ソードアート・オンライン~漆黒の剣聖~
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フェアリィ・ダンス編~妖精郷の剣聖~
第六十六話 氷の世界のいざこざ
「・・・・・・ふあーあ・・・」
エクリシスの下緒が結ばれている部分を肩に置き、胡坐をかきながら抱きかかえているソレイユは隠そうともせず大きな欠伸をする。現在ソレイユたちは先ほど助けた人型ではない巨人の背中に乗ってヨツンヘイムの空中を散歩中である。何処に向かっているのかわからないタクシーに揺られながらソレイユは再び大きく欠伸をすると隣にいるリーファ達に声をかける。
「で、これからどうするんだ?」
「うーん・・・そう言われても。でも、これはおそらくイベント的なものだと思うの」
「んじゃ、このままか。何時になったら寝れるのやら」
現在の時刻は草木も眠る丑三つ時。いくらの常識が通じないソレイユと言えど、人間である以上、三大欲求の一つである睡眠欲は当然ながらある。
「つか、こいつの呼び方ってなんなん?なんか名称とかあんの?」
「うーん、聞いたことないな」
「お前にははなっから期待してねぇから」
リーファに聞いたはずだったが答えたのはキリトだった。キリトの言葉を聞いたリーファは何かを思いついたように手を叩くと口を開いた。
「わかった、じゃあ、名前付けよ名前!可愛いやつ!」
リーファの言葉を聞いたキリトは象っぽい邪神の名前を必死に考えているがなかなかいい名前が浮かばないみたいであった。
「ゴマゾウっていうのは?」
「それ作品が違うでしょ!」
「じゃあ、トシゾウ」
「鬼の副長って柄でもないでしょ!」
「じゃあ・・・」
いまだにボケようとするソレイユ。キリトはキリトで何か悩んでいるようであったが、なかなか言い案が思い浮かばない様子だったが--
「じゃあ、トンキーでどうだ!」
「なるほど。ゆくゆくは殺されてしまうわけか・・・」
などと言うものだから、某動物園の物語を思い出しながらソレイユが間髪入れずツッコんだ。リーファもソレイユと同意見なのかあまりいい表情ではなかった。
「・・・あんまし、縁起いい名前じゃない気がするけど」
「うぐっ!」
「何でその名前が浮かんできたんだよ?」
「い、いや、なんか頭に浮かんできたんだよ」
「まぁ、これ以上考えんのもめんどいし・・・それでいいんじゃね?」
「そうね。おーい邪神君、キミは今からトンキーだからねー」
「トンキーさん、はじめまして!よろしくおねがいしますね」
リーファに続きユイまでトンキーに挨拶をすると、それにこたえるように頭の両側についている耳っぽいエラをわっさわっさと動かした。
◆
トンキーと名付けられた人型ではない邪神は凍った川沿いを北上し続けている。
「ふぁーあ・・・」
胡座をかき刀を抱いた格好でソレイユは何度目になるかわからない欠伸をする。それほど今の状況は暇なのだ。隣に目を移すとリーファがトンキーの背中に積もった雪のオブジェクトを寝ているキリトの背中の服中に突っ込み、その冷たさで一気に目が覚めたキリトは跳ね起きたところだった。
「何をしているのやら・・・」
そんな二人に呆れながら氷の世界を眺めていると、雪と氷に覆われたなだらかな丘を登りきったところで、足を止めた。リーファが頭の方へ移動して前方をのぞき込むとそこには尋常ではないほど巨大な垂直孔が口を開けていた。
「うわぁ・・・」
嘆声を漏らすリーファは目を凝らして孔の底をのぞきこもうとするが、いくら目を凝らしても底をみることはかなわなかった。
「どれくらいの深さがあるんだろ・・・」
「わたしがアクセスできるマップデータには、底部構造は定義されてません」
「うへぇ・・・」
リーファのつぶやきにユイが答え、その答えにキリトが嫌な溜息を吐く。
「人間が自由落下で落ちる速度がだいたい時速200Kmだったはずだ。おれが落ちた時間はだいたい30分ぐらいだったから・・・100Kmくらい下にダンジョンがあることになるな」
漆黒が広がる巨大な垂直孔――グレートボイド――を眺めていた二人と一匹にその穴に落ちたことのあるソレイユが補足説明を付け加えた。ソレイユがグレートボイドに落ちたことがあることを知らないキリトたちは頭に疑問符を浮かべながらソレイユに質問する。
「なんか知ってる口ぶりだけど・・・落ちたことあるのか?」
「あるよ。レーヴァテインを取りに行くときにな。つか、おまえら・・・ALOが舞台となっている北欧神話、どれだけ理解できてる?」
「正直あんまし」
「あたしはある程度は」
「なら説明は省くか」
キリトの言葉を無視しつつソレイユは話を進めていく。
「まぁ、一言で言えば最下層まで落ちてったんだよー」
「・・・でも、それだとユイがアクセスできないのは何でなんだ?」
「ユイのアクセス出来る権限以上の領域ってことだろ?カーディナルが直接管理している、とかな。だとしたら、他の世界もカーディナルの独断で作られた可能性もあるな・・・」
「・・・なるほど・・・」
最後の方はキリトに聞こえないようにボソッと呟くだけだったが、SAOのサーバーを流用していると知っている二人は話を進めていく。それを知らないリーファは蚊帳の外となってしまっていた。
「まぁ、なんにせよ。いかないことをおすすめするぜ」
「なんでよ?」
「時速200Kmで地面に叩きつけられてみろ。HPゲージなんて簡単に吹き飛ぶ」
「た、確かに・・・じゃあ、ソレイユ君はどうやって着地したのよ?」
「インプの特性を忘れたか?暗中飛行があるだろう」
「ああ、なるほど」
太陽や月の光が届かない場所でも少しだけ飛ぶことが出来る特性を持つインプを選んだからこそ、着地できたのだとソレイユは言う。
「さて、それよりも問題はこれからだな」
いつの間にかトンキーは長い鼻を体の内側に丸め込むと動きを完全に停止していた。これ以上、トンキーの背中の上にいても無駄と感じたソレイユたちは顔を見合わせてからトンキーの背中から降りた。
「・・・こいつ、何がしたかったんだ・・・」
「おーい、トンキー。あたしたち、どうすればいいのようー」
そんなことを聞いても答えが返ってくるはずもなかった。リーファがトンキーの背中を叩くと先ほどまでの弾力性はなく、かちこちに硬くなっていた。
「じゃあ、散歩でもしてくるわ」
そう言ってソレイユはキリトたちが止めるまもなくふらふらとどこかへ歩いていった。
◆
大した収穫もなくソレイユがトンキーのところに戻ってきてみると二十四人のウンディーネがトンキーを攻撃しているところだった。
「ふむ」
物陰に隠れながら事の成り行きをみていると、少し離れた場所にいるキリトたちを見つけたが、とりあえず、キリトたちの方は無視しウンディーネのパーティーの方へと目を向ける。
「しかし、こうして改めて考えてみるとルシフェルたちの実力ってものすげぇのな」
ソレイユを含めてたった三人でヨツンヘイムを歩けたのだ。今トンキーを攻撃しているレイドパーティーをみるとそう思えてならない。ウンディーネのレイドパーティーは先ほどリーファが言っていたように重武装の壁役プレイヤー、高せん滅力の火力プレイヤー、支援・回復役プレイヤーがそれぞれ八人ずつそろっている。どうやら、通説通りのパーティーらしい。
「でも、襲撃されると考えてないパーティーだよなー、どうみても」
背中ががら空きで無防備すぎる。このゲームってPK推奨だったはずだよね、などとソレイユが思っていると端っこに避難していたキリトたちが行動を起こしていた。
「セエェェッ!」
草色の長刀を両手で握ったリーファがリーダー格と思われる小型の弓を装備した斤候らしきプレイヤーに向かって上段から攻撃を仕掛ける。想定していなかった攻撃にウンディーネたちはばた足つく。
だが、対するウンディーネたちも高何度のダンジョン【ヨツンヘイム】に挑戦するだけの実力がある。素早く体勢を整えると、標的をトンキーからリーファとキリトに変え、ショートレンジの高速呪文で迎撃する。
「なんて言うか、あれだな・・・」
キリトたちの戦い隠れながら見物しているソレイユはウンディーネたちの背中をみながら思いついた感想を述べる。
「背中が無防備すぎだな。警戒している様子もないし」
ならば、とソレイユは魔法スキルのスロットに最上級幻属性魔法をセットすると《インビンシブル・インビジブル》を発動させ、ウンディーネたちの死角へと回り込み――
ヒュインッ
という風切り音を鳴らしながら刀を数度振るう。当然ながら警戒もせず死角から急所をねらった攻撃にウンディーネが対処できるわけもなく、無惨にポリゴン片となって砕け散った。
『・・・・・・なっ!!?!?』
いきなりの仲間の消滅に理解が及んだウンディーネたちは驚き、キリトたちも唖然としてる。音のしたほうへと視線を向けると無造作に刀を構えるソレイユの姿があった。
「あ、あんたもこいつらみたくイカレてんのかよ!?」
小型の弓を携えるウンディーネがヒステリックに叫ぶ。それに対して、ソレイユは首を傾げながら口を開いた。
「・・・このゲームって確かPK推奨だった気がするんだが?あと、背中が無防備すぎ。後ろからの奇襲にも備えておくべきだと思うぜ」
そう言うと一拍おき、さらに言葉を続ける。
「それとも、ヨツンヘイムではPKしてはいけません、ってルールでもあるのか?おれは聞いたことがないんだが」
当然ながらそのようなルールはなく、マナーとしても定められていない。そのことに何も言い返すことのできなくなった小型の弓を携えたウンディーネは怒りで拳をわなわなとふるわせながら仲間に向かって感情むき出しで怒鳴る。
「くそっ!邪神の前にいつらを殺るぞ!!」
その指示を受けると魔法の詠唱を開始するメイジ隊。盾を構える壁役プレイヤー。回復の詠唱を始める後方支援隊。キリトとリーファも迎えうとうと武器を構えるが、ソレイユは武器を構えずのほほんと言った。
「おれらを相手するのはいいけど、大丈夫か?」
ソレイユがそう言うと、先ほど丸くなって硬くなってしまったトンキーからとてつもなくまばゆい純白の光が迸った。次いで、くわあぁんという甲高い共鳴音とともに環状に放たれた白光がウンディーネたちを包むと、詠唱中だった魔法が煙となって消えていった。
『なっ!?』
「・・・・・・」
なにが起こったのか理解できず、キリトやリーファ、ウンディーネたちは凍りつく。ただ一人、ソレイユだけは冷静に事の成り行きを見据えている。
ソレイユたちの視線を受けながら、亀裂を白い輝きで満たしたトンキーの胴体は硬くなっていた殻の部分がはがれ落ち、光の塊が姿を現す。新たに姿を現した光の塊から、螺旋状の尖塔のようなものが見上げるほど高く伸び上がっていく。
「ふぅ・・・」
一息つきソレイユはなにが起こっても対処できるようにウンディーネの一団から少し離れる。そばにいたウンディーネたちは螺旋状の尖塔に目を奪われているため、ソレイユが離れたことに気がつかない。ウンディーネの集団から数歩離れてから改めて螺旋状の尖塔に目をやると、高くきつりつした光の螺旋がゆっくりと回転しながら解けていく。中から姿を現したのは、真っ白い輝きを帯びた四対八枚の翼を持ち、丸かった胴体が細長い流線型に変化し、その腹から二十本もの植物的な蔓をはやしているトンキーと思われる邪神だった。
「・・・トンキー・・・・・・」
進化?したトンキーの姿を見たリーファが呟く。その声が聞こえてか、トンキーはひゅるるるるぅと長い鼻を掲げながら声を放つと、高度十メートルほどまで垂直に舞い上がり、前触れなく今までの色合いと違う青い輝きを放ち始めた。
「あっ・・・やばっ・・・」
それを見たキリトはリーファを抱え込みながら雪の上に伏せる。その直後、トンキーの肢すべてから恐ろしい太さの稲妻が次々に地上へ降り注ぐ。重装備のウンディーネたちは耐えたようだが、メイジや弓使いたちは一撃でポリゴン片となってしまった。
「ほぉ・・・」
効果範囲外にいるソレイユは感嘆の息を漏らす中、ウンディーネのスカウトの部隊長の叫び声が響きわたる。
「丘下まで後退!密集陣形で回復及び再支援!」
生き残ったウンディーネたちは部隊長の指示通りに一斉に坂を駆け下がっていくと重装備のプレイヤーが壁を作り、その後ろでメイジが詠唱を開始する。それを見ていたソレイユは心の中で呆れた。
「(おいおい、そんなことすると・・・)」
魔法詠唱が開始されたのを察知したトンキーは、今度は羽から純白の光芒に満たされ、くあぁっ!という音と共にすべての魔法を無力化する光の環が降り注ぐ。
「(あらら・・・)」
トンキーの範囲解呪能力によって呪文が空しく煙となって消えていく。
「くそっ!」
悪態をつきながら小型の弓を引き絞ると、真上に向かって連射する。黒い煙を引きながら連射された矢が空をはしると、煙幕が立ちこめウンディーネたちの姿を隠す。
「撤退、撤退!!」
その声と共にウンディーネたちは一直線に走り去っていく。だが、トンキーはウンディーネたちを追撃することはなく勝利の雄叫びをあげるだけにとどまり、キリトたちの方へと方向を変えわさわさと飛んでくると、頭の上で止まり六個の目玉で見下ろしてくる。
「・・・それで、どうすんだ?」
キリトのその質問に答えるものはいなかったが、代わりにトンキーが長い鼻でキリト、リーファ、ソレイユを巻き取ると背中に放り出す。
「・・・デジャブを感じる」
「それはさておき・・・生きててよかったね、トンキー」
キリトのつぶやきをスルーしたリーファがそう呟くと、キリトの胸ポケットからユイが出てきた。
「ほんとよかったです!生きてればいいことあります!」
「だといいけどな・・・」
ユイの言葉にキリトが唸る。そんなやりとりを無視しつつソレイユは大きなあくびをすると目をさすりながらボソッと誰にも聞こえないような声で呟く。
「・・・ねむっ・・・」
これ以上厄介なことになるのはごめんだ、とソレイユが思っているとトンキーはひゅるるとないてから遙か頭上に見える世界樹の根本に向かって翼をはためかせた。薄暗いヨツンヘイムを螺旋を描きながら上昇していくトンキー。そこから見える景色は残酷でありながらも美しい氷の世界だった。
「うわぁ・・・・・・」
思わず感動の声を漏らすリーファ。ヨツンヘイムは基本的に飛行不可なので空からフィールド全体を眺める事なんてかなわない。反射的にリーファはウインドウを操作して撮影アイテムを取り出そうとしたが、結局拳を握りしめ撮影アイテムを取り出すことはなかった。
すると、突然リーファたちの視界を巨大な氷が覆った。逆円錐形の氷塊とそれを抱え込む黒いチューブ状のもの――世界樹の根っこだった。声もなく目を見張るリーファは逆円錐形の先――尖っている部分――に何か見つけたらしい。目を凝らしても見えないのか短いスペルを詠唱すると、掌に扁平な結晶が現れた。
「何それ?」
「遠見結晶の魔法よ。あのでっかいつららの先っぽに、何か光ってるでしょ・・・」
そう言って先ほど顔を寄せてきたキリトと頬をくっつけるようにして遠見結晶のレンズをのぞく。
「うばっ!!」
「・・・なぁ、リーファって本当に女?見る限り色気とか皆無なんだけど・・・」
乙女らしからぬ声を上げるリーファにソレイユが思わずツッコんだ。だが、今のリーファにそんなことはどうでもよかった。
「せ・・・《聖剣エクスキャリバー》よ、あれ。前にALOの公式サイトで見たもん・・・ユージーン将軍の《魔剣グラム》を越える、たった一つの武器・・・今まで所在もわからなかった、最強の剣」
「さ、最強・・・」
リーファの言葉にキリトは唾を呑み込むが、ソレイユは
さほど関心がないのか特に反応を見せなかった。
「ふぅーん」
「・・・なによ、ソレイユ君は気にならないわけ?」
その反応が面白くなかったのかリーファはソレイユにそう聞いてみたところ――
「もう持ってるし、伝説級武器」
レーヴァテインを巻きつけてある左手を掲げて見せると、リーファは言葉に詰まって何も言えなくなってしまう。
「で、でも、最強の剣なのよ!」
「そんなもの技術でどうとでもなる」
「それは、にぃにだから言える台詞だと思います・・・」
ユイが何か言っているがソレイユは特に気にした様子はない。そんなことを話しているうちにトンキーが≪聖剣エクスキャリバー≫が眠っているであろうダンジョンからのびるバルコニーに接近していた。バルコニーに飛び移れば≪聖剣エクスキャリバー≫を入手できるかもしれない。だが、バルコニーに飛び移ってしまえば頭上に見えるヨツンヘイムの出口につながっていると思しき階段にはたどり着けなくなる可能性が高い。キリトとリーファがどっちにするか迷っている。しかし、二人がバルコニーに乗り移ることはなかった。
「・・・また来よ。仲間いっぱい連れて」
「そうだな。多分このダンジョン、ヨツンヘイムでも最高難度なのは違いないしな。俺たち三人だけじゃ突破できないよな・・・」
「おい、なんでおれまで数に入れてんだよ」
ちゃっかりとソレイユをダンジョンメンバーに加えているキリト。それに対して抗議の声を上げるソレイユ。そうしている間にもトンキーは呆気なくバルコニーを過ぎていく。未練がましく氷のダンジョンを覗いているリーファとキリト。二人とは対照に上を見上げるソレイユの瞳には天蓋から垂れ下がる階段付きの根っこが見えてきた。
「あれが出口か・・・」
ようやくか、とソレイユが呟くとトンキーがひゅるるぅと声を上げ、スピードを落としていく。ふわふわと漂うように滑空し階段付きの根っこのもとまで行くと触手の様な足を根っこの先に巻きつけ停止した。トンキーが掴んだことによって軽く揺れる木の階段にソレイユは躊躇なく飛び移る。次いでキリトとリーファも階段の一番下の段に乗り移る。背中に誰もいないことを確認するようにトンキーは身をゆすると、サヨナラの握手をするように長い鼻をリーファ達に伸ばしてきた。
「・・・また来るからね、トンキー。それまで元気でね。もう他の邪神に苛められたらだめだよ」
「またいっぱいお話ししましょうね、トンキーさん」
キリトとソレイユは無言で鼻を握り、リーファとユイは囁きかけながら鼻を握る。全員がトンキーと握手し終えると、トンキーは翼を折りたたみものすごい速度で下降していく。
「さ、行こ!多分、この上はもうあるんだよ!」
目尻に滲みかけた涙を拭うと元気な声を上げるリーファ。その声にキリトは大きく欠伸をしながら応じる。
「よし、最後のひとっ走りと行くか・・・あのなリーファ、上に戻っても、聖剣のことはナイショにしとこうぜ」
「・・・なんでそれを今言うんだか・・・」
締まらないことをいうキリトにソレイユは呆れるしかなかった。
その後、光きのこでぼんやりと照らされたやたらと長い通路を歩いていくとアルヴヘイム・オンライン最大の都市≪アルン≫へと到着した。色々な種族が交わる街に感動していたリーファとキリトだったが、午前四時から始まるメンテナンスのアナウンスが流れたため宿をとった。
「ああ、キリト。俺、明日はメンテナンスが終わったあと少し遅れてログインすると思うから、先に言ってていいぜ」
「何か用事があんのか?」
「ああ」
「そうか、悪いけどそうするよ」
「ああ、そうしてくれ。そんじゃ、またメンテナンス後にな」
部屋に入る前にそれだけ言い残すとソレイユは個室に入っていくが、すぐに備え付けのベッドに横にならずそのまま腰を下ろしてウインドウ画面を操作していく。五分ほどウインドウ画面を操作すると、ソレイユは静かに笑みを浮かべてウインドウを消してベッドに横になる。
そして、天井を見ながら一言だけ呟きながらログアウトしていった。
「面白くなりそうだ」
悪戯な笑みを浮かべながら放たれたその言葉を拾うものは誰もいなかった。
後書き
メリークリスマース!!お久しぶりです、皆様!!
ルナ「変にテンションが高いね・・・」
クリスマスだからね!!そりゃ、テンションの一つや二つ上がるでしょうよ!!
ルナ「ふーん・・・一人で過ごしてて楽しいの?」
まって!そんなこと言わないでっ!!
気にしないために頑張ってテンションあげてんのにっ!!
ルナ「まぁ、そんなことだとは思ったけど・・・」
クリスマス用のSSとか書きたかったのに全然時間が取れない!!本編も書く時間がないんだ、ちくしょう!!
何だ、私が一体何をしたっていうんだ!!
ルナ「・・・まぁ、あんな人は放っておいて、感想などありましたらお待ちしております!!それではみなさん、よいクリスマスを!」
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