的なところを蔑ろにして、慌てて他のことをやろうとするから、だから危なっかしくなっちゃうんだよ……って、教えたかったんだけど」
「ぁ……」
「でもやっぱり、言葉で伝えないと伝わらないよね?ルドガー君にも怒られたよ」
やっと知ることができた、なのはの教導の意味。
彼女自身から聞かされ、初めて納得できた。
「まぁ、でもティアナが考えたこと、間違ってはいないんだよね」
ティアナの上着の上に置いてあった、クロスミラージュを手に取る。
「システムリミッター、テストモードリリース」
《Yes》
なのはが何らかの解除コードをクロスミラージュに入力し、クロスミラージュはそれに応える。
「命令してみて、モード2って」
差し出されたクロスミラージュを受け取り、なのはの顔を少し見て、クロスミラージュを右手で構える。
「モード、2……」
《Set Up Dagger mode》
ティアナの命令で、クロスミラージュは輝くと同時にその形状が変化する。
銃身の角度が少し上を向き、銃口からはティアナの魔力光と同じオレンジ色の刃が現れ、グリップ部分から銃身の部分まで輪を形取るかのように光の刃が繋がった。
「これ……?」
クロスミラージュの新形態は、ティアナがルドガーの双剣技を見よう見まねで編み出した短剣形態とは違っていた。
いや、これこそルドガーの双剣技を再現できる形態かもしれない。
「ティアナは執務官志望だもんね?順調に執務官試験に合格すれば、どうしても個人戦が多くなると考えてたから、一応準備だけはしておいたんだ」
「あ……」
「あと、ダガーの刃は、ティアナの先生でもあるルドガー君の剣の構えもできるよう、設定もシャーリーが作ってくれたみたいだから、ティアナ次第で模擬戦で見せたようなルドガー君の技をもっと上手く使えるようになると思うよ」
その言葉を聞いて、胸が一杯になる。
なのはは自分の事をこんなにも考えてくれていた。
それに気付かず、自分の事ばかり優先していた自分を、何も変わらず優しく語りかけてくれる事にティアナは込み上げてくる涙を抑えきれなかった。
「銃を使うルドガー君が銃師としての戦い方を実際に教えて、私は模擬戦を通して、戦いで生き残る為の戦い方を教える事で、確実にティアナを強くしてあげたかったんだけど、私の教導地味だから、あんまり成果が出てない様に感じて、苦しかったんだよね?」
俯いて涙を流すティアナをなのはは優しく抱き寄せ、微笑む。
「ごめんね」
その一言はティアナの、最後まで抑えていた感情を弾けさせるには十分だった。
「ごめんなさい、ごめんなさい……!」
なのはに抱きついて、子供のように大きく泣くティアナ。涙と共に、口から出る言葉は、本当の心からの謝罪だった。
そんななのはとティアナを茂みから見守る5つの影があった。
スバル、エリオ、キャロ、シャーリー、フリード達だ。
ホテル・アグスタから今日の模擬戦までティアナの事を皆心配していたため、悪いと思いながらも身を隠して2人の様子を見守っていた。
「いい趣味だな、盗み聞きなんて」
「ホンマやなぁ」
背後からそんな声が聞こえたため、スバル達は驚きながらそちらに振り返る。
「ル、ルドガーさん、八神部隊長にリイン曹長!?えっと…これには、訳があって……」
スバルが小声で、事情をわかってもらおうと、ルドガー達3人にあたふたしながら、説明しようとする。
「ぶー!盗み聞きなんてはしたないですよー!」
「でも、やっぱり心配だったんで……」
リインが頬を膨らませて話し、エリオが弁解し説得を試みるが、咄嗟だったこともありマシな言い分は思いつかない。
「はいはい。けどもう十分だろ?」
「はい……ところでルドガーさん達はどうしてこちらに?」
シャーリー達からしたら、何故ここにルドガー達が現れたかが一番知りたかったのだろう。
「……少しはやてと俺の昔話を…な?」
「昔話ですか?」
「リインとはここに来る途中で会ったんや。そしたら、偶然皆がそこでこっそりしてる所を見つけたんや」
ルドガーとはやては、話しをできる場所を探し歩き回っていたようだった。
「この際だ……皆を交えて話した方が手っ取り早いかな」
「ええの?」
「ああ…皆知りたいだろうし……それに知ってもらいたんだ」
自分がどんな人間で、どんなことをやって生きてきたのかを……
そして、自分達と同じ過ちを繰り返してほしくない意味で、彼女達にはクルスニク一族の悲劇を心に留めてほしい……
それが一族の1人として、ルドガーが出来る数少ない贖罪だ。
「話しって、もしかして……」
「そう、ルドガーのここに来る以前のお話……こうなると、大分大勢になるなぁ」
「ロビーに戻ろう。あそこなら人数的にも丁度、使えそうだ」
「決まりやな。そうとなれば、あそこに居るなのはちゃん達も呼んで行かな---」
これからの方針が決まり動き出そうとしたその矢先……
ドオォォォォ!
突如爆発がなのは達の居座る海沿いの道路近くで起きる。
「報告スル。機動六課管理施設内ニ侵入……コレヨリ、作戦行動ヲ開始スル」
巻き起こる粉塵の中から、機械的な声がルドガー達の耳に届いていた。
後書き
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