久遠の神話
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第五十七話 北の国からその一
久遠の神話
第五十七話 北の国から
上城と中田はその店、子美の店の前で携帯で呼んだ樹里と合流した。そのうえで中華そのものの趣きの店の中に入った。
上城は四人用のテーブルに座ると向かい側に座した樹里にあの扇子を出した。尚中田は彼の右の席にいる。
扇子を差し出してから笑顔でこう言った。
「これよかったら」
「あっ、プレゼントなの」
「うん、そうだよ」
まさにそれだというのだ。
「よかったらね」
「有り難う」
樹里は微笑んで上城のそれを受け取って言葉を返した。
「大切に使わせてもらうわね」
「受け取ってくれるんだ」
「それで使わせてもらうから」
ただ受け取るだけでなく、というのだ。
「そうさせてもらうわね」
「じゃあね」
「丁度扇子欲しかったし」
それにだというのだ。
「しかも中華風ってね」
「中華風が欲しかったんだ」
「最近中華料理にも凝ってて」
このこともあってだというのだ。
「そう、それじゃあ余計によかったね」
「本当に有り難うね」
笑顔で言う樹里だった、ここでも。
「学校でも使わせてもらうから」
「それじゃあね」
「上城君とペアだし」
上城は自分は自分で扇子を持っていた、樹里のものと同じ中華風の青い扇子だ。
「一緒に使おうね」
「それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
こうした話をしてだった。
三人は注文しようとする、ここでだった。
三人の前に彼が出て来た、上城も中田も即座にだった。
シェフ姿の王を座ったまま見据えてこう言った。
「貴方もですか」
「俺達と同じなんだな」
「そうだよ」
その通りだと返す王だった。
「剣士だよ、お察しの通りね」
「お名前は」
「王神極」
微笑み堂々とこの名前を告げる。
「宜しくね」
「上城大樹です」
「中田直行だよ」
二人も名乗った、そしてこのことも言う。
「水を使います」
「俺は火だよ」
「金だよ」
三人はそれぞれの名前と力の話もした、お互いのことはこれでわかった。
そのことをわかってから中田は自分達の傍に立つ王に問うた。
「で、あんたがだな」
「噂になっていることは知ってるよ」
「この店で評判になってる料理人だよな」
「広東から来たね」
「そうだよな、それで剣士か」
「そうだよ」
その通りだというのだ。
「それが私だよ」
「で、料理人ってことは」
「ああ、倒すのは剣でだけだよ」
それでだというのだ。
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