万華鏡
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第四十五話 運動会当日その六
「それでもな、半ズボンはな」
「それはないのね」
「ないよ」
絶対にだというのだ。
「安心していいよ」
「そう、じゃあ」
「それに半ズボンの下にもスパッツ穿いてるだろ」
「えっ、穿いてないわよ」
景子はこのことはすぐに答えた。
「下はそのままね」
「そうなのかよ」
「だって、ここまで短いとね」
「いや、短いスパッツあるだろ」
半ズボン位の、今自分達が穿いているそれと同じ位のものがというのだ。
「それ穿いてさ」
「いざという時はなの」
「そう、見えない様にしていればな」
それでだというのだ。
「いいんだよ」
「そうなの、半ズボンの下に」
「もう一枚な」
「それだと万が一ずり上がってもね」
「だろ?そうしたらいいんだよ」
美優はにこりと笑って景子に話す。
「それでな」
「そうよね、確かに」
「備えあれば憂いなしなんだよ」
こうも言う美優だった。
「こうしたこともな、それにな」
「それにって?」
「冷えないしな」
今度は冷え性対策だった、そのことも話すのだった。
「余計にいいんだよ」
「冷えるのは気にしなくていいんじゃないの?」
彩夏がこのことについてはこう言った、いささか疑問に思うという顔で。
「特に」
「いやいや、それがな」
「違うの?」
「そうなんだよ」
実はそうだとだ、美優は彩夏ニコのことは真剣に話した。
「もう十月だろ」
「ええ、制服も変わったしね」
運動会は十月の初日に行われている、それで皆制服もこの日からは冬服になっているのだ。夏服は九月一杯までなのだ。
それでだ、彩夏もこう言う。
「だからなの」
「今は大丈夫でもな」
午前中のこの時はというのだ。
「夕方になるとな」
「冷えてくるからなのね」
「ああ、ちゃんともう一枚穿いておくとな」
「冷えないのね」
「冷えると大変だからな」
女の子にとって冷え性は大敵だ、そして美優は特にこう言うのだった。
「だからあたしなんかさ、夏は特に」
「美優ちゃん沖縄生まれだからね」
彩夏は東北生まれだからこう言うのだった。
「それでよね」
「そうなんだよ、神戸って冷えるからさ」
六甲おろしによりだ、後ろからの山から降りてくる風が街を冷えさせるのだ。しかも前は海即ち水なのである。
だから冷えるとだ、美優も言うのだ。
「だからさ、あたしは気をつけてるんだよ」
「気をつけ過ぎなんじゃ?私も半ズボンの下は下着だけよ」
彩夏はこう美優に言った。
「それこそね」
「えっ、一枚だけかよ」
「そうよ、そうしたらかえって暑いでしょ」
十月に入ったばかりの今はというのだ。
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