久遠の神話
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第五十六話 中華街その十四
「小柄な娘って本当に可愛いからな」
「そういえばまゆゆもですね」
「小柄だろ」
「一五四ですよね」
「それがまたいいんだよな、それじゃあまずは扇子買ってな」
「はい」
「それからだよな」
中田はこう言って自分も扇子を探した、そうして二人でいい扇子を探してそれからだった。
上城は青い中華風の扇子を手にした、それを見て中田に言う。
「これをです」
「買うんだな」
「はい、これにします」
こう言うのだった。
「村山さんに合いそうですし」
「青な。あの娘にはな」
「合いますよね」
「結構な。そういえばあんたも水の剣士だから」
「水、つまりですね」
「青だよな」
自ら連想される色は大抵青だ、だからだった。
「だったら君もな」
「青い扇子を」
「買ったらどうだろうな」
上城にこう提案するのだった。
「いいと思うぜ」
「そうですか、それじゃあ」
「ああ、ペアでな」
中田は二人の背中も押した、そしてだった。
彼は彼で三つの扇子をそれぞれ手にした、上城はその彼を見て少し怪訝な顔になってそのうえで尋ねた。
「あの」
「ああ、何だい?」
「中田さんも扇子買うんですか」
まさか彼も買うとは思わず問うたのだった。
「そうされるんですか」
「ああ、ちょっとな」
「ちょっとといいますと」
「土産っていうかな」
中田はその三つの扇子をそれぞれいとおしげに見ながら上城に話す。
「起きた時にな」
「起きた時っていいますと」
「ああ、こっちの話だからな」
それで言わないというのだ。
「気にしないでくれよ」
「ですか」
「君はあの娘と君自身の為に買ってな」
「中田さんはですね」
「俺はこの三本な」
見れば扇子の色はどれも同じだった、燃える様な赤である。
その彼の色に等しい赤を見ながら上城に言うのだ。
「他にも色々と買ってるけれどな」
「今はその扇子ですか」
「それにするさ。じゃあ扇子を買ったら」
それからはというと。
「何か食いに行くかい?お互い怪物を倒して金はあるしな」
「そうですね。じゃあ何処に」
「飲茶がいいかね」
中田は考える顔で言った。
「広東料理か」
「広東料理ですか」
「中国の料理だと広東が一番じゃないか?」
「上海じゃないんですか?」
「やっぱり広東だろ」
そちらの方が上ではないかというのだ。
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