魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epos2魔術師と守護騎士は秘かに語り合う~Truth and Lie~
†††Sideはやて†††
わたしの目の前に現れた守護騎士ヴォルケンリッターってゆう人たち。綺麗な女の人が2人、女の子が1人、犬耳と尻尾を生やした男の人が1人。とりあえず自己紹介をし合う。そんで判ったんが、髪の長い女の人がシグナムさん、短い人がシャマルさん、女の子がヴィータちゃん、男の人がザフィーラさん。
ルシル君の話やとあと1人居るらしいんやけど、その姿は見えへん。そやから訊いてみたんやけど、「え? 何故それを・・・?なんでか驚かれた。ルシル君からいろいろと聞いたんやし。まずはルシル君のことを紹介するべきかなぁ。リビング入口に隠れてるルシル君を手招きで呼ぶ。
「「「「っ・・・!」」」」
ルシル君が顔を出したら、目に見えてシグナムさん達が驚いた。ヴィータちゃんがフラッと立ち上って「うそ、だろ・・・オーディン・・・!?」ルシル君に向かって別の人の名前を言うた。そこまで驚くゆうことは、そのオーディンさんって人とルシル君はそんなに似てるってこやな。ということは血縁関係? でもルシル君に家族は居らん・・・、ん? 親戚とかはどうなんやろ。それは聞いてへんな。
「はじめまして。この家に居候している、八神ルシリオン。本名、ルシリオン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロードです」
「「「セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード・・・!」」」
「オーディン、じゃねぇのか・・・? そりゃそうだよな・・・。だってオーディンは・・・」
え、なんやろ、この空気。ルシル君とシグナムさん達が見詰め合ってる。これはちょう訊いてみる必要があるかも。ルシル君はわたしの隣にまで来て、「これからよろしくお願いするよ、守護騎士のみんな」わたしの肩に手を置いて挨拶した。
「えっと、うんっ。これからよろしくな、みんな!」
質問はとりあえず後や。わたしも改めて挨拶。戸惑いを見せてたシグナムさん達やったけど、わたしらが笑顔のままで待っとると、シグナムさん達は顔を見合わせあった後に頷き合った。
「はい。我が主ハヤテ。そして・・・セインテスト」
「よろしくお願いします、主ハヤテ。えっと・・・セインテスト君」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします、我が主、セインテスト」
ん~、カチコチな対応やなぁ。確かにみんなの態度は騎士って感じや。でもわたしより小さいヴィータちゃんにまでそうゆうことされると、なんや居心地が悪いわ。これはやっぱりわたしが望んでる関係やない。家族。これこそがわたしの望みや。そやから「あんな、お願いがあるんやけど、ええかな?」って言ってみる。
「我らは貴女の騎士です、主ハヤテ。いかなる命令でも従う所存です。直ちに戦場に出立しますか? であれば、まずは――」
「ちゃうちゃう! 物騒な台詞は禁止や!」
シグナムさんが危ないこと言い出したから慌てて止める。“闇の書”を完成されるための戦力・・・。そんなん悲しすぎるし、寂しすぎる。
「確かにわたしはみんなの主になった。そやけどな、わたしはみんなを戦わせるつもりはないんよ。騎士から戦いを取るんは良うないことかも知れへん。でも、それ以上にわたしは・・・みんなと家族になりたい。主とか従者とかやなくて・・・家族に」
わたしの想いを言うていく。シグナムさん達は呆けたまま。でもどこか懐かしいものを見るような目をしてて。
「そうゆうわけで。わたしのことは、はやて、って呼んでほしい。なんかな、主ってつけられると、なんや寂しい。あと、敬語とかも要らへんよ」
「確かに主従の壁のような物を感じるな。家族なら、敬語・敬称・遠慮無用でいいと俺も思う。で、俺のこともファーストネームで呼んでほしい。出来ればルシルでお願いしたいな」
「やっぱそう思うよな~♪」
「な♪」
ルシル君からも同意を得たし、「どうかな?」ってシグナムさん達に確認してみる。なんやろ、やっぱりルシル君を見てる気がする。とりあえずわたしは「じゃあ呼んでみてくれへん」ってお願いする。
「ハヤテ・・・ううん、はやて、でいい? あと、ルシル・・・」
まずはヴィータちゃんが呼んでくれて、「そうやよ、ヴィータちゃん」って微笑みかけると、ヴィータちゃんは「ん」って小さく頷いてくれた。妹が出来たみたいで嬉しいわ。
「えっと、はやてちゃんとルシル君、でいいのかしら?」
「うん!」
「ああ、それでいいよ」
シャマルさんも要望通りに呼んでくれた。次はシグナムさんとザフィーラさんやけど・・・。
「申し訳ありません。将として、やはり敬語を改めるのは少し・・・。敬称についても、申し訳ありませんが」
「我もシグナムと同様です。申し訳ありません」
シグナムさんとザフィーラさんはアカンかった。すぐには無理かもしれへんな。じゃあ追々ってことにしとこか。
「じゃあ俺の呼び方の件は?」
ルシル君がそう訊くと、「ファーストネームで呼べばいいのだな。判った」シグナムさんは了承、「承知した。我もルシリオンと呼ばせてもらう」ザフィーラさんも了承。そっちは簡単に済むんやなぁ~。
「えっとさぁ、じゃああたしからも。あたしのこと、ちゃん付けしないでいい。呼び捨てでいい。ちゃん付けってなんかムズムズする」
「あ、それなら私も、シャマル、って呼んでください。シグナムとザフィーラも呼び捨てで良いでしょ?」
「ああ。主はやて。私のことはシグナムとお呼び下さい」
「ん~。年上の人を呼び捨てにするんはちょう気が引けるけど・・・ん、判った。シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ、やな」
そうゆうわけで、敬語・敬称・遠慮無用ってことになった。このままシグナム達とお話をしようと思って「お茶用意せなアカンな」キッチンに向かおうとしたんやけど。
「はやて。もう遅い。そろそろ寝ようか」
「ええー。もうちょっとシグナム達とお話ししてたい~」
ルシル君がそんなことを言うてきた。興奮でもう目がパッチリ覚めてもうてるから、今からでもお話し出来る。そやから反対の意思を示すと、ルシル君は「よし。それじゃあこうしよう」って言うた後、シグナム達に振り返った。
「第1回八神家会議~。八神家の家主、はやてが駄々をこねようとしています。もう夜更けな今、もう寝るべきだと思います。というわけで多数決! シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ。はやてが寝るべきだと思えば挙手! まだ起きていても良いと言うなら・・・飯抜きだ!!」
「ええええええーーーーっ!!? ルシル君、それ卑怯や!!」
挙手せなご飯抜きって、手を挙げるしかなくなるやんか。ほら、シグナム達、この空気について来れへんから茫然としてるやん!
「あのー、一応私は医者でもあるので、ルシル君に賛成します・・・。夜更かしはあまり体に良くないですよ。ご飯惜しさではなく」
「おお、シャマルはお医者さまやったんやな♪ ほら、ルシル君。こういうことが知れるから、もっとお話ししたいんやって!」
「え? 健康の為に夜更かしはダメだって言ったんですよ・・・。ご飯惜しさは別として、ですけど」
シグナム達の名前以外の趣味とか特技とか、そんなんとかが気になって気になってしゃあない。それに5人目の騎士のこともあるし、オーディンさんのこともやな。あとシャマルがなんか言うてるけど、それどころやない程に気持ちが昂ってる。
「では私も挙手で。主はやて。騎士――いえ、家族であれば体の心配をするというもの。健康第一ですよ。私もご飯抜きなど別として」
シグナムがそう言うて手を挙げたら、ザフィーラも無言で手を挙げた。残るはヴィータだけや。わたしはヴィータに振り向いて「ヴィータはもっとお話したいと思わへんっ?」訊いてみる。
「えっと・・・」
「ヴィータ。今すぐ手を挙げたら、君の明日――正確には今日の朝食を豪華にしよう」
「はやて。夜更かしはダメだって」
「騎士がご飯に釣られた! ヴィータって食いしん坊さんなんやな! でもそこが子供っぽくて可愛ええ❤」
「多数決の結果発表~。5対1。決まりだな、はやて」
「圧倒的大敗や・・・」
わたしはガックリ肩を落とす。
「この世はどうせ数が正義だ。恨むなら、多数決なんてシステムを生み出した先人を恨むといい」
「ルシル君メッチャ悪い笑顔!」
ニヤリと笑ったルシル君。うぅ、多数決って誰が作ったん? こうゆう時はホンマに厄介なシステムや。
「さぁ、寝よう。なーに。話なら明日からいつでもどこでもいつまでも出来るじゃないか。何せ、これからずっと一緒に居るんだから」
ルシル君がシグナム達を見回した後、わたしに向かってそう微笑んだ。そこまで言われたら「ん。もう寝ます」諦めるしかないやん。興奮はまだ冷めへんけど、寝ることにした。よう考えればまた朝寝坊するのもどうかと思うし。すると「良い子、良い子」ってわたしの頭を撫でるルシル君。むぅ、わたしはお姉ちゃんなんよ。まぁ、撫でられるの好きやからええけど。
「あ、でもその前に。みんなの寝るトコ教えておかなアカン」
ルシル君に言われて2階の使ってない部屋を掃除(全部ルシル君やけど)したんや。
「じゃあ、それを最後として寝ような」
「うんっ♪ えっと、じゃあみんなの寝室に案内するから、ついて来てな。ルシル君、お願い出来るか?」
「ああ」
ルシル君にお姫様抱っこしてもらって、まずはわたしの部屋を教えて、そしてリビングをあとにする。わたし達の後をシグナム達がついて来てるのをルシル君の肩越しで確認。階段を上がって2階へ。2階には3部屋ある。父さんと母さんの両親部屋。そして使ってない部屋が2部屋(うち1部屋が物置)。両親部屋はベッドが2台、クローゼットやお化粧台も揃てるから、シグナムとシャマル用やな。もう1部屋は和室で、そこはザフィーラに使ってもらうとして。
「ヴィータは・・・どないしよか。シグナムかシャマルのどっちかのベッドで一緒に寝るか?」
「私はそれで構いませんけど。これまでにも似たようなことがありましたから」
「温かな寝台じゃなくて、地下の牢屋みたいなところだけどな」
ヴィータがボソボソっとなんや呟いた気がしたけど、聞き取れんかった。訊き返そうにも、それが許されへんような顔をしてたヴィータやったから、わたしは何も言えへんかった。
「いっそのこと、はやてと一緒でいいんじゃないか?」
「「え?」」
ルシル君からのそんな提案。想像してみる。・・・・「それでいこっ!」ルシル君、それ、最高のアイデアやっ! ちょう困ってるようなヴィータに「嫌やなかったら、わたしと同じ部屋で・・・ええかな?」って訊いてみた。ヴィータは少し考えた後、「それでもいい」小さな声やけど、それでも頷いてくれた。
「決まりだな。シグナムとシャマルはそこの部屋。ザフィーラはその隣。ヴィータは、はやてと同じ部屋だな。じゃあ、我が手に携えしは確かなる幻想」
「「その詠唱・・・!」」「「っ!」」
ヴィータとシャマルが声に出して驚いた。今の呪文、ルシル君が魔法を使う時のモノや。
――変化せしめし乱音――
ルシル君がパチンと指を鳴らす。と、みんなの体が足元から煙に包まれた。そして煙がスッと消えてみんなの姿が見えたんやけど。みんなの格好が変わってた。シグナムとザフィーラは浴衣、シャマルはロングワンピースのネグリジェ。ヴィータはウサギ耳付きフードのあるパジャマ。
「俺のイメージで勝手だが、寝やすいように寝間着にみんなの着替えさせてもらった。今日はこれで解散! おやすみなさいっ!」
「えっと、じゃあみんな、おやすみな。明日、もっとお話ししよな♪」
「あ、はい。おやすみなさい、主はやて。ルシリオン」
「おやすみなさい、はやてちゃん、ルシル君」
シグナムとシャマルからも挨拶を受けて、2人が部屋に入っていくのを確認。ザフィーラは頭を下げる挨拶で、わたしは「おやすみな」って返しながら部屋に入るんを確認。そんで「ルシル君。ヴィータ。行こか」わたしらの寝室がある1階に降りて、ベッドにまでルシル君に連れてってもらう。ヴィータはわたしとルシル君が何も言わんでも車椅子を持って来てくれた。気の利くええ子や。
「おやすみ、はやて、ヴィータ。2人とも、良い夢を」
「ん。おやすみ、ルシル君」
「おやすみ・・・ルシル」
ヴィータと一緒にベッドに入って、部屋をあとにするルシル君を見送った。
「おやすみ、ヴィータ」
「うん。おやすみ、はやて」
ヴィータと向かい合って挨拶。布団に入ったら急に眠気が襲ってきた。ルシル君の言う通り、明日になったらもっとたくさんお話ししよ。
†††Sideはやて⇒シグナム†††
「・・ん? 朝か・・・」
こうして温かな寝台で体を休めることが出来るなど、二度と無いと思っていた。熟睡できたのも実に久しぶりだ。此度“闇の書”の主となったヤガミはやて。今までの主とは違って成人ではなく幼い少女。しかしその笑顔や態度は、あの方を彷彿とさせる。かつての主と瓜二つ、姓も同じである少年、ルシリオンを思う。
「シグナム。ルシル君の言っていたこと・・・どう思う?」
既に起きていたらしい寝台で横になっているシャマルに声を掛けられ、「受け入れるしかないだろう」そう答える。主はやてが寝室に向かった後、ルシリオンから思念通話が送られてきた。
◦―◦―◦回想だ◦―◦―◦
『もう気付いていると思うけど、俺も魔導師だ。さっきから俺を見て驚いているようだから、あなた達の疑問に答えておこうと思ったんけど・・いま良いだろうか?』
ヤガミ・ルシリオンと名乗った少年。その顔立ち、美しい銀髪、紅と蒼の虹彩異色、そして決定的な姓。我々守護騎士ヴォルケンリッターに温かく優しいひと時を与えてくれたかつての主、オーディンを思い出させる。
彼から頂いたものは数知れず。シャマルやヴィータ、名の無かった管制人格――シュリエルをも笑顔にし、我らとは主従ではなく家族という関係を持ってくれた。
(そんな彼を、私もどれだけ慕ったか)
だが、我々は――私は、オーディンと最後まで共にすることが出来なかった。次の転生でシュリエルから、彼が別の“エグリゴリ”からの奇襲によって腕を失ったことを聴いた時、一体どれだけ己の不甲斐無さに苦悩したか。
オーディンのその後はどうなったかは判らない。奇襲した別の“エグリゴリ”と戦い、勝ったのか、それとも負けてしまわれたのか。そんなオーディンと何かしらの関係を持っているはずのルシリオンからの願ってもない情報交換の提案だ。
『頼めるか? こちらは私と・・・』
『私も聴きたいわ』
『あたしも』
『我も参加させてもらおう』
『判った。じゃあ何か質問があれば・・、答えられるものなら答えるから』
我らはルシリオンへと質問を投げかけることにした。
『まず、一番大切なことだ。お前と、お前と瓜二つである殿方で、かつての我らの主、オーディン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロード。彼とお前の関係だ』
子孫であってくれと願わずにはいられない。オーディンはあの後も生きていたのだと、思いたいからだ。
『オーディン・・・か。あなた達はエグリゴリという存在は知っていたりするか?』
忘れもしない。あの男、バンヘルド。あの者にこの命を奪われた時のことは今でも克明に思い出せる。ゆえに質問した私が代表して『知っている』と返答する。そして我らがかつてオーディンを主としていたこと、共に協力してバンヘルドと戦ったこと、しかし我らは決着前に負け、死んだことも話しておく。
『バンヘルドと戦ったことが・・・。だったら、俺の正体を伝えておくよ。俺は対エグリゴリ用の生体戦闘兵器なんだ。生まれからして特別。生まれつき圧倒的な魔力を有し、様々な戦闘技術を持ち、幾多もの魔法を覚え、特殊な能力を与えられた、ね』
『『『『っ!!』』』』
ルシリオンから語られた、彼の正体というのがあまりにも想像の上を行き過ぎていた。彼は続けた。オーディンも自分と同じ対エグリゴリ用の兵器である、と。そう。我らが敬い慕ったオーディンもまた、“エグリゴリ”に救済という名の破壊を与えるために生み出された人工的な生命体。まるで我らのような存在だった。
『そんな・・・。でも、オーディンさんは話してくれたわ。家族のこととか出身世界でのこととか』
『たぶんそれは、俺やそのオーディンの基となったオリジナルの記憶――と言うより記録を語ったに過ぎないと思う。俺にもあるよ。俺が元は王様だったこととか、出身世界で戦争があったこととか、エグリゴリに家族や仲間を殺されたとか、いろいろ』
信じられない――いや、信じたくないと言った風に反論したシャマルに、ルシリオンはそう返した。オーディンもそう言った話をしていた。彼らセインテストの系譜とは、“エグリゴリ”と戦い、救うためだけに生み出され続けるクローン体の連なり。それが真実だった。
『でもこれで納得いった。そのオーディンと同じ外見で同じことが出来た俺に驚いていたんだな』
ひとり納得しているルシリオン。しかし我々は衝撃が強すぎて、そう容易く納得できるような心情ではなかった。
『な、なぁ。お前やオーディンが誰かのクローンってことは、お前はオーディンの子孫ってわけじゃ・・・』
『もちろんない。血液から遺伝子まで全てが同じの双子とも言えるけどね』
『あのっ。・・・オーディンさんも自分がクローンであること、知っていたのかしら?』
『起動したその瞬間にオリジナルの人格はもちろん、一般常識・魔導資質・魔法術式などといったものを刷り込まれるから、もちろん知っていたと思う』
この少年はどうして何とでもないと言うように自分がクローンであるとか兵器であるなどと気安く語れるのかと思っていたが、すでに彼自身の存在意義が決定されおり、それに準ずることを決めているからか。
ヴィータが『お前・・・歳いくつだよ・・・』気落ちした声色でそう問う。
『いくつって。俺の活動時間は約1332時間。日数にして55日になるから、0歳?』
『『55日・・!?』』『『っ!』』
外見では10に届くくらいと言うような少年だと言うのに、その実たったそれだけしか生きていないのか。我らが黙ったことで『・・・えっと、あなた達の訊きたかったことはそれだけか?』ルシリオンはそう確認してきた。
『では我から。お前の正体は知れた。ならば次の疑問が生まれる。何故、お前はこの世界に居るのか、だ』
『そうだな』
ザフィーラの問いに私も同意する。ルシリオンの答えは簡潔、そして予想していた通り『エグリゴリがこの世界に現れるみたいなんだ』あの圧倒的火力を有していたバンヘルドのような奴が、この世界に居る。
『『『『・・・・』』』』
『安心してもらっていいよ。俺の代で堕天使戦争を終わらせるから。何せすでに1機救っているし、エグリゴリ攻略に必要な策や道具も持っている』
我らの緊張が伝わってしまったようだ。ルシリオンから気遣いを受けてしまった。が、聞き捨てならないものもあり。すでに“エグリゴリ”を1機撃破している。これには驚きを隠せない。
『なっ・・・!』『っ!』
『マジかよ!?』
『もしかして単独で倒したの!?』
『もちろんっ♪』
思わず寝台から体を起こしてしまった。それほどまでに驚くものだった。ヴィータから『ソイツ、バンヘルドより強かったりするのか!?』耳鳴りがしてしまうほどの大声が届いた。
『バンヘルド。堕天使エグリゴリ。属性は炎熱系。戦力序列は7機中6位。俺が救ったのはグランフェリア。戦力序列は7位。何度か殺されかけたけど、あの程度なら死なないから問題なし。それに、どれだけの無茶なら耐えられるかも理解したし、次は快勝してやるさ』
満足げな笑い声を含んでいるルシリオンの回答。そのようなものだからシャマルが『そんな笑い話じゃないわよ、ルシル君』引いている。私としては恐ろしいという感情が占めている。自分の身の安全を度外視にしている発言だ。外見が子供だろうな。余計に恐ろしく思う。
『あれで6位・・・、ふざけ過ぎてんだろ・・・』
そしてバンヘルドの戦力序列を聴いたヴィータが恐怖に満ちた声で呻いた。確かにあれほどの実力で下位となると、奴に手も足も出なかったと我らは一体なんだと・・・。シュリエルの話では、オーディンと融合を果たしたことで勝てたと言う。
そんなバンヘルドより下とは言え、それでもなお強いであろうグランフェリアなる“エグリゴリ”を単独で撃破した。“エグリゴリ”攻略の策や道具が有るというし。オーディンに比べれば環境は恵まれているのかもしれないな、ルシリオンは。
『あ、そうだ。これだけは伝えておかないと。あなた達と話をしていて、オーディンは本当に慕われていたんだなって思った』
『ま、まぁ、オーディンはあたしらに楽しい時間とかくれたしさ。家族ってものを教えてくれた・・・、大切で大好きな奴だった。オーディンの為だったらなんだってやるって思ったし、命だって懸けれた』
『そうね。あの方と出会うまで私たちはずっと戦って戦って、いつの時代、どの主も私たちを道具扱いされていて。温かさなんて無かったわ。笑った事すらなくて。でもオーディンさんと出会えたことで、ヴィータちゃんと同じことを思えたわ。私も、オーディンさんが大好きだった❤』
『ふむ。では私も。オーディンを主とする前、私は騎士として戦うことには不平はなかった。しかし将として、仲間が辛い思いをしていたことについては心を痛めていた』
シュリエルとヴィータの喧嘩は特に、だ。ヴィータは常に周りに苛立ちをぶつけていたからな。
『そんなヴィータやシュリエルに笑顔を与えてくれたオーディンには心より感謝している。私としても、彼のことが好きだった。もちろん家族として、だ』
――必ず君たちの前には最高の主が現れる。この予言だけは必ず当たる。確実だ。絶対だ。それが運命だ。君たちは、幸せになる――
オーディンのことを想い、共に過ごした日々を思うだけで私は――我々は、あの後も強く生きて来られた。
『主オーディンの信念。守りたいものを守り、救いたいものを救う。その信念の下に戦えることが出来、道具とは別の生き方を与えていただいたことに、我も感謝している』
ザフィーラもオーディンを慕っていた。オーディンと出会う前、そしてその後の主に対して一切の評価をしなかったあのザフィーラが、オーディンにだけは最大の敬意を表していた。我ら守護騎士ヴォルケンリッター一同。オーディン・セインテスト・フォン・シュゼルヴァロードを、ひとりの人間として敬い、慕っていたのだ。たとえその正体が何であろうとも。その想いだけはこれからも決して覆ることはありはしない。
『うん。みんなのオーディンへの想いはよく判った。同じセインテストとして嬉しい。けど、だからこそ言っておかないとダメだと思う』
『なにかしら・・・?』『なんだよ』
『・・・・オーディンは過去の主だ。はやてこそが現在の主。そこだけは胸に刻んでおいてほしいんだ。オーディンと同じ人格と思考を持ってる俺だからこそ、言える。はやてはとても良い主になる。はやてと一緒なら、幸せになれるよ。確実に。絶対に』
『『『『っ!』』』』
声音の違う声だと言うのに、オーディンの笑顔が脳裏に浮かんだ。私の好きな、優しく温かな笑み。
『そ、それくらい解ってんよ。はやてが主だ。オーディンはもう居ない。けど、それもオーディンはあたしにとって・・・!』
『何も忘れろ、なんて言わないよ。ただ、俺は――・・・』
『解っている。主はやてとお前の区別はする。お前の心配は、我らがお前をオーディンと重ねて主として見てしまい、主はやてを主として見ないかもしれない、ということだろう?』
『えっと・・・ルシル君の言いたいことってつまり、オーディンさん扱いしないでほしい、はやてちゃん以上に主として見ないでほしい、という事ね』
それがルシリオンの思念通話の本当の目的だったらしい。オーディンとの違いは背格好だけ(になるのか?)のルシリオン。纏う雰囲気も彼に似通っている。確かにオーディンとして見てしまいそうだ。ルシリオンは最後に『やっぱり俺は俺だから。そして俺の所為ではやてが俺より下に見られるのも嫌だ』そう告げた。
『それがお前の頼みなら聴こう、家族として。お前たちもそれでいいな?』
『もちろんだ。つうか、お前はオーディンじゃない、それくらい解ってんよ』
『さすがに子供の姿のあなたを見てオーディンさんに重ねることはないと思うわ』
『・・・判った。お前の頼み、受け入れよう』
守護騎士一同、ルシリオンの頼みを受け入れることにした。まぁわざわざこのような形で頼まれずとも、我らはお前と主はやてに上下を付けるつもりなどなかったがな。
『ありがとう。他になかったら、もうこれで終わりに――』
『ちょい待ち。こっちはまだ訊きたいことがあんだけどさ』
締めようとしていたルシリオンに待ったをかけるヴィータ。ルシリオンは『満足いくまでどこまでも』と促した。ヴィータの訊きたいこととは、5番目の騎士シュリエルリートのこと(名前は出していないが)を何故ルシリオンが知っているか、というものだ。
『ロストロギアという物品のデータがインストールされているからさ。闇の書の守護騎士4騎と、管制人格が実体化した騎士が1騎。計5騎。・・・違ったか?』
『いんや、合ってる。が、判ってねぇこともあるみてぇだな。管制人格は、闇の書の頁を400頁埋めて、そのうえ主の承諾が出て始めてこっち側に出て来れんだよ』
『なるほど。ある程度ページを埋めないとダメなのか。はやてにはぬか喜びさせてしまったな・・・』
やはりシュリエルの起動条件のことも知ってはいなかったか。ルシリオンにはオーディンの記憶は無いというのは話を聴いていて判った。これは諦めなければならないようだ。
(アギト。アイリ。お前たちは今、どこで何をしているのだ・・・?)
私の相棒・アギト、ヴィータの相棒・アイリ。融合騎である2人の行方はこの数百年知れず。無事であるかも判らずじまい。ルシリオンに、オーディンやこれまでのセインテスト(居たとすればの話だが)の記憶があれば判り得たかも知れなかったが、無いのでは、な・・・。
『あたしはからはもうねぇ』
『じゃあシャマルやザフィーラからは何か無いか?』
『私からも無いわ。ヴィータちゃんの質問と、あなたの答えの中に知りたかった事が含まれてたし』
『我からも無い』
どうやらシャマルも私と同じ考えに至っていたようだ。おそらくザフィーラもだろう。アレも予てよりアギトとアイリの心配をしていた。
『じゃあ、これで終わりということで。明日ははやてとの時間を大切にしてほしい。・・・おやすみ。シグナム。ヴィータ。シャマル。ザフィーラ』
『ああ、おやすみ』
『ん。おやすみ』
『おやすみなさい、ルシル君』
『ああ』
ルシリオンとの思念通話が切れる。静かになった脳内。室内を照らすのは、雲の隙間から漏れる月明かり。そのおかげか一気に眠気が襲ってきた。
◦―◦―◦回想終わりだ◦―◦―◦
シャマルと共に寝台より降り、この部屋と廊下を隔てる扉へと向かう。扉を僅かに開け、階下の様子を伺う。トントン、と懐かしい音が聞こえてくる。包丁とまな板の音だ。シャマルが「懐かしいわねこの音」と昔を懐かしんで微笑む。私も「ああ」頷き返し、廊下に出て階段を下りていく。
我らが起動した部屋・居間を覗き込んで見回し、こちらに背を向け台所で作業をしている主はやてとルシリオンを視界に収める。なんと微笑ましい光景だろう。もうしばらく眺めていたいそのような状況の中、「ん? あれは・・・」カウンターの陰からザフィーラの尻尾が床に伏せている状態で出ているのが見える。ということは、今のザフィーラは狼形態になっている。しかしいつの間に・・・。
「和食やけど、みんな喜んでくれるかなぁ?」
「はやての作る料理は絶品だから、和食だろうと洋食だろうときっと喜んでくれるさ。異世界人の俺でも美味しいって思うんだから」
「ありがとうな、ルシル君♪」
「我らは食に関しては選り好みしませぬゆえ。そう気を遣わずともよろしいかと」
「いやいや。ウチに来てから初めての食事やもん。家主として美味しいもん食べさせてあげたいんよ。もちろんこれからずっと美味しいもんを一緒に食べることになるけどな♪」
主はやての笑顔が偶然にもこちらへと向けられた。そして「あ、シグナム、シャマル♪」我らに気付かれたよう。この温かな雰囲気のおかげだろうか。久しく口にする事の無かった「おはようございます、主はやて」挨拶がスラスラと出て来た。私に続き「おはようございます、はやてちゃん」シャマルも笑顔で挨拶をする。
「おはよう♪ 朝ごはん、ちょお待っとってな」
笑顔。たったそれだけ。それだけで私の心は決まった。いや、元より決まっていた。主はやて。新たに我らの主となられた彼女の笑顔を護るために私は、我らは、生きて往こう。
後書き
スラマト・パギ。スラマト・テンガハリ。スラマト・ペダン。
まずはルシルと守護騎士のお話しタイム。そして次回からはほのぼのとした日常編をお送りしたいと思います。文字数1万文字未満のショートストーリー形式になるかと思います。
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