HEART IS GUN
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第一章
第一章
HEART IS GUN
俺はやった。嬉しくて仕方がない。
十八になって早速だ。その店に入った。
店には無数のガンが置かれている。ケースの中にもカウンターの壁にもこれでもかと飾られている。
その銃達を見てだ。俺はうきうきしていた。
「さて、どれを買うかだな」
俺はこう呟いた。そうしてだった。
カウンターに行き恰幅がいい禿げた親父にだ。こう言った。
「ガン欲しいんだけれどな」
「ああ、何がいいんだい?」
「そうだな。ピストルだな」
はじめてだしここはオーソドックスに言った。
「それがいいんだけれどな」
「ああ、ピストルかい」
「何時でも撃てるやつな。あるかい?」
「幾らでもあるさ」
そういう店だからだ。ふんだんにあるというのだった。
「買える範囲でのやつ買えよ」
「ああ、それじゃあな」
「で、金はあるんだろうな」
「なければ来ないさ」
俺は笑ってこう親父に返した。
「働いて作ったんだよ」
「頑張るねえ。そうしたんだな」
「そうさ。それじゃあ買わせてもらうな」
こうしたやり取りからだった。俺は実際にピストルを買った。黒いそのずしりとくるものを買ってから店を出てだ。俺は笑いが止まらなかった。
「やったぜ、遂に買ったぜ」
ガキの頃から欲しくて仕方がなかった。それで嬉しくて仕方がなかった。
それでだ。俺はすぐにだ。電話でダチを呼び出してだ。俺の家の俺の部屋に呼んでだ。そのピストルを誇らしげに見せてそうして話した。
「どうだよ。遂に買ったぜ」
「ああ、御前前から言ってたしな」
「十八になったらピストル買うってな」
「そう言ってたな」
「それで買ったんだな」
「ああ、これで若し悪党が出て来てもな」
ヒーローになった気分でだ。俺は誇らしげにダチ共に言ってやった。
「一発だぜ。拳で殴るよりもな」
「ピストルで撃ち抜いたらどんな奴でも死ぬからな」
「それこそ一発だからな」
「頭か心臓撃ったらな」
「そうだよ。俺はやるぜ」
俺はそのピストルを実際に手に取って言ってやった。
「悪党が来たらその頭か心臓撃ち抜いてな」
「それでやっつけるか」
「そうするんだな」
「ああ、そうしてやるぜ」
両手に持って構えてみる。鉄の重みをずしりと感じる。
「俺に敵はないからな」
「もう無敵ってか」
「ピストルさえあれば」
「死ぬぜ、俺に何かしたらな」
銃を持ったまま。俺は笑って言ってやった。
「俺の指先が動いたらそれだけでな」
「本当にヒーローになったんだな」
「漫画のヒーローに」
「なったぜ。俺に適う奴はいないぜ」
無敵になった気分だった。もうだ。
「さあ、誰が死にたいんだ?」
「おいおい、俺達が悪党だってのか」
「そうだっていうのかよ」
「若し悪いことをしたらそうなるぜ」
頭の中では保安官だった。ワイアット=アープになっていた。
「この町じゃ俺が法律だぜ」
「おいおい、このニューヨークの正義を守るってか」
「そうするのかよ」
「そうさ。俺のピストルが全てを守るんだよ」
俺は自分の椅子に座って足を組んでだ。そのピストルを左手で弄びながらまた話した。
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