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美しい毒

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第四章


第四章

「それを食べたい」
「ウツボですか。いいですね」
「食べたことがあるのか」
「はい、一回」
 あるとだ。本郷はその海を見ながら役に話す。
「干物を酒と一緒に」
「そうしたのか」
「いいですよ。本当に美味しくて」
「ならその時は二人で食べるか」
「はい、そうしましょう」
「私は波はいい」
 サーフィンはしないというのだ。
「だがそれでもだ」
「ウツボは食べたいんですね」
「それに白浜の景色もいい」
 それもだというのだ。彼が関心を向けているのは。
 その海と白浜も見てだ。彼は言うのだった。
「白浜とはよく言ったものだな」
「ですね。本当に白いですね」
 その白い浜に海水浴の客達がいる。彼等はだ。
 それぞれの水着を着て海の中で遊んでいる。美女も多い。その美女が胸や腰も露わな服を着ている。だがその彼女達も見てもだ。
 本郷も役もだ。特に何も思わなかった。本郷はこう言うのだった。
「何ていうか好みの娘がいませんね」
「これだけいるのにか」
「はい、特に」
 いないとだ。彼は役にも話す。
「俺って女の子の好み五月蝿いですから」
「アイドルで言うとだな」
「篠田麻里子ちゃんですね」
 そのアイドルがいいというのだ。
「その娘がいないとどうも」
「駄目か」
「ああした娘でいいんですけれど」
 言いながら見回す。しかしだった。
 彼が好むショートヘアで長身ですらりとした娘はいなかった。それでかえって拍子抜けした感じでこう述べるのだった。
「これだけいるのに一人もいませんね」
「ああした娘はか」
「役さんの好みの娘もですね」
「いないな」
 彼の好みの娘もだ。いないというのだ。
「大島優子ちゃんはな」
「いないですね。いるといえば」
「前田敦子ちゃんや渡辺麻衣ちゃんか」
 そうした娘がいるというのである。
「それに峰岸みなみちゃんだな」
「どの娘も悪くないですけれどね」
「本命がいない」
 だからだとだ。役は残念そうに話す。
「全く以てな」
「本当ですね。じゃあ今はですね」
「そうだ。仕事に専念しよう」
 本命がいないのならもう興味はなかった。それもあってだった。
 二人は屋敷に戻りそのうえでだ。仕事をはじめたのだった。
 まずはだ。その屋敷の主治医の榊がいないことを見計らってからだった。
 彼女が夫人について書いたカルテを見てだ。二人でだった。
 顔を見合わせてだ。こう話した。
「どう思う」
「怪しいですね」
 本郷は顔を顰めさせて役に答えた。
「確かにまともなカルテで状況について詳しく書いてますけれど」
「それでもだな」
「はい、何か違いますね」
 こうだ。本郷は役に話していく。
「妙に」
「何かが違いますね」
「サンプルを書いている様な」
 そうしただ。妙なカルテだというのだ。
「そんな感じですね」
「そうだな。ではやはりだ」
「はい、このカルテは嘘です」
 まさにそうだという役だった。
 
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