| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四話「ゼロ/ZERO]

 
前書き
今回はついにゼロが登場します。あと、今回のイレギュラー化したジュエルシードは……あのX3の!? 

 
朝焼けにはまだ早い早朝、夜風に当たりながら少年はビルの屋上から町並みを見渡していた。青い瞳に棚引く長い金髪の少年は見た限りだと外人である。
「ロストギア、一般呼称ジュエルシード……今作戦はジュエルシードの収集、およびそれに加担するイレギュラー分子の処分」
少年はようやく上った朝焼けを目にブルーの両目を細めた。

そしてもう一方のビルでは、総長の空を見つめ一人の少女が風に当たっていた。金髪のツインテールをなびかして、
「……ロストロギアはこの付近にあるんだね?形態は青い宝石……一般呼称ジュエルシード……」

朝十時ごろ、高町宅にて。
前回の事件後、僕は士朗さんと会い、彼は僕にぶかぶかと謝罪しました。僕は何だか申し訳にくく思い、ロックマンとしての自覚以外にも今度からは断る勇気も持たなくてはいけないということを一つ学びました……
そして、今回の休日は運よく僕は何もすることがなく、一日をグリム童話で済ませようと思っていましたが……
「なのはー?まだか?」
リビングで兄の恭也は、なのはの支度に待ち飽きていた。一方の僕はなのはに無理やり誘われてため息交じりに支度をするのでした。
「お、お待たせしました……」
僕は帽子にサングラス、そしてマスクという完全重装備を施していたが、一般的にみると不審者に捉えられる。
「お、おい……何だ?その身形は?」
「何だか……怪しい人って思われちゃうわよ?」
恭也と美由紀は苦笑いでそう答えた。僕だって本当はこんな格好したくないけど、知らない人の家に行くのなんて今の僕じゃ耐えきれないんだ。
「んもう!タケル君ったら、そんな格好しなくたってすずかちゃんは優しい子だよ?」
と、背後でなのはに注意され、僕は彼女に引っ張られて普段着へと着替えさせられました。
そう、今日はなのはの友人すずかちゃんの自宅へ僕までも招待されてしまい、いささか困っていたのです。今度こそ断ろうと思いましたが、なのはの強烈な勧め負けて僕は仕方なくついていくことになったのです。それに、すずかちゃんとは学校であまり顔を見合せなことはなかったけど、アリサちゃんよりかは優しそうな女の子に見えるので少しは安心です、それに今日は別に大嫌いなスポーツ類をしに行くのではないんだし。
「よし!タケル君もそろったことだし早速行こう?」
「う、うん……あ!忘れ物」
僕は急いで自室へ戻ると、いつも肌身離さず持ち歩く書物を両手に抱えてなのは達のもとへ戻ってきました。
「あ、それってグリム童話?」
と、なのは。
「うん、これがないと落ち着かなくてね?」
その後、僕となのは、そして何故か恭也さんはすずかちゃん家の送迎バスに乗り彼女の自宅へと向かうのでした。
ちなみにあと後から聞いた話ですが、恭也さんはすずかちゃんのお姉さんに用があるらしく、二人は恋人同士のようなんです。
なのははウキウキとハシャぎ、恭也さんは窓にたそがれ、僕は無表情でグリム童話を読みながら、バスは目的地へと着きました。
「こ、これがすずかちゃんの家なの……?」
僕の目の前は立派な屋敷が聳え立ち、そこが涼香ちゃんの御自宅らしい。
「ようこそ、恭也さま、なのはお嬢様、タケルお坊ちゃま?」
と、ドアを開けて一人のメイドさんが出てきた。この人こそこの家のメイド長、ノエルさんらしい。
「あ、どうも……」
僕は下を向いてそう挨拶する。やはり、慣れない人、それも外人にはすこしお手上げのようだ。
「さあ?こちらへ……」
ノエルさんの案内で恭也さんは別の部屋へ行き、僕となのははすずかちゃんとアリサちゃんが待つテラスへと向かうのでした。
「あ、なのはちゃん!タケル君!」
すずかちゃんに歓迎されて僕となのははテーブルに着いた。しかし、男子は僕だけで他女子というといささか精神的に辛い……
しばらく僕を除くなのはたちはお喋りを始め、僕はちびちびと紅茶を口にしながらグリム童話を読んでいた。
「あれ?タケル、あんた何読んでるの?」
と、アリサちゃんはグリム童話の本で顔を隠す僕にそう尋ねた。
「え……?」
「あ、それってグリム童話ね?」
すずかちゃんも本に気づき、少し興味を持っているようだ。しかし、なのははあまり勧めがたい顔をしている。
「……聞きたい?」
と、僕は少しでもコミュニケーションをとグリム童話を視聴に誘う。なのはが止めようとしたが、グリム童話を全く知らないアリサとすずかはノリノリであったからなのはは口を出すことはできず、僕は取っておきの話し「白雪姫」を音読してあげた。
「むかしむかし、森のお城に住む魔法使いは……」
それからグリム童話の、白雪姫の原作が始まり、そして白雪姫の腹黒い本性と王子様の変態ぶりを知って二人の夢は金槌で粉々に壊されただろう。
「……そして、白雪姫は魔法使いに真っ赤な焼き鏝の靴を捌かせて死ぬまで踊らせましたとさ……」
「……」なのは
「……」すずか
「……」アリサ
「あ、あの……」
しかし、僕は拍手かなにか待っていたのだが、待っていたのは無言と悲しげな顔、そして納得のいかない顔である。
「……さすがに酷い話ね?本当に白雪姫なの?」
と、アリサ。僕はその質問に答える。
「……うん、実際の白雪姫は生き返った後魔法使いに復讐して、王子様は死体フェチだったんだよ?」
「白雪姫怖いよ……それに、七人の小人は小人じゃなかったの?」
すずかちゃんがそう尋ねると、
「うん、七人の小人じゃなくて、七人の人殺しだったからね?」
「もう少し面白い話無いの?っていうか、あんたこういう本ばっか呼んでいるからそんな暗い性格になるのよ!?」
アリサちゃんが勢いよく突っ込んできた。それに戸惑いもするが、一様質問に答えた。
「その……本はこれしかもっていないから」
「少しは漫画とか小学生らしい書物を読みなさいよ!?」
「う…うん……読みたい話が見つからないし……」
「じゃあ、今度一緒に学校の図書室へ行こうよ?きっと、タケル君が興味のわく本がいっぱいあると思うよ?」
すずかちゃんにそう誘われるも、人が大勢、それも静かに本を読む場所はどうも行き難い。
にゃ~……
「猫……?」
そのとき、一匹の子猫が僕の片足に頬を擦り付けた。
「あ、そうそう!すずかちゃんの家ってね?猫がいっぱいいるんだよ?」
なのはがそう説明し、彼女は一匹の子猫を優しく抱きあげた。
「へぇ……」
人間相手ならまだしも、動物相手なら何ともないため、僕は懐いてくる猫達を抱っこしたり、撫でたり、またはオモチャで遊んであげたりと、思う存分堪能した。
最初はここにきて戸惑ってばかりだったが、猫とこうして遊んでいると、そう悪くないと思った。来てよかったと思った。
「タケル君、猫さんたちに人気だね?」
「そうだね?楽しんでもらえてよかった!」
「あいつ、結構いい顔して笑えるじゃない?」
三人も僕が笑顔になってくれたことに喜び、ホッとした。今まで僕は彼女たちに笑顔なんてみせたことはなかったし、行き違っても声をかけることはなかった。逆に声を掛けられても言い返す勇気がないから、つい無視してしまう形になる。
「皆さん?お茶をお持ちいたしましたよ!」
と、そこへ元気よく若いメイドのファリンさんが紅茶とお菓子をトレーに乗せてこちらへやってきた。しかし、ここで思わぬアクシデントが起こる!
「うわぁ~!」
いまさら気付いたことだが、ユーノもなのはに連れられて一緒に来ており、ユーノはすずかちゃんの猫達に追いかけられており、ユーノは逃げて逃げて、ファリンさんの足元へ!
「あわわっ!?」
ファリンさんはユーノに驚いて紅茶とお菓子をこぼしそうになる。
「あ、危ない!」
ファリンさんは誤まってティーセットを落としてしまい、それを僕達が駆け付ける。なのはたち三人は倒れそうになったファリンさんを支えてくれたが、肝心の僕はファリンさんが落としたティーセットの紅茶とお菓子をもろに頭から被ってしまった。
「ああぁ!た、タケル様大丈夫ですか!?」
そんな彼女の声が恭也の居る部屋まで聞こえた。恭也はすずかのあねの忍とイチャついているだけなのでここは略。
「あつつ……」
頭部に軽い火傷を負った僕は少し落ち込んでいた。
「ごめんなさい!ごめんあさいぃ!!」
必死で謝罪するファリンさんを見て僕は許すしかない選択を余儀なくされた。
「大丈夫?タケル君」
なのはが心配する。僕は苦笑いで答えた。
「うん……大丈夫だよ?」
僕はソファーに座って火傷箇所に氷を当てていたら、
『タケル!イレギュラー反応!!』
「なのは!すぐ近くだ!」
僕とリュックからモデルXの声が、なのはの肩からユーノの声が聞こえた。
「えぇ?ど、どうしよう……」
自分が変身する正体を友人たちの前で見せるわけにもいかない。するとユーノはなのはの肩から降りて庭の森へと向かい走って行った。
「あ、ユーノ君?皆ごめん、ちょっとユーノ君を探してくるね」
なのはが席をはずし、ユーノの後を追う。
『タケル!僕たちも』
「うん……なのは、僕も行くよ!」
僕となのははテラスを後に外へ飛び出した。
「どうしてこんな時に……!」
楽しい時間をイレギュラーに寄って潰されるのに対し僕は少し苛立ちを覚えた。しかし、イレギュラーハンターとして、暴走が発生したのなら心を切り替えて全力で頑張るまでだ!
『おそらくジュエルシードが何らかに触れてイレギュラー化したんだ!』
「僕もそう思う!なのは、一刻も早く探さないと!」
僕達にモデルXのユーノがそう伝える。
「わかった!」
しかし、変身するにも人気が目立ってしまう。ユーノは辺りを見回し、
「このままでは人目が……結界を作らなきゃ!」
「結界?」
その言葉に僕となのはは首をかしげる。そんな僕らにユーノが速急に説明する。
「最初に会った時と同じ空間!魔法空間が生じている空間と通常空間との時間進行をずらすの……僕が、少しは得意な魔法……!」
ユーノは目を固く瞑り、地面へ魔法陣を出現させた。
「あまり広い空間まではできないけど、この周辺くらいなら……!」
すると、彼の放った魔法が広がり、辺り一面はまるで色を落としたかのように灰色へと染まって、広まった。つまり、この魔法は時間をとめる力なのか?
シュンッ……!
その一瞬、風を切る素早い音が僕らの耳に入った。
「「!?」」
僕らが上を見上げると、そこには木から木へ飛び移る黒い影の姿が見えた。
「あ、あれは!?」
『タケル!イレギュラー反応だ、これは強大だ……!それに、今回は今までのと違いすぎる!?』
「え、どういうことなの!モデルX!?」
ユーノはそのモデルXへ尋ねた。生命体のユーノとは違い、機械生命体のモデルXにはそのイレギュラー対象の詳細な生命反応を認識できる。
『こ、この反応は……れ、レプリロイド!?』
「れ、れぷり?」
知らない言葉に再び首をかしげる僕となのはの前に、
ズシン……
そのレプリロイドが現れた。トラの姿にまるでロボットのような装甲を装着した、それはモデルXのしる機械生命体レプリロイドであった。
『旧イレギュラーの……シャイニングタイガード!?』
「な、なんて凄い……!」
僕が震えていると、モデルXは……
『……一匹の子猫が、イレギュラー化したらしい』
「「「ぎゃふん!?」」」
僕となのはとユーノは、それを聞いてずっこけた。猫!?猫って……あの、すずかちゃんが飼っていた可愛い子猫達の一匹が!?
「ど、どうして猫があんな姿になるんだよ!?」
ユーノは理解できず、モデルXに叫んだ。すると、尋ねられたモデルXも困った顔で、
『……融合体の、欲求対象かな?』
「でもあれは無いと思うよ!?」
『……理解不能……』
と、とりあえず僕たちはモデルXとレイジングハートを掲げ、
「リリカル!マジカル……」
「ロック・オン!」
ロックマンと、魔法少女へ変身を遂げた。
『タケル!今回はライト博士にダッシュ機能が搭載されたフットパーツを取り付けてもらった!地面を強く蹴ればダッシュ移動が可能になる!』
「だ、ダッシュ……?」
いつの間に搭載されたかは知らないが、それを実戦投入するには良い機会だ!
「い、いくぞ!」
相手は強そうだ!素早いし攻撃力も高そうだ。
「ガルルゥ……!」
シャイニングタイガードは案の定、素早く凶暴なうえに攻撃力も高い、強靭なその鋭い爪で僕らに襲いかかってきた。
「え、エックスバスター!」
チャージショットを数発発砲し、距離を詰められないよう遠距離攻撃で決めるしかない。しかし、タイガードは素早い身のこなしで僕となのはの攻撃を軽々とかわし跳びかかってくる。
「うそ!?」
チャージショットと魔法弾の段幕を突破し、タイガードの爪がなのはへ襲いかかる。
「くうっ……!」
そのとき、僕はなのはを抱えて地面を強く蹴った。すると、
「うわっ!?」
一瞬で僕は彼女を抱えてタイガードから数十メートルも離れていた。そうか、これがダッシュ移動か!
「あ、ありがとう、タケル君!」
「大丈夫?なのは!?」
「タケル君は?」
「僕は平気……」
安全を確認し合って上で僕は今一度ダッシュ移動を試みた。
「なのは!僕が奴を引き付けるから、君は相手に隙が出来たところを……!」
「わ、わかった!無茶しないで!?」
僕は今一度地面を強く蹴り、ダッシュ移動でタイガードにタックルをお見舞いした。
「よし……これならいける!」
再びダッシュ移動するも、タイガードも負けじと高速に走り回る。早さと早さがぶつかり合う戦いに持ち込まれた。だが、
「……地面へ着地した瞬間だけ隙が出来る!?」
タイガードは木々へ素早く飛び移ったりできるものの、地上へ降りるとき地面へ着地した瞬間、態勢を整え直すのに1、2秒程の隙が生まれる。なら……!
「タイミングを見計らって……そこだ!?」
高速で渡り合う中、僕はタイガードが地面への着地を狙い、奴の足へバスターを放った。
バスターは足に命中し、移動の自由を失ったタイガードはそのまま地面へ倒れた。
「や、やった!」
「タケル君!」
なのはが駈け寄り、僕の様子を見てホッとした。これで一見落着。僕達は恐る恐る動けなくなったタイガードへ歩み寄ったその刹那。背後から無数の光弾が飛び散るかのように襲いかかってきた。
「……!」
なのはは、振り返ると魔法でシールドを展開して攻撃を防いだ。
「だ、誰だ!?」
僕は上空を襲ってきた光弾の上空へと見上げると、そこには金髪をなびかせたなのはと同い年の少女が浮遊していた。
「魔導士……?それに、あの蒼い戦士は?」
金髪の少女が呟くと、一方の横たわるタイガードは彼女とは違う別の新手の攻撃を受けていたのだ。
「重刃斬ッ!」
その叫びと共にタイガードは雄叫びをあげながら爆発し、動かなくなった。トドメをさしたのは僕と同い年くらいの金髪を棚引かせた紅いアーマーの少年だった。
「あれは……!」
僕となのはは危険を予測し、彼女は金髪の少女へレイジングハートを向け、僕は紅いアーマーの少年へバスターを向けた。
「そろそろ何も驚かなくなってきたけど、僕がなのはに教えることは何もないかも……」
謎の襲撃者と対峙するなのはに草むらからユーノはそう呟き、
『彼は、僕の性能をそれ以上に発揮している。ダッシュ移動さえ途端に使いこなせたタケルに、僕の出番は無いのかもしれない』
モデルXもまた、同じ考えを抱いた。仮に彼の声が聞こえなくとも、タケルはレーダーによる詳細な感知、攻撃力と機動力、反射力共にずば抜けている。モデルXのサポートが無くともタケルは十分にやっていけそうだった。
今までヘタレで内気で鈍い少年が適合者として、予想以上の力を発揮できるとはモデルX自身も思っていなかったろう。
そんなタケルとなのはの前に新手二人が立ちはだかった。
「同系の魔導士……ロストロギアの探索者か?」
木の枝へ立ち止る少女を目にユーノは目を丸くした。
「間違いない……彼女は僕と同じ世界の住人。それにこの子、ジュエルシードの正体を?」
「……」
少女は黙りながら、なのはを見下ろし、
「バルディッシュ同様、インテリジェントデバイス……」
彼女はなのはが持つレイジングハートを見つめ、そう呟いた。
「モデルX……」
そのとき、僕は紅いアーマーの少年と向き合い、少年は僕を見てそう呟いた。
『モ、モデルZ!?何故……何故ここに!?』
モデルXはそう叫び、パニックだ。
「ライブメタルの初号機で、遠距離攻撃に立向けた強襲戦用ロックマンか……」
『ゼロ、同時に潜入した者がイレギュラーからジュエルシードを回収している』
モデルXとは違い、静かで力強い声が少年に呼びかけた、彼のライブメタル「モデルZ」である。
「了解した……」
少年は手に持つ光の剣を僕に向けた。
「ロストロギア、ジュエルシード……」
一方、金髪の少女の声にバルディッシュが反応し、光り出した。杖は釜状に変形し、少女はなのはへと襲いかかった。
「申し訳ないけど、頂いていきます……」
「!?」
なのははとっさにその攻撃を回避し、上空へと飛び上がった。しかし、金髪の少女は釜から生じるビーム状の刃を投げつけ、それがなのはへと命中して爆発した。
「……!」
だが、とっさにシールドで防御をはり、爆発の中から彼女が飛び出してきたが、なのはの頭上にはあの少女が、
「ハアッ!」
「!?」
僕は、紅い少年の繰り出す剣の猛攻を交わしながら、バスターで遠距離からの反撃を繰り返していた。
「どうした……?貴様が秘める「無限の力」とやらを開放して見せよ!?」
「む、無限の力……?何を……!?」
ダッシュ移動で攻撃を避けるものの、紅い少年も僕と同様の機能で追いかけて来、その光の刃を振るう。ビーム状のその刃はブンッと音を立て僕へと斬りかかってくる。
「チャージショット!」
反撃を行うも、相手は全くひるまず隙を見せない。これはイレギュラーよりも強敵だ。
『タケル!接近を許すな!?』
「わかってる!」
「甘い……!」
「!?」
紅い少年は僕の懐へ潜りこみ、剣を振るう。しかし、僕はその彼の剣を持つ手首をつかみ、動きを止めた。
「き、君は誰だ……!?」
その間に、僕は尋ねた。しかし、無表情な彼は不愛想にこう答える。
「答える必要はない……」
「くぅ……!」
そして、彼は僕の脇腹へ蹴りを入れて僕から距離をとった。
「い、痛い……!」
痛みに苦しむ僕に少年は待ってくれない。絶体絶命だ!
そして、金髪の少女と交戦中のなのはさえも目の前の強敵に寄って苦戦を強いられていた。双方は自分たちの杖を向けあっていた。
「たぶん、私と同じ年くらい……綺麗な瞳、綺麗な髪、だけどこの子……」
そして次の瞬間、巨大な爆発音が聞こえた。僕が向こうの空を見上げると、爆発に巻き込まれてなのはが吹き飛ばされて地面へと落下していく。
「な、なのはァッ!!」
僕はダッシュ移動を全速力に上げて、空から落下するなのはを受け止めようとするが、
「逃げさん……!!」
紅い少年の振り上げる剣が僕の背のアーマーへ斬りつけた。
「グハァ……!?」
背を損傷するも、何とかなのはを抱きとめることが出来、僕は背中をやられてなのはに被さり、彼女をかばう形で倒れた。
「……?」
そのとき、倒れたタケルにトドメを刺そうとした少年であったが、被さったタケルの胸の中にはなのはが横たわっていた。
「コイツ……この娘(こ)を庇う為に……?」
すると、少年はビームの剣ゼットセイバーを納め倒れたタイガードへと目を向ける。すると、そこには金髪の少女がタイガードへ歩み寄り、ジュエルシードを回収したのだ。タイガードは光に包まれ、元の姿の子猫へと戻った。
「ロストロギア、シリアル14封印……」
「させるか……!」
少年は再びゼットセイバーを引き抜くと、飛び上がりジュエルシードを回収しようとした少女へ背後から襲いかかった。
「!?」
少女もそれを知ってか、瞬時にバルディッシュを釜から大剣へと変形させて攻撃を受け止めた。双方の刃がジジジッと音を立てながら取っ組みあう。
「悪いが、任務上ソイツを渡してもらおう……?」
少年は少女へ呼びかけるが、彼女はもちろん渡す気などない。
「あ、あなたは……!?」
少女は紅いアーマーを纏った謎の少年へ問うも、少年はタケルのときと同様。
「名乗る必要はない……」
そういうと、彼女の攻撃を振り払うと、ジュエルシードをもつ彼女の手に手刀を入れ、ジュエルシードがこぼれおちた。
「あ……!?」
「……ほう、これがジュエルシードか」
落ちたジュエルシードを拾い上げると、少年は少女へ向け、
「任務完了、これより帰等する……」
そして少年は光に包まれると、一瞬にして姿を消えてしまった。テレポートである。
「くぅ……!」
少女も少年を追う為、この場を後に立ち去った。
その後、僕が目を覚ました時は既に空は夕日に染まっていました。僕となのはは打撲をして森で倒れており、そこをすずかちゃん達に見つけてもらい運ばれました。
なのはは右腕に切り傷を、僕は脇腹に深い打撲と、背には少し大きいけど浅い切り傷があったようです。一様、僕たちはみんなへ適当に良いわけでもして済ませました。
その夜、部屋でモデルXは僕に語りました。
「あの少年も適合者でありロックマンだ。ライブメタルはモデルZ、接近戦を主力とした近距離戦闘用ロックマンだ。それと……」
「……?」
「それと、適合者の子……彼は僕の居た世界の住民かもしれない」
「モデルXの?」
僕は暗い表情になってベッドに横たわった。
「タケル?」
「……いずれまた、あの子と戦うんだよね?」
「……」
本来の僕ならあんなにひどいことされてしまえば恐らく発作と失踪の嵐だろう、だけど…何故か知らないが、それほど怖いという感覚が無かった。不思議だった……

夕暮れ時の出来事、海が見える歩道のベンチで一人の少年が座っていた、束ねた金髪に孤独な黒い瞳。
『初任務早々戦闘に陥ったが、どうにか例のイレギュラー物質(ジュエルシード)を手に入れたようだな?上出来だ、ゼロ……』
モデルZがそう少年ゼロを評価する。
「そうだな、しかしそれよりも……」
ゼロは背後に迫る敵意と警戒の気配に感づいた。誰かが後ろに居る。
「……隠れてないで出てきたらどうだ?」
「……!?」
ベンチから立ってゼロが振り返ると、そこには先ほどの金髪の少女が見えた。
「……」
少女は黙ってわずかながら彼を睨んでいた。その様子からしてゼロは彼女がジュエルシードを取り戻しに来たことを知った。
「探し物はこれか……?」
と、ゼロはポケットからジュエルシードを取り出して少女に見せた。
「それを返していただけませんか……?」
「……?」
やけに丁寧な物言いだと思ったが、目的は同じようだ。
「あんたには悪いが、これも任務だ。コイツは譲れない」
「どうしても、ですか……?」
「……だとしたら?」
「……!」
少女はバルディッシュを展開しようとしたが、次の瞬間。
「動くな……!」
「!?」
彼女の背後へゼロが回り首へナイフが突きつけた。
「……!」
抵抗しようとしたが、彼が手にもつナイフに当たり下手に動けない。
「下手に動くと、首をへし折るぞ?」
怖いのはナイフだけではない。彼女の腕に絡みつくゼロの両腕である。彼がその気になったら同い年か少し年上の骨ぐらいは軽く折れる。
「……返して!」
「……?」
「ロストロギアはどこ!?」
感情的になった少女はゼロへそう訴えるが、騒ぎになっては困るので彼女の後ろ首に手刀を打ち、気絶させた。
「一体コイツは……ん?」
少し焦ったと、ゼロは少女の顔を宥めると、ある人物と重なった。髪の色や外見は似ていないが、どこかしら雰囲気があの少女と重なった。
「アイリス……?」
昔幼馴染だった少女のことを思い出した。しかし、彼女とこの少女が似ていることだけは認めづらかった。
「……いや、彼女はもっと明るく、俺を癒してくれた存在。こんな無表情な女とは違う。だが……何故だ?どういうわけか似ているように思える」

「……?」
次に少女が目覚めると、そこはあるマンションの一室であり、ベッドに寝かされた。寝室のようだが、ベッドとタンス以外他には何もない寂しい部屋だった。
「ここは……?」
すると、台所の方から調理する匂いが漂い、彼女の鼻をくすぶった。
「美味しそうな匂い」
空腹であり、その匂いに誘われてベッドから起き上がり食卓のテーブルへと向かった。今もテーブルと椅子が二つ、食器棚と最低限の家具しか置かれていかった。殺風景な部屋と、台所には、
「……!?」
台所には、先ほどの金髪の少年が自分に背を向け、エプロン越しに調理をしている姿が目に映った。
「……目が覚めたか?」
ゼロは、炒め終えたパスタを2枚の皿に盛り付けてテーブルへと運び、水とコップを用意した。
「ど、どうして私を?私を、どうするつもり……?」
そう警戒し、バルディッシュを取り出そうとしたが、
「無い……!?」
「ああ……あの杖なら預からせてもらった」
「か、返して!!」
命のよりも大切なバルディッシュを取り上げられてしまい、また感情的になる少女だが、
「そう焦るな……あんなものを振り回して暴れてもらっては困る。大家のおばさんがうるさいし……」
「……お願い!返して!?」
「わかった。後で返すから、そのかわりに俺の質問に答えろ。いいな……?」
「……本当?」
少し信用できないが、何も答えずバルディッシュが帰ってこないかはマシだ。
「約束しよう……だが?」
「……?」
ゼロは食事の準備をし終えると、彼女を向かい合いの席へ座らせて、共に食事をとった。
「立ち話も何だ。飯を食いながらでもいいだろう……」
「……」
だが、良い匂いを漂わせても毒が盛られてあるという疑いを持ち、少女は手を付けようとしなかった。そんな彼女にゼロはため息をし、
「毒など入れていない……ほら?」
ゼロは、自分と彼女のパスタの皿を取り替えてやり、フォークでパスタを巻き付けると、それを口へ運んだ。
「……?」
食べたのに平然としているゼロを見て少女は恐る恐るパスタを一口食べた。
「美味しい……!」
すると、顔は二口目もペロリと口に入れて食欲を湧き出した。
「……で、お前の名は?」
「……?」
「食いながらでいい、名前を教えてくれ……?」
「……フェイト、フェイト・タスタロッサ」
「俺はゼロ、ゼロ・アンリミテッド」
「ゼロ……?」
「……フェイト、お前の行動目的を教えてもらえないか?」
「……目的を?」
「そうだ、内容によってはあのバルディッシュという杖以外にも、あの物質のことも考えてやる」
「……」
フェイトは素直にゼロへジュエルシードを集める目的を話した。
「……そうか、母親の命で?」
「全部集めたら、お母さんと一緒に暮らすことが出来るの……そのためにも全部集めないと……」
「……フェイト、その母親の名は?」
ゼロは、心当たりにそう尋ねた。
「プレシア・タスタロッサっていうの……」
「なに……?」
それを聞いた途端、ゼロはわずかながら表情を変えてもう一度訪ね直した。
「本当だな?プレシア・タスタロッサという名で間違いないな?」
「ほ、本当だよ……」
「そうか……なら、少し待っていろ?」
そういうとゼロは席をはずし、別の部屋へは居て行った。
「ゼロ?」
フェイトが気にかけるものの、ほんの数秒で戻ってきた。戻ってきた彼の手にあったものは二つの宝石である。青い宝石と三角形の宝石のペンダント。
「それは……!」
「お前に返すよ?」
そう言うとゼロは二つの宝石を彼女に返した。
「どうして?」
「内容によっては考えると言っただろ……?」
「あ、ありがとう……でも、どうして?」
「俺のマスターがお前の母とつながりがあるからだ……」
「え?」
「早い話、俺とお前は同業者というわけだ。目的は同じだ、俺はこれを集めればそれでいい、管理に関してはお前に任せる……」
「ゼロ……」
「それと、今後は共同で任務に当たるぞ?」
「え?ゼロと……?」
「そうだ、今回のロックマンとお前と同じ者と共闘していた。お前が単独だけでは危ない。俺も介入する……」
「あ、ありがとう……じゃあ、これで」
そういうと、フェイトは玄関へと向かって歩きだしたのでゼロはそんな彼女を呼び止めた。
「待て、何処へ行く?」
「自宅に帰るけど……?」
「今夜はもう遅い、泊っていけ?」
「え、え……!?」
するとフェイトは急に顔を赤くして驚いた。ゼロにしてはちょっとした心遣いで言ったのかもしれないが、フェイトにしては別の意味に捉えていたらしい。
「どうして驚く?」
「そ、その……」
「勘違いするな、お前の身が不安なだけだ……」
「そ、そうなの?」
「嫌なら、家まで送っていくが?」
「……ううん、泊って行ってもいい?」
バルディッシュを返してもらい、ジュエルシードまでもくれたのだから断ることもできなかった。それに、このゼロという少年は自分みたいに不愛想だが、悪い人間ではないようで、どこか優しい感じがした。
食事を終え、ゼロは彼女へ寝室へと招いた。しかし、フェイトはベッドに横たわるものの、ゼロは冷たい床に横たわっていた。
「ベッドで寝ないの?」
「お前に貸す……」
「風邪ひくよ?」
「気にするな……」
「でも……」
「……」
どうしても心配して寝てくれないようだったので、少しの間だけベッドに上がり、彼女の横で寝た。すると、フェイトは安心したかのように、スヤスヤと寝てしまった。
「寝てくれたか……」
ゼロは起き上がり、彼女の寝顔を見つめた。すると、このいたいけなフェイトの寝顔が自分の幼馴染と重なってしまった。
「……アイリス?」
だが、寝ているのはフェイトだ。幼馴染ではない。
「……」
ゼロはフェイトの鮮やかな金髪を撫でると、ベッドから離れて床へ横たわった。
「……あったばかりの男女が添い寝なんて駄目だろ……?」
そうゼロが遠慮し彼も眠りについた。
そして翌日、フェイトを心配して彼女の使い魔のアルフが勢いよく押し掛けてゼロの胸倉をつかんだことは言うまでもなかった……

 
 

 
後書き
次回予告

たまには息抜き!っていうことで、僕たちは疲れた体を癒しに鳴海温泉へ行きますが、何だか僕達の邪魔をする人が出てきて……

次回ロックマンX1st魔法少女と蒼き英雄
第五話「温泉/HOTSPRING」

「あの……どなたですか?」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧